104:キラキラ綺麗な綺麗事
このアスファルトという汚い街は、もともとゴモラ3という場所だったらしい。
「壁も街もまとめてメギドで焼き払われたのだよ」
「その話は、私にとってはどうでもいいことなので」
嘘をつかれることにはなれている……なんて言いたくない。私はこの人、そしてラドルゴさん達が嘘をついて、私をリューリーと戦わせて仲間に引き入れようとしたことを受け入れたくなかった。(まぁ、嘘をついたとはっきり言えるかどうかはわからないけど……大事なことを言わないなんて、嘘みたいなもんじゃん……。)
「どうしておまえはまた私の家に来てくれたのかね?」
「お互いにプラスになるかと」
「そうか。すまないな」
「いちいち謝らないで」
でも、私はこの人達といることを選んだ。部品を手に入れて左腕をつけてもらわないといけないし、一人で戦うよりは安全だ。そんな関係だから、棘のある言い方をしてしまうのは仕方ない。
「正直心強いよ」
「ああいうのに襲われた時、助かるからですよね」
「いや、ゴモラシティを一つ手に入れるためにだ」
「はぁ?」
リューリーとまともに戦うことができない弱い人たち。細かいことを聞かなくても、馬鹿げたことを言っているのは……わかる。
「ここから歩いて二週間ほど離れた場所に、ゴモラ645という街がある。そこはSリーグの被害にあって……私達でも攻略可能なはずだ」
「弱った人から奪うんだね」
なんだ、この人達はそういう人たちか。
「ああ、そうだ。もちろん住人と交渉して、可能であればともに暮すつもりだがね」
「綺麗事だよねそれ」
「そのとおりだ。だが私達も生きねばならん。いや、生きねばならんというのは間違いだな、生きたいのだ」
私は思わず笑ってしまった。
「恥ずかしいことを言ってしまったな」
「いや、嫌いじゃないよそういうの。綺麗事言っててもさ、殺されたら死んじゃうし。うん、そうだよね、生きるってそういうこと、強いことが大事なんだ! 綺麗な綺麗事は、ただ綺麗なだけなんだよ! キラキラしてたって死ぬんだよ!」
ああ、なんで大声出してるんだろ私。馬鹿みたい。
「おまえの望みは戦うことかね?」
「きっと、そうなっちゃったんだろうね」
ああ、なにこの言い方! 恥ずかしい私! 恥ずかしい私! あはは、本当に馬鹿みたい。
「それで構わんよ。申し訳ないが、私達はそれにすがりたい」
「いいよ。どうせ私は今どうしたらいいかわかんないし、戦ってないとおかしくなりそうだから!」
こんなこと言うなんてすでにおかしいんじゃないの? ねぇ、私。




