103:灰被り with DERPDEEPDOPE
リューリーは声を出せないままのたうち回った。私は口に広がる塩分と、生臭い香りと、ムニュムニュした感触を地面に吐き出す。
「ヒュー! ヒュー! ゴボッ」
へぇ、喉を食いちぎられた人ってそこから血の泡を出すんだね。
「リューリー、もうこの街に来ないで」
「ゴボッ、ゴボッ」
さすがSリーグ選手。その傷でも逃げていける余裕はあるんだ。結構フラフラでつらそうだけど……。やりすぎたかな……。
「今だ殺せ!」
あれ? なんでみんな勝手に? っていうかあなたたち誰?(ああ、この街の人か。)
「だめだよ! リューリーを殺したら私が許さない!」
「ソドム、なぜそんなことを言う?」
あれ、ドクターいつの間に? ああ、私が勝ったから来たんだね。
「私の約束は、追い払うことでしょ? 殺すまでしなくていいと思う」
うん……なんか、ここまでやっといてなんだけど……あんなに苦しそうなところによってたかられて殺されるのは嫌だろうし……。しかも、自分より弱い相手に。というか多分、近寄ったら殺されるよね。普通の人たちじゃ。
「そうだな。おい! おまえら追うな! 行かせろ! ふふ、やはり私の目は間違っていなかった。おまえはいいやつだなソドム。しかも賢い」
そう言ってドクターは私を抱きしめた。やめてほしいな、泣いちゃうからさ……意味もわからず。
「私達はついにSリーグ選手を追い払った!」
あの唐突に大きい声出さないでください。びっくりするので。
「この、新たなる友人の力で! 私はこの優しい戦士を仲間に迎えようと思う! 異論はないか!」
優しい? 私が? うひひ、むちゃくちゃ言うねこの人。私はさ、博士を追いかけたいんだよ。そのために腕をつけたかったから交換条件で戦っただけ。
「提案がある! 今日から私達は抵抗ネズミの集団の名を捨て、灰被りと名乗ろう! いつの日か輝かしい未来を掴むため! そして我々を救った彼女への感謝を忘れないため!」
みんなが声を上げる。ああ、試合に勝ったときみたいだな。
「……ってドクター、何勝手に話すすめてるの。私仲間になるなんて――」
「おまえが望まないなら出ていってもいい。だが私達は……おまえに恩を返したいのだが、だめかね?」
「は?」
「私達はリューリーにおもちゃにされていた。本当にだ。もう絶滅するしかなかった。だがそこにおまえが現れた」
……そんな大事だと思ってなかったよ。
「すまない。卑怯な依頼の仕方をして。そうでもしなければ私達のために戦ってくれるなんて思わなかったのだよ。Sリーグ選手の資格を持ちながら、オリジナルのラヴクラインの元に行かなかったおまえが」
「卑劣な依頼……」
「ああ、卑劣極まりない。だが、私達が生き残るために探し続けた情報の中で、おまえが唯一の可能性だった。すがってすまない、私達弱者はそう生きるしかないのだ」
はぁ、なんて答えたらいいんだろう。




