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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
111/301

102:どれから歌っていいかわからないんだ

 リューリーはたくさん私を殴った。速い、それに正確。全然捕まえられない。戦えば戦うほど、動きを読まれていく。


「はぁっ、はぁっ」


 ああ、痛いなぁ。頭がくらくらする。 


「ヨワヨワなのだ! さぁ、リューリちゃんのちっちゃかわいいお耳をちぎったことを懺悔するのだ!」

「……さ…………さ」


 博士もいなくなっちゃったし、こんなに痛い思いしてがんばらなくていいのかな。


「ん、なにブツブツ言ってるのだ?」

「……どこさ……ひ……」


 なんてね……全くさ、意味分かんないよね、博士にさ、捨てられてさ、博士がさ、どこかにさ、いっちゃってさ、どこさ、あんたが、た、どこさ、ひごさ……って歌を……一緒にいた時……寝る時に歌ってもらったなぁなんてことをさ、今急に思い出してさ。


「あんたがた……どこさ、ひごさ……うひひ」

「おまえ、殴られすぎて頭がおかしくなったのか?」

「これってさ、あんたってどこから来たのって意味なのかな。うひひひ、歌ってもらってた時は気にしたことなかったなぁ」


 歌の意味なんてさ、考えたことなくてさ……ってのは嘘だけど、なんとなく聞いてて、なんとなくいい感じだったってあるよね。それって心で聴いてるのかな? うひひ、なに言ってるんだ私。あはは、言ってないね、思ってるだけだね。うひひ。


「なんだその目……いきなりどうしたのだ…………なんでそんな目をしてるのだ!」

「あんたがたどこさ、ひごさ、ひごどこさ、私さ、それを私が鉄砲で……」


 歌詞間違ってるな……。でも()()()はあってるよ。博士っぽい歌詞だなぁって思ってたから。よく覚えてる。


「うひひひ、あなたリューリーだっけ?」

「りゅ、リューリーなのだ……」

「私、ソドム。頭がさ、おかしくなっちゃったみたい。だから私はさ、心に従うよ!」

「なっ! ぐあ!」


 ああ、気持ちいい。背が低い相手は下からえぐるようにいけば顎に当たるのかぁ。うひひ、そういえば、ラヴちゃんに脇腹殴られたの痛かったなぁ。


「おまえ、急に速くっ……がぁ!」

「うひ」


 ()()()()()()()()跳ねて、蹴っ飛ばす。狂姫(きょうき)さんが教えてくれた変則的な戦い方。


「ようやくわかったの。ありがとうリューリー」

「な、なにがなのだ!」

「私、戦うの大好き」

「が!」


 重心が読みにくいでしょ? 腕が()()()()だと。うひひ、まぁ、なんでもいいや。なんかよく当たるようになったし。


「このっ! いい加減にするのだ!」

「ぐあっ……うひひ、やっぱり殴られると痛いね。うひひ、ぐあっ! でも大丈夫なの、大丈夫だから……ずっころばし……ごまみそずい……うひひ、ずいずいずっころばー! ごまみそずーい!」

「なんでこんな時に歌なんて――ぎやっ!」


 体の痛みなんて我慢すればいいだけ。それに、うひひ、おかげでさ、体が痛いおかげでさ、心の痛いのを気にしなくていいでしょ! だから戦う時は痛くていいんだよ!


「かーごめかごめ……かーごのなかのとりは……いつ、でやる?」

「へ、変な歌ばっかり歌うんじゃないのだ! ぐあっ! がっ! おまえは痛くないのか! おまえはなんなんだ!」


 痛いってば。殴られてるんだもん。でもね私は今痛みを求めてる、博士の歌ってくれたいろんな歌を、なぜか、なぜか思い出しながら! 断片的にね、バラバラにね、思い出しながらね!


「もうやってられないのだ、この気狂い! リューリちゃんは帰――――おい、離すのだ……その手を、離すのだ!」

「……どっぴんしゃん…………てっぽうでっ……うってさ……どんどこしょ」


 ああ、歌が、混ざる。あちこちから……頭の中のあちこちで博士が歌ってくれてるから私は……どれから歌っていいかわからないんだ。うひひ、もう、寝ないとダメなのかな。


「離せぇええええええええええええええええええええええ!」

「うぐっ、ずいずい……うしろのしょうめん……がっ! どこさ……あのこが……ちょいとかぶせ、ぎゃふっ! ちゅうちゅうぐあっ!」


 ああ、そういえば()()()()()()()()()()()()()()()()っけ。うひひ、片手じゃ殴られっぱなしだよ。(あ、でもメメメスには両手があっても殴られっぱなしだったっけ。)


「離せ! 離せ! 離すのだぁ! 離せって言ってるのだ!」

「わからん……ぐぎっ! こわい……ぐあっ! ……どこさ……ぐあっ! あ! はぁっ、はぁっ……ちゃつぼにとおりゃんせ……くって、くってさ…………」

「離すのだ! 殴り殺すぞ!」

「ほしい、いきっこなしよ、だぁれ?」


 嫌だよ、何回殴られても離さない。だってさ、掴んだままあなたを倒す方法を思いついちゃったから。うひひ。

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