10:アリスとアリス(正確にはどちらも似せたものである)
輸入市から帰ってちょうど一週間後。私はまた暴力的地下遊戯に出場することになった。
「前試合から人気大幅ダウン! メメメスに一瞬で沈められた無力のアリス、ソドムちゃんの入場ですっ!」
今日試合解説をしているのは前と違う人。会場も前と違う、より小さいところ。私って本当に人気無いんだろうな。
「え、八人! 少なっ」
しまった、モニターに表示された試合の閲覧者数が少なすぎて思わず口に出ちゃった。今の……マイクに拾われてないよね――――あ、ダメだこの会場マイクだけはしっかりしてる。ああ、ただでさえ少なかった閲覧者数が五人に……。
そういえばこういう会場ってあちこちにマイクあるのに、どうしてインタビューの時はわざわざマイクを持ってくるんだろう。まぁこの試合にインタビューがあればだけど……はぁ、なんだかどうでもいいこと考えちゃうな。
「対する赤コーナから入場しますは、暴力的地下遊戯初参戦! 不思議の国のアリスを意識したコスチュームが可愛い選手ですっ!」
え、なにそれキャラかぶりすぎじゃない! しかも……なんかすっごくふわふわの髪で可愛い子。これ……もう私への嫌がらせだよね? というかこの子、今名前読み上げてもらってないよね?
「それでは殺害同意ボタンタイムです! お二人ともどうぞ!」
メイドさんが殺害同意ボタンを持ってくると閲覧者数が十人に増える。(でもすぐ減った。)そして、私は今日も箱の中の殺害同意ボタンを押さない。つまり相手が押そうが押すまいが、この試合で殺すことは禁止ということ。
「殺害同意はなし! ではレギュレーションタイムです!」
閲覧者数三人……あ、二人になった。っていうか、いきなりレギュレーションタイムって! 愛を込めて金を放り投げる一分間飛ばしたよね! まぁ、誰もお金くれないだろうけどさ……。で、モニターに表示された試合条件は……。
『負けた方は下着姿になる』振込金額 \100-
レギュレーションタイムで採用されるのは、振込金額の大きい上位三人。つまりもう一人は提案すらしなかったってことか……。はぁ、ここから2割もらっても仕方ないしこんな条件は拒――――。
「それでは試合開始です!」
「ちょっとまって! レギュレーションの拒否権は!」
あまりにも適当すぎる対応に、私は思わず怒鳴ってしまった。
「あ、ありましたね。拒否しますか?」
「します」
「はい、じゃあ試合を初めて下さい」
カーンとゴングが鳴る。いや、相手の子にも聞いてあげてよ。一人が拒否した後でも受け入れれば、ルールは適用されないけど二割もらえるっていう謎ルールなんだから。




