98:デザインからして最高のカメラ
ドクターは私の背負っていた腕をおろすついでに……私の荷物を勝手に見る。
「これはいいカメラだな。実に素晴らしい。デザインからして最高じゃないか。ああ、実に独創的だ」
「そう……。気に入ったなら、あげるよ」
なんで持ってきちゃったんだろ、博士にもらったカメラ。あれ……このカメラなんであの部屋にあったんだろ……私、このカメラもらってから……。(記憶が痛む。)ああ、もう、なんか思い出せないけど、このカメラは博士にもらったってことだけわかってれば……いいや。
「やめておけ、これはわざわざ持ち運ぶほどのものなのだろう。手元においておきたくない理由があるなら、預かっといてはやるが……」
「……うん」
そういえばあのカメラの中には、私が撮った博士の写真が……。
「あ、一回返して! あれ、あれ? えっと……どこ押したら……」
「写真データが見たいのかね? 貸してみたまえ」
カメラのモニターに映る写真は――――なにこれ? 焼けた……街? でもこれゴモラ67とは違う気がする。
「……私の撮った写真じゃない」
「カードを共有でもしていたのか? ん? ああ、次の写真を見る時はここを押せ。操作したことないのかね? 自分のカメラなのに」
「うん……一枚写真撮っただけなの」
「すまない、今の一言は余計だったかもしれないな」
言われたとおりに押すと、次の写真が出る。
「違う……」
「ふむ、やはりそのカードには別の誰かが撮影したデータも入っているのだな」
大きな銃、同じような服装をした人たちが倒れて苦しそうにしている写真、見たことないような大きな車……なにこの写真……本当に知らない。
「私の……撮った写真は……」
何度もボタンを押さなくても、押しっぱなしにすれば画像が流れていくことを教わる。そしてそれが止まった(つまり最後の)時、ようやくあの日私が撮影した博士の写真になった。
「ふむ、このラヴクラインは私とは別の個体か……」
「…………」
「まぁ深くは聞かぬよ。さぁ腕を取りつけようじゃないか。いつあいつがこの街に来るかわからないのでね」
写真の中の博士。この時から、私を置いていくつもりだったのだろうか?




