95:あなたが生きる意味はなんですか?
壁に穴が空いているところを探すのに結構時間かかったけど……私がゴモラ69を抜け出すのは簡単だった。私はあの機械のおかげで、コード404に守られている。だから、ゴモラシティを囲う、人間判定を通っていない者だけを爆破する対生命体地雷は私には作動しない。(最初に見えている地雷を金属の足で踏んでみた。そしたら爆発しなかった。次に近くを足で掘って探してまた金属の足で踏んでみた。そしたら大丈夫だった。つまり私は、博士のくれた足のおかげで――――。)
「……外ってなにもないのかな」
遠くまで続く柔らかい砂地。足をとられて転ばないようにしないと。(背負っているのは、ちゃんと研究室に置いてあった私の腕、水筒、あと適当な食べ物を入れた袋。とか。それを全て私は……口で、縄をつけて持ち運べるようにした。それが汚れないように、外したカーテンをゴロゴロ転がって体に巻きつけた。)
「やっぱり博士だよね」
何度も思った。あれは博士のふりをした偽物だと。でも、残念だけど、本物だ。だってラヴちゃんが買い戻してくれたカメラは、一台だけ残して全部なくなっていたから。私のカメラだけ残して、全部なくなっていたから。(そして私がそれを持ってきたから、あの部屋にはなにもない。)
「お腹……すいたな」
背中にぶら下げた食料と、水。でも今は手をつけない。いや、手はないんだから手をつけないってのはおかしいかな。(口をつけないって言えばいいのかな?)
「うひひ」
そんなことで笑えるのは、私が壊れているからか。(それとも一人ぼっちだからか。)
「暑いな」
誰もいない旅路。私がここでなにをしても誰も見ていない。馬鹿みたいに歌おうが、泣こうが、下着を必死に地面にこすりつけて脱いで排泄した後穿けず、諦めてそのまま歩き出そうが。(私はなぜ歩いている。博士がどこにいるかもわからないのに。こんなボロボロになって歩いている。博士が私を待ってるなんて思えもしないのに。)
博士は私を捨てた。いや、最初からこうするつもりだった。(あれ、じゃあなぜ博士は私にあの機械を飲ませたの? なぜ殺さなかったの?)
「つまり、私にはまだ……価値があるってこと?」
利用価値。そんな言葉が頭によぎる。(よぎる。)
「……」
遠くから砂煙を上げて近づいてくる車。誰だろ……まぁいいや、今の私なら足だけでも殺せるはず。
「………………」
私の目の前で止まる大きな車。降りてくる武器を持った人たち。
「………………………………」
無言の時間、やるしかないか。
「おい、お嬢ちゃん」
「…………」
鋭い目つき、汚い服。なんか激しい髪型。やる気満々って感じだね。でもそんな強そうには見えないから、余裕かな?
「おい、お嬢ちゃん口がきけねぇのか?」
「……」
「おいって言ってんだろ」
頭はそんなによくなさそう。うひひ、私もあんまり賢くないけどさ。
「喋れねぇのか……。まぁいい、こっちの話している意味はわかるな? こんなところで一人で大丈夫か? とにかく乗れ、わけありだろ?」
あれ?




