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クーデター(後編)

 ― 秘密基地・指令室 ―


「今回の【勇者召喚】で現れた勇者は4名で、男が3名、女が1名――それ以上の情報はまだ不明です」

「勇者の移動の情報はありません」

 赤河馬参謀と金獅子元帥の報告である。


【勇者召喚】の光を見てから1夜明け、多少の情報は入ってきた。

 召喚された勇者の数は4人、既に存在している勇者と合わせて計9人となる。

 なんとか5人まで減らしたってのに、また増えやがったし……。

 うむ、気分が重い。


 山積みされた仕事に目途がついてホッとしたところに、急な急ぎの仕事が入って休日出勤が決まった気分。

 微妙に違うか?

 借金の返済に目途がついたところに、身内から『実は他にも借金が……』と言われたような気分。

 これもちょっと違う気が……。

 とにかくものすごーく、やってられん気分となっている俺である。


 計9人まで増えた勇者であるが、人間国には何故だかそれ以上【勇者召喚】をする様子が無い。

 国都の人口を考えれば、まだ何度も【勇者召喚】ができるだけの赤ん坊の数はいるはずだし、軍が民衆を思いやって【勇者召喚】をためらうとか今更あり得ない。


 これは【勇者召喚】には、満たさないと行えない何かの条件があると考えるのが妥当か……。

 そういや【勇者召喚】の時って、2回とも満月だったな。

 満月が召喚の条件だとしたら、次の召喚まであと1月余裕はあるが……決めつけるのは危険かな?

 予定通り、なるはやで大聖堂破壊作戦をやるとしよう。


「情報収集ご苦労、引き続き頼む――大聖堂破壊作戦は予定通り4日後に行う、準備は怠るなよ」

 言い捨てて、俺は畑へと向かう。

 大規模作戦のために、大量の戦闘員を作らねばならないのだ。


 …………


「行ったか……赤河馬参謀、テテラ将軍へ連絡。『こちらは予定通り動く、そちらも予定通り動かれたし』とな」

「了解です金獅子元帥、他に伝えることはありますか?」

「いや、特に無い」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 ― 国都・軍司令部 ―


 政敵とも言えるモハット宰相を引きずり落としたボルホア将軍は、着々と人間国の掌握を進めていた。

 新たな宰相には自分の息のかかったベリトット・ヨウカンを据え、人間国にはもはや邪魔者はいない。

 現在唯一、他国への侵攻に邪魔な存在は、テロリスト――悪の秘密結社『モフトピア』のみとなった。


「新たに召喚した勇者たちの様子はどうだ?」

 人間国の掌握に必要な雑事を(せわ)しなくこなしながら、手近な部下に聞くボルホア。

「ようやく落ち着いてきたようです」

「そうか」


 簡潔な言葉で会話を終えたが、内心でボルホア将軍は焦っている。

 もはや唯一の厄介な存在と言える、テロリストの襲撃を予想しているからだ。

 理由は分からないが、テロリストが勇者を狙っているのは明らかである。


 こちらが【勇者召喚】をしたという情報は、当然テロリストも知っているはずだ。

 召喚直後で自分の能力を把握しきれていない勇者を狙ってくる可能性は、十分にある。

 せっかく召喚した勇者を、ここで削られるわけには行かない――膠着してしまった他国への侵攻を進めるには、勇者の存在は絶対条件なのである。


 次の【勇者召喚】は満月までの間の約1か月、召喚した勇者は絶対にテロリストには削らせたくない。

 最大召喚人数の4人を満月ごとに繰り返せば、他国もテロリストも勇者の数で圧倒できるはずなのだ。


 他国への侵攻が軌道に乗れば、【勇者召喚】には人間の赤子を使わずとも良くなる。

 今だけなのだ、国民も分かってくれるだろう。


 新たに召喚した勇者たちが、敵を圧倒できる能力を持っていると良いのだが……。

 こればかりは検証してみなければ分からない。

 勇者が能力を検証して扱いに慣れるまでには、数日かかるだろう。

 それまでの間、新たに召喚した勇者を守らせねば!


 大聖堂は破壊不可能だから、守りは少なくていいだろう。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 ― 秘密基地前 ―


 準備を始めてから、4日が経過した。

 ということで……。

「準備は整った! これからサヒューモ教大聖堂破壊作戦を開始する!」

 戦闘員の収穫も終わったので、朝っぱらからいよいよ大規模作戦の開始だ!


 連れて行く人員も、今回はかなり多い。

 戦闘員のゴブリン隊は、元祖なイノゴブリンとスラゴブリンが計500匹。

 改人も、なんと5人と大盤振る舞いだ。

 それぞれ紹介すると。


 熊獣人×ダークアイ×メタルアントの改人。

 金属並みの甲殻を持ち、腹部からのビームが武器の『改人ダークアント』


 羊獣人×スズメバチ×ゴーストの改人。

 毒針攻撃と、物理攻撃無効を持つ『改人スズメゴースト』


 牛獣人×ヘルハウンド×ワイバーンの改人。

 空から火の玉を放つ『改人ヘルバーン』


 ハイエナ獣人×サラマンダー×アシッドスライムの改人。

 燃える酸をまき散らす『改人サラスライム』


 アルマジロ獣人×アイアンゴーレム×サイクロプスの改人。

 金属の巨体を丸めて転がり、敵を押しつぶす『改人鉄球アルマジロ』


 ぶっちゃけ交配した素材は過去の改人の使い回しだが、なかなか良い能力を持つ精鋭たちだ。

 これだけの改人を動員した作戦は、古今例を見ない――まぁ、改人が誕生してからまだ1年なんだけど。

 この改人の数だけでも、俺の気合の入りようが見て取れようというものだ。


「勇者の足止めは金獅子元帥と黒犀大佐に任せる――金獅子元帥、改人を3体選んで連れて行け」

「はっ! ではダークアントとヘルバーン、あと鉄球アルマジロをお貸しください」

「足止めは僕らにお任せを!」

 黒犀大佐は、雰囲気が少しだけ大人になったか?


「うむ、頼むぞ――赤河馬参謀は残りの改人を連れて、俺の護衛だ」

「お任せください首領、人間ごとき一匹たりとも近づけさせません」

 赤河馬参謀は石化の魔眼という手の内がネタバレしているので、今回は俺の護衛にした。


 幹部も総動員して、俺も含めて全部で9体の改人が出撃する。

 野呂田だけは、何かあった時のためにお留守番だ。


 さぁ! 今度こそ大聖堂を破壊して【勇者召喚】を永遠に封じてやるのだ!

 いくぞみんな!


 我らがモフトピアのために!


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 ― 国都・憩いの店タチバナ ―


「おやっさん、じゃあ出かけてきます」

「おう、今日はゆっく遊んで来い、シュンタ」

 俺は店を出て、街の中心部へと向かう。


 今日はおやっさんに休みを貰ったので、丸1日自由行動だ。

 最近は国都にも人が増えて、治安の悪くなった場所もあるが、いざとなればバッタマンに変身するのでそこは心配していない。

 問題は最近急に物価が上がり始めたことだ。


 憩いの店タチバナから給料は貰っているが、バイト扱いなのでそんなに稼いではいない。

 外食したり酒を買ったりしたら、すぐに底をつく。

 酒は外で飲むと高くつくので、いつも宅飲みだ。


 こんな生活を送ってる俺なので、物価が上がると厳しい。

 お気に入りのメシ屋はまだそんなに値上がりしていないので助かっているが、酒がバカ高くなっていて辛い思いをしている。

 それに最近は、教会に小銭を少しだけ寄付しているので余計にフトコロが厳しいのだ。


 教会に寄付と言っても、別にこの世界の神様を信仰し始めたわけじゃない。

 勇者をしていた時に、サヒューモ教の大聖堂で偉い人の護衛をしていて、その時に見かけた女性のことが気になって、誰も俺のことを覚えていないことをいいことに、こっそり大聖堂へと通っているのだ。


 サヒューモ教の大聖堂は、信者の人間なら誰でも簡単に出入りできる。

 ただし、彼女のいるはずの大聖堂の奥は、一般人立ち入り禁止なので入れない。

 でも会えないのは分かっているんだけど、ついつい『間違って奥から出てこないかなぁ』と期待して、大聖堂に通ってしまうのだ……なんかストーカーみたいだな、俺って……。


 良く行く定食屋でカツ丼を食べて、やっぱり今日も大聖堂へ。

 信者の証のペンダントを見せて、中に入れてもらう。

 奥にはサヒューモ神様の像が立っているので、小遣い程度の寄付をして祈りを捧げた。

 ちなみにサヒューモ神様の像は、壮年の男の神様の姿をしている。


 祈りを捧げた後は、大聖堂内のウロつきタイムだ。

 辺りを眺めながら、奥から彼女が出てこないかなとチラチラ奥のほうを見る。

 辺りを眺めると言っても、床や壁をギッシリと埋め尽くしている魔法陣しか見る物は無いけれど。


 しばらくウロウロしててると、大聖堂内にドタドタと大勢の人が入ってきた……あれ? 人間じゃない?

 先頭を切って入ってきたのは、蜘蛛の怪物――こいつ、改人か!?


「我々は秘密結社モフトピアですメデュ。今からこの場所は、我らが占拠するメデュ!」


 やはり改人だったか……。

 はっ! このままでは彼女も危ないかもしれない……!


 助けに行かねば!


 ――――


 俺たちは大聖堂内へと入った。

 辺り一面は壁・床・天井に至るまで、無数の魔法陣が敷き詰められている。

「前にも見たけど、やっぱこの光景は壮観だよなー」

 呑気にそんなひとりごとを言っている俺に、メデュスパイダー――赤河馬参謀が報告をしてくる。


「首領、大聖堂内の制圧は終わりましたメデュ」

「赤河馬参謀、ご苦労――スズメゴーストよ、奥へ行き魔人の女奴隷のイザミアを見つけて殺してこい」

「お任せあれスズ!」

 プカプカ浮かぶ、半透明で蜂柄のモコモコ羊が、50匹ほどのイノゴブリンを連れて奥へと向かった。


 さて、ここからは俺の仕事だ!

「出でよ! 神鍬(しんしゅう)!」

 別に叫ぶ意味など無いが、なんとなく気分で叫んでみた。


 突きあげた右手に、瞬時にクワが握られる。

 しっかりと両手に握り直し、腰を落として構えた――果たして本当にこの魔法陣のある床を、俺は耕すことができるのか!

 まず1振り!


 ザクッ!


 よっしゃ! 大聖堂の床、魔法陣を耕せた!

 テンションの上がった俺は、どんどん耕し続ける。


 ザクザクザクザクザクザクザクザク


「ふう……やれやれだぜ」

 けっこうな数の魔法陣を耕したと思うんだが、大聖堂の強度はどうなったかな?

 俺はゴブリン隊に、大聖堂破壊の命令をした。

「お前ら、適当にその辺ブン殴ってみろ」


 ガシガシと、イノゴブリン隊が戦槌(ウォーハンマー)で壁や床を叩く。

 すると……なんということでしょう! 大聖堂の壁や床が、削れていったのです!

「よっしゃ! 思った通りだ、これで大聖堂はぶっ壊せる!」

「お見事です、首領!」

 そんなに褒めるなよ赤河馬参謀、照れるじゃんか。


 さてと、あともう一息だ。


 もういっちょ踏ん張りますか!


 ――――


「変身!」

 誰にも見つからないようにトイレに入り、バッタマンに変身した俺は、彼女を探して大聖堂の奥へと進む。


 勇者だった頃に要人警護をしていたので、内部の構造は知っている。

 勝手知ったる他人の家、というヤツだ。

 いるとしたらこっちか?……あれ?違うな、だとしたら私室のほうか……。


 実を言うとさっきから、組織の戦闘員らしきゴブリンがウロチョロしているのだが、俺には目もくれない。

 俺が改人だからかな? ひょっとして改人の俺を、味方だとでも思っているんだろうか?

 それならそれで好都合だ、敵のことを考えずに探索を続けられる。


 俺は彼女の私室へと向かった――扉が開かれている?

 警備の衛士は2人いたはずだが、血まみれになって殺されていた。

 彼女は、彼女は無事なのか!


 中に入ると、彼女と蜂の模様をしたモコモコの羊みたいな改人、それと数匹のゴブリン戦闘員がいた。

「良かった……無事だった……」

 俺はホッと胸を撫でおろす。


「お前、見ない顔だなスズ」

 羊みたいな改人が、バッタの改人の俺を見て、不思議そうな顔をする。

 そういえば、戦闘員も俺を仲間だと勘違いしてたっぽいな。

 そうだ! だったら……。


「あぁ、俺は別動隊のものだ。急にその女を連れだすように命令されたんだ」

 苦しい話だが、信用してくれるかどうかは賭けだ。


「連れ出すスズ? 殺すのではないのかスズ?」

 危なかった……殺す命令が出ていたのか……。

「それが急に殺さずにつれ出せと命令されて、急いでここまで来たんだよ。間に合って良かった……」

 最後のは本音だ。


「ふむ……ならば連れ出すとしようスズ。どこへ連れて行けばいいのだスズ?」

 マズい、こいつが付いて来てしまっては、元も子もない。

「いや、俺が連れて行くように命令されてるから、1人でいい。あんたには教団の幹部を全て任せるとの命令が出てるから、そっちを頼む」

 頼む、信用してくれ……!


「分かった、ではイザミアのことは任せたスズぞ――お前たち、ついて来いスズ」

 そう言って羊っぽい改人は、戦闘員と共に部屋を後にしてくれたのである。


「……助かった」

 よくぞまぁ、あんな下手くそな嘘を信じてくれたものだ。

 そして部屋に残されたのは、俺と彼女の2人きり……。

 見つめ合う二人。

 ゴクリ……。


 いかん、呑気に見つめ合っている場合じゃない。

 急いで彼女を連れださないと!

 このままじゃ目立つな……そうだ! ベッドのシーツで彼女を包んで運び出そう。


 俺はシーツで彼女を包み、肩に担いで部屋を後にした。


 すれ違う戦闘員は、誰もこちらに注意を払わない。

 もうじき外に出られる……。

 大広間に別な改人がいた――蜘蛛とカブトムシの改人だ。

 マズいな……そうそう下手な嘘が通用するとも思えない。


 いや、行けるか?

 幸いにも2人ともこちらに背を向けている。

 このまま一気に大広間を抜ければ……。

 俺は急いで、だが細心の注意を払って走り出した。


 出口までもう少し、振り向くなよー……振り向くなよー……振りじゃないからな、振り向くなよー。

 くそ! なんでだか床が掘り起こされていて、無茶苦茶走りにくい!

 あともう少し、あともうちょっと……出口だ!

 ようやく大聖堂を抜けた!


 外までは、すぐだった。

 戦闘員ゴブリンは、建物をぶっ叩くのに夢中になっている。

 向こうにも1人改人がいるが、こちらには気づいていない。


 走りまくって、ようやく安全地帯にまでやって来た。

 彼女からシーツを取ろうと思ったが、彼女が魔人だったことを思い出す。

 国都内だと目立つな……。


 あいつらに見つかったら殺される。

 人間国に見つかったら、また彼女が囚われの身だ。

 ……国都の外に出て、辺境の村にでも連れて行くか?

 そうだな、それがいい!


 そして彼女――確かあの改人は、彼女のことをイザミアって言っていたな。

 俺はイザミアと一緒に逃亡生活をするんだ!


 でも俺、あんまし金持って無いんだよなぁ。


 ――――


「よしよし、順調順調!」

 俺は今、調子に乗っている。

 いいじゃないか、今まで散々悩みの種だった大聖堂を、ようやく破壊までこぎつけたのだから!


 ザクザクと大聖堂の床に刻まれている魔法陣を耕す。

 ガンガンと周囲の壁から、壊されていく音が聞こえる。

 これがまた快感なのだ。


 行き詰っていた仕事が、サクサクと進む。

 これで調子に乗らずに、なんとする!


 たぶんもう、俺が魔法陣を耕さずとも大聖堂は破壊できる。

 それでもやっぱり耕し続けたい。

 もうね、耕しハイなのよ。

 魔法陣にクワを入れる度に、脳内麻薬が分泌されていくのである。


「首領、今までご苦労様でした」

 赤河馬参謀――メデュスパイダーが何か言っている。

 ご苦労様って何? 俺はまだ耕すつもりだけど?


 メデュスパイダーと、ちらりと目が合った。

 直後、動きがギクシャクとし始める。

「石化だと?……なんで?」

 俺は混乱している、メデュスパイダーはなんで俺に石化の魔眼を使った? 何かの手違いか?


「これからの『モフトピア』は、我々が引き継ぎますメデュ。首領はお退き下さいメデュ」

 あぁ、間違いでは無かったようだ。

 そうか、これはクーデターか。

 だが……。


「俺がいなければ、畑は使えん――ゴブリン隊は10日で土に返る、組織の体を成さなくなるぞ……」

 そうなのだ、畑が使えないとなれば残るは改人のみ。

 これでは組織としての活動は無理だ。


「それに諜報員は俺が掌握している――お前たちだけの指示では、動かんぞ……」

 諜報員、特に店は俺がいないと維持ができない。

 それに、意外と諜報員の俺への忠誠度は高いのだ。

 特に古参の諜報員などは、俺以外の者にあっさり鞍替えすることはまず無いだろう。


「ご安心をメデュ。ゴブリン隊は軍事作戦で土になるまで使いつぶし、その後我々は獣人国軍に合流致しますメデュ」

 俺の手足は、既に石化して動かなくなっている。

 そうか、こいつらは獣人国軍と……。


「諜報員は惜しいですが、配下として使えないのでは仕方ありませんメデュ。首領は復活できるのでしょう? お譲りしますよメデュ」

 胴体ももう動かない、石化したようだ。

「な……な、ぜ……」

 俺はかろうじて動く口で、素朴な疑問を聞いてみた。

 それならば組織を脱走するのでも良い気がする、なんでわざわざクーデターなんか……。


「それは首領に、人間国を亡ぼす気が無いからですメデュよ」

 なるほど、そこかよ……。

「我々は人間国を――人間を滅ぼしたいのですメデュ。獣人国軍へと我々が向かい、軍人として人間を滅ぼそうとするならば、首領はそれをすぐさま邪魔されるのでしょうメデュ?」

 確かにその通りである、俺は人間と人間国を滅ぶことを望んではいないから。


「首領が復活するのも、首領が別な組織を作ろうとしているのも承知の上メデュ。その上での時間稼ぎメデュよ――我々は首領が再稼働する前に、人間国に大攻勢をかけるつもりなのですメデュ」

「ゆ、う、しゃ……」

 勇者がいるのに、そんなに上手く行くか?


「こちらの改人は8人、向こうの勇者は9人――数の上では互角ながら、新たに召喚した勇者の中には、戦闘に適さない者もいるでしょう、勇者は十分抑えられますメデュよ。勇者さえ抑えられれば、獣人国軍が人間国に後れを取るなどあり得ませんメデュ。獣人国が人間国に大勝利すれば他国も黙ってはおりますまい……首領が動くまでには、人間国は滅んでおりますメデュよ」

 そう簡単にはいかんと思うぞ、勇者を甘く見るな。

 今回召喚された勇者の中に、白の勇者を超える化け物勇者がいないとも限らんのだ。


 まぁいい、やれるものならやってみろ。

 復活したら覚えとけよ、お前ら。

 もっとも、俺より先に勇者に()られそうな気がするけどな。


「すき、に、しろ……」

 これが最後のセリフ――俺の肉体は完全に石化した。


「仰せの通りに」

 メデュスパイダー――赤河馬参謀は、完全に石化した俺を砕いた。

 悪の秘密結社『モフトピア』の首領は死んだ。


 こうして、俺の『獣人の組織を作って、モフモフに囲まれよう計画』は頓挫したのであった。


 つーかこれ、クーデターというより暗殺が正解かな?

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