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異世界で★悪の秘密結社★を作ってみた  作者: 五十路
シン・デンジャーの章
43/68

アイムササビ獣人は怪光線を放つ!

 実験は成功に終わった。

 これからの改人は、3種交配によって作られることになるだろう。


 だが3種交配をする前に、作ってしまった改人が1人いる。

 ダークアイ×ムササビ獣人の改人、アイムササビ獣人だ。


 良く分からんという人のために、ダークアイという魔物について説明しておこう。

 ダークアイとは、目玉の魔物だ。

 見た目は黒い球体で、その大部分が瞼付きの目玉のという姿をしている。


 触手が生えているように見えるが、これは魔力によるもので実態は持たない。

 浮遊タイプで、主に足場の悪い沼地や湿原でふわふわしている魔物だ。


 このダークアイ、タイプとしては主に獲物の動きを止めて生命力を奪うタイプと、獲物を殺して死体から養分を吸収するタイプの2種類がいる。

 獲物の動きを止めるタイプは魔眼と呼ばれる能力があり、主に麻痺や呪い――睡眠などの状態異常を、その瞳を見せる事によって引き起こすことができる。


 そして今回交配に使ったのは、獲物を殺して養分を吸収するタイプ――瞳から熱光線や雷光線、更には破壊光線などを放つことができるタイプ。

 いわゆる目からビーム的なアレを出すことができるタイプである。

 そんな危ない魔物なので、攻撃はモグゴブリンに命じて地下から仕留めた。

 そうして手に入れたのは、破壊光線タイプのダークアイである。


 交配して出来上がったアイムササビ獣人は、見た目普通の立って歩くムササビだが、腹部全体が巨大な第3の目となっている見た目となった。

 もちろんその第3の目からは、強化された破壊光線が放たれるのだ。


 で、このアイムササビ獣人で何をしたかったのかというと、サヒューモ教の大聖堂への破壊工作である。

 ゴーレムエルフのパワーと硬さで破壊できなかったので、今度はアイムササビ獣人の破壊光線――つまり魔法的な攻撃で、大聖堂の壁を攻撃してみようという試みだ。


 これには火事校長と雷船長も同行させる。

 火事校長――火蜥蜴エルフの炎と、雷船長――ウナギ犬獣人の雷でも、大聖堂の壁を攻撃させてみるつもりなのだ。

 ついでに、アシッドスライム×ゴブリンの戦闘員――スラゴブリンの酸も試してみる予定。


 これだけやって駄目なら、もう頭を抱えるしか無い。

 上手く行きますように……。


 …………


 ― 秘密基地・司令室 ―


「そんな訳で、火事校長・雷船長・アイムササビ獣人よ、サヒューモ教の大聖堂へ攻撃を仕掛けよ」

「お任せください、首領」

 火事校長がしなやかな仕草で、うやうやしく頭を下げる。

「このあたしにお任せあれだワン」

 雷船長が、力強くうなずく。

「必ずや、ご期待に応えますアイ」

 アイムササビ獣人が、跪いた。


「思ったより大規模な作戦になってしまったが、無理はするな。勇者が出て来ても、相手にする必要は無い――大聖堂への攻撃の効果を確認したら、退却して構わん」

「ははっ!」

「はっ!ワン」

「ははぁ!アイ」


「地割れ店長は、すまんが今回も基地に残ってもらう」

「どうかすまないなどとは言わず、遠慮なくご命令を――この地割れ店長、組織に魂を捧げておりますゆえ」

 相変わらず真面目な男だ――酒飲んでる時以外は。


「ふむ――あと道具博士、珍しく司令室にいるけど何かあったか?」

「煮詰まったので、気分転換じゃ」

 気分転換かよ――頭はいい爺さんなので、作戦とかにも興味持って欲しいんだけどな。


「それでは、出撃致します――我らがシン・デンジャーの為に!」

「シン・デンジャーの為に!!」

「シン・デンジャーのためにだワン!」

「シン・デンジャーの為にアイ!」

「シン・デンジャーの為にじゃ!」

 うむ、今日は人数が多いな。


 こうして3人は出撃して行った。


「炎と雷と酸と破壊光線――さすがにどれかは通用するでしょう」

 地割れ店長は、楽観的に考えている様だ。

「さて、どうかな? 魔法的な攻撃にも強そうだからな――本当なら、冷凍ビームとかも試したかったなぁ」

 そんなことを独り言のように口に出したら、道具博士から思わぬ一言が出てきた。


「作っちゃろうか? 冷凍ビームの魔具」

 はい? なんですと?

「作れるの?」

「材料さえあれば、お茶の子じゃ」

 まじすか……。


「ちなみに、金属の弾丸を連続で発射する魔具とか、作れる?」

「威力を問わぬなら、作れるのぅ」

「熱光線とかは?」

「作れるかのぅ」

「爆発する弾を発射する……」

「作れるぞい」

 そんなん作れるとか、聞いて無いんですけど……。


「道具博士って、武器系の魔具も作れたのかよ!?」

「魔人国で働いていた頃は、そっちが専門じゃったからの」

 微妙な魔具ばっかし発明している、面白爺ちゃんだと思ってたよ……、


「それなら、武器系の魔具を作って……」

「じゃが、殺傷能力はかなり低いぞい」

「そうなの?」

 それは残念。


「イザミアの魔法陣の解析が進めば、それなりに強化はできるじゃろうがの」

 そうか、その手があったか!

「じゃあやってくれ」

「解析にはまだまだ時間がかかるぞい。それに武器系の魔具を作るんじゃったら、もっと広い研究室が必要じゃ」


「だったら基地からは遠いけど、予備の畑用に作った空間がある! あそこは側を作ったばかりで、中は空っぽだ――あそこを研究室に使ってくれ!」

「武器系の魔具は久しぶりじゃのう、勘が鈍っておらねば良いが」

「じゃあ、今から引っ越しをしよう!」

「せわしないのぅ」


 こうして道具博士は、別なところへと移ることになった。

 さよなら道具博士……君のことは忘れないよ……。


 たぶん。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


 ― 国都・大聖堂前 ―


「それじゃさっさと終わらせるウナよ。ぐずぐずしてると勇者が出て来るからウナね」

 ウナギ犬獣人の姿になっていた雷船長が、最年長ということでその場を仕切っている。


「ならば私から始めましょうサラ」

 こちらも火蜥蜴エルフの姿になった火事校長が、大聖堂の壁を燃やそうと前に出た。


「周囲の掃除は終わりましたアイ。今なら邪魔は入りませんアイ」

 大聖堂付近にいた人間たちは、アイムササビ獣人がスラゴブリンとイノゴブリンを指揮して駆逐していた。


「では、まず炎ですサラ」

 火蜥蜴エルフの炎が一気に火力を増し、青白く猛り狂う炎の柱が大聖堂の壁を焼く。

 1分ほどで炎を収めて、壁を触った。


「駄目ですね、熱くもなっていませんサラ」

 大聖堂の壁は、炎で燃えることは無かった。


「今度はあたしの番だウナね」

 ウナギ犬獣人から、太く力強い電撃がほとばしる。

 だが壁はビクともしなかった。


「電撃も駄目かいウナ……スラゴブリン隊、酸で攻撃しなウナ」

 スラゴブリンが酸を壁に飛ばすが、これも無駄に終わった。


「出番ですアイね――いきますよ、目からビームだアイ!」

 アイムササビ獣人の腹にある第3の目から、青白く太いビームが大聖堂の壁に向かって放たれた。

 壁に当たってバチバチと音をたてるビームだが、壊れるどころか傷つく気配も無い。


「まいったね――炎も電撃も酸もダメ、破壊光線もダメときたウナ」

「何なら壊せるんでしょうね、この壁サラ」

 雷船長――ウナギ犬獣人も、火事校長――火蜥蜴エルフも、あまりにも攻撃を受け付けない壁にあきれ顔となっている。

 アイムササビ獣人に至っては、自分の破壊光線に壁がビクともしなかったので、呆けてしまっていた。


 3人が壁をなすすべもなく見つめていると、ついに勇者がやってきた。

「そこまでだ、怪物たちめ!」

 白の勇者――白場である。


「ちっ! もうきやがったのかいウナ」

「引きますよサラ――モグゴブリン隊、逃げ穴を掘りなさいサラ!」

「その他のゴブリン隊は、勇者を足止めするのだアイ!」

 当初の予定通り、撤退しようとする改人たち。


「逃がすか!」

 群がったイノゴブリンたちが、白の勇者に簡単に蹴散らされる。

「構わんアイ! スラゴブリンたちよ、仲間ごと溶かせアイ!」

 アイムササビ獣人のその命令で、さらに勇者に群がろうとしていたイノゴブリンごと溶かすべく、スラゴブリンたちが白の勇者へと酸を飛ばした。


 最初の酸を腕を十字に交差させて腕で防いだが、ジュッと音を立てて白の勇者の小手が溶けた。

「くっ! 酸か」

 次々と飛んでくる酸を避けながら、命中した左腕を軽く振ると、溶けた小手がカランと振り落とされた。

 そしてその左腕の酸が命中した部分は――赤くなっていた。

 どうやら少しだけ熱かったらしい。


「そこだアイ――目からビームだアイ!」

 酸を避ける軌道を予測して、アイムササビ獣人が第3の目からビームを放つ。

 見事に胸に命中したそのビームは、白の勇者の純白の鎧を破壊し勇者の動きを止めることに成功した。


「なんのおぉー!」

 ビームの威力に押され負けまいとする白の勇者。

 アイムササビ獣人が追い打ちの命令を出す。

「モグゴブリン隊、やれだアイ!」


 命令と同時に白の勇者の足元が崩れ、空いた穴にすっぽりと全身が落ちてしまった。

「スラゴブリン隊、穴に突入して勇者を溶かせだアイ!」

 次々と穴へと突入していくスラゴブリン。


「うおおぉぉぉぉ!」

 白の勇者――白場の叫び声が響き、やがて落ちた穴が大きな穴となる。

 スラゴブリンが全て核を破壊されて全滅し、ただの酸になってしまったせいだ。


 そしてその穴の中心には、熱い風呂に長時間浸かっていたいたかのように真っ赤な肌になった白の勇者が、全ての装備を溶かされ、全裸で仁王立ちをしていたのであった。


 周囲を見回した白の勇者であるが、その場にはもう誰もいなかった。

「逃げられたか……」

 ふう……と一息ついて、白の勇者――白場は、緊張を解いた。


「ご苦労だったな、ユーマ」

 ふいに後ろから声が掛かった、ユーマとは白の勇者――つまりは、白場遊馬の名前だ。

「ボルホア将軍閣下! このような危険な場所に……」

「もちろん1人ではない、護衛付きだ」

 左手で白の勇者の言葉を制して、ボルホアが言う。


 そしてボルホアは、ニヤリと笑みを浮かべて、こう言葉を続けた。

「テッペーが上手くやりおったぞ、全ては作戦通りだ――早く装備を整えろ、反撃開始だ」

「他の勇者は?」

「マサコとクニオを呼んである」


「あの2人を?」

 ようやく穴から上ってきた白の勇者が、少し驚いた表情をする。

「それだけ本気ということだよ――テロリストどもめ、今度こそ完全に息の根を止めてやる」


 白の勇者の純白の鎧のと着替えを、兵士が持ってきた。

 全てを装着し、白の勇者――白場は万全の状態となった。

 他の勇者と出撃する兵士も、到着したようだ。


「では勇者ユーマ・ハクバに命ずる――3名の勇者マサコ・クニオ・テッペー及び2000の兵を率い、テロリストの基地を襲撃し殲滅せよ!」

「はっ! テロリストどもを殲滅してまいります!」


 人間国軍の侵攻が開始された。

 軍内部にも秘密裏に進められていた侵攻作戦。


 その情報は、まだシン・デンジャーに伝わっていない。

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