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異世界で★悪の秘密結社★を作ってみた  作者: 五十路
シン・デンジャーの章
34/68

襲撃! 毒蛇ラッコ

暑い時期に書いたやつなので、いつもにも増してとっちらかってます。

 人間国軍の物資を焼き尽くしたのは、火蜥蜴(サラマンダー)エルフとその配下の火蜥蜴ゴブリン。

 モグゴブリンによって掘られた穴を使った、地下からの襲撃である。


 最大の物資集積所は、火蜥蜴エルフが自ら襲撃を行っていた。

 そして今、火蜥蜴エルフは紫の勇者――紫堂(しどう) (みつる)と相対していた。

 周囲の兵士たちは、モグゴブリンや火蜥蜴ゴブリンと、他の作戦で使われずにいたアシッドスライム×ゴブリンの戦闘員――スラゴブリンが蹂躙している。


「物資は全て焼き払いました、あなたがたの負けですサラ」

「かもしれないけどねー、だからと言って僕も黙って引くわけにはいかないんだよね――【雷撃の槍】!」

 火蜥蜴エルフと名乗った炎の怪物に向かって、紫堂は【雷撃の槍】を放った――しかし。


 バチバチッと放たれた雷を何者かが受け止めた。

「おっと、あんたの相手はこのあたしウナよ」

 雷を止めた何者かは、牙と鋭い爪を持った手足があり黒い体毛に覆われた半魚人。


「おやおや、僕の【雷撃の槍】が防がれるとはねー……君もあいつの仲間かい?」

 焦りを隠しながら火蜥蜴エルフを指さした紫堂に、雷を止めた何者かが、ぬるりと笑顔を作り答えた。

「そうともさ、あたしはウナギ犬獣人――あたしもシン・デンジャーの改人だウナよ」


「ウナギ犬獣人って、何だよそのネタなネーミングは……て、うわぁっと」

 ウナギ犬獣人から飛んでくる電撃を、かろうじて避ける紫堂――実は紫堂は【雷撃の槍】という魂の刻印を持っていながら、電撃に対する耐性を持っていない。


「電撃を使えるのが、自分だけだとでも思っていたウナかい?」

 再び紫の勇者――紫堂に向かって電撃が走る。

「そこまで思い上がってはいませんでしたよ!っと」

 今度は避けずに【雷撃の槍】を放って、電撃を相殺した。


「やるウナね」

「さてどうするんだい? お互いに電撃も雷撃も意味が無いみたいだけど?」

 残るは物理攻撃での勝負だが【物理無効障壁】を持っている自分が有利、と紫堂は思っている――それよりもさっきから動かない火蜥蜴エルフの動向が不気味だ。


「火蜥蜴エルフを気にしてるようだけど、そりゃ意味がないよウナ」

「へえ……そうなんだ」

 自分の思考を読まれたようで、少しだけ動揺する紫堂。


「あんたを()るのは、あたしらじゃ無いからね」

 突如として足元に穴が開き、紫堂はその穴の中に落ちた。

 その穴の中にはアシッドスライム×ゴブリンの戦闘員、スラゴブリンがいた。


「うあ! があぁぁぁ!」

 スラゴブリンの酸に溶かされる紫堂が、脱出しようともがきながら【雷撃の槍】を放ちまくる。

 やがて雷撃がスラゴブリンの核を打ち抜くも、穴の中なのでその酸の肉体は飛び散ることも無く、紫の勇者――紫堂の肉体を侵食していった……。

 静かになった穴の中には、ボロボロになった紫堂の白骨だけが残ることとなった。


「お疲れ様サラ」

「疲れちゃいないウナ。勇者といえど、ハマればあっけないもんウナね」

「本当にサラ」

 火蜥蜴エルフが指先の爪で、紫の勇者が死んだ穴のフチに何かを書いていた。


「なに書いてるんだウナ?」

「ちょっとねサラ」


 穴のフチに書かれていたのは『もっとがんばりましょう』という、火蜥蜴エルフ――火事校長の紫の勇者への評価であった……。


 * * * 敵勇者の数:残り7人 * * *


 ――――


「来ないでよー、頼むから何も来ないでよー」

 オレンジの勇者――燈坂(とうさか) 清見(きよみ)は、襲撃におびえていた。

 敵が怖いのではない、暗闇に紛れて何かが来るというのが怖いのだ。

 ホラー的なシチュエーションがとにかく苦手なのである。


「獣人だよね、来るの獣人だよね……幽霊とかじゃないよね? ゾンビも嫌だなぁ……」

 実際に幽霊やゾンビを見たことなど一度も無いが、異世界なんだからその辺に普通に魔物として存在しているのではないかと勝手に清見は思い込んでいる。


 そのホラーな妄想に震えているオレンジの勇者――清見を、やや離れた場所から眺めている男が1人。

 爬虫類の姿に鋭い爪を持った手足、鋭い牙から滴るのは致死性の猛毒――毒蛇ラッコであった。


「さて、あの爆弾に囲まれた娘さんを、どう始末しやすかねぇヘビ」

 オレンジの勇者――清見の周囲には、所狭しと爆弾が敷き詰められている。

 近づいてうっかり触れようものなら、間違いなく爆死だ。


「やっぱり空からってのが、定石ってもんでやすヘビね――蜂ゴブリン隊、あの娘さんを()っちまいなヘビ」

 モグゴブリンが掘った穴から、6体の蜂ゴブリンが飛び出して一斉に紫の勇者――清見に襲い掛かった。


ドオォン! という爆発音と共に何かが連鎖的に爆発し、蜂ゴブリンたちが消滅した。

 空中に撒かれたものがそこには存在していた――それは浮遊爆雷。

 暗闇に紛れて見えにくかった浮遊爆雷が、爆発の炎に照らされてようやく毒蛇ラッコの目に映る。


「参りやしたねヘビ。あんな物まであるなんて、こちとら来いちゃいませんぜヘビ」

 少し思案をして、次の手を打つ毒蛇ラッコ――次はスラゴブリンたちを呼び出し、オレンジの勇者の地雷原へと向かわせた。


 薄く――極めて薄くそのゲル状の肉体を引き延ばしたスラゴブリンは、地雷原と化した爆弾に触れた。

 直後、爆弾は爆発しスラゴブリンのゲル状の肉体がはじけ飛んだ――はじけ飛んだ破片が本体に合流しながら再び爆弾へと向かうスラゴブリン。

 爆発ごとにゲル部分の肉体がはじけ飛んでしまうので、清見へと向かう速度は遅い。


「何で? 死なない?」

 爆破という方法で地雷原を突破して近づいてくるスラゴブリンに戸惑うが、迫る速度の遅さに助けられて安全圏へと移動しながら再び爆弾をまき散らしている。

 このままではせっかく火を放った物資に気を取られて、オレンジの勇者――清見から離れている兵士が、爆発音を聞きつけて戻ってきてしまう。


 勇者襲撃に残された時間は、少ない。


「モグゴブリン隊、出番だヘビ」

「きゃあ!」

 清見の足元に穴が開き、落ちると同時に周囲の地下からモグゴブリンが襲い掛かった。

 直後に大爆発が起こり、モグゴブリンが吹き飛ぶ。

 穴の中に大量の爆弾を撒いたのだろう、爆発の規模はかなり大きく、連鎖爆発を起こして地面にばら撒かれていた爆弾も巻きこんで大爆発となった。


「臭うが……浅せぇようだヘビ」

 毒蛇ラッコの鼻が人間の血の臭いを捕らえたが、重症にしては臭いが薄い。

 この大爆発では、すぐに兵士が邪魔をしにやってくるだろう。

 幸い全ての爆弾は、今は消滅している。


「こいつぁ、ちと旦那に大口を叩いちまいやしたかねヘビ」

 この隙を逃すわけにはいかない。

 毒蛇ラッコはオレンジの勇者――清見の背後から、その首筋に噛みつきわき腹に爪を食いこませる。

【腐食】の能力で爪や牙がボロボロになっていくが、瞬時に腐食してしまうような強力な能力では無いようだ。

 これなら毒もは効くかもしれない。


 そう考えたところで、地面に爆弾が撒かれた。

 爆弾はまとめて爆発し、その威力は毒蛇ラッコの下半身をバラバラの肉片へと変える。

 上半身は大きく吹き飛び、腐食していた爪と牙は先端を残してポッキリと折れた。


 少し離れた場所にべしゃりと落ちた毒蛇ラッコの上半身は、そのまま動かなくなった。


 物資の火災に気を取られていた兵が、度重なる爆発音を聞いて慌てて戻ってきた。

「勇者様! どうされました!」

「おいっ! 清見様が倒れているぞ!」

「救護班! 急げ!」

「げっ! 大トカゲが死んでるぞ」

「襲われたのか? 見たこと無い魔物だ……」


 オレンジの勇者――清見は兵たちに連れられて行き、後には毒蛇ラッコの上半身だけが地面に落ちていた。


 そこへ1人の兵士の影が近づいてきていた。


 ――――


「まだ生きてるんだろ? 魂が出てきて無いぞ」

「その声……旦那ですかいヘビ?」

 上半身だけになった毒蛇ラッコがうっすらと目を開け、牙が折れて無くなった口でべちゃべちゃと俺に話しかけてきた。


「せっかくそこらで死んでた兵士の装備をはぎ取って変装したってのに、声でバレちまったか」

「そういう格好を見ると、やっぱり旦那は人間なんですねぇヘビ」

 俺は今、人間の姿で兵士の恰好をしていた――まぁ元々人間なんだから、敵に身バレはしないだろう。


「人間の姿だと気になるか?」

「気にしやしませんよ、人間だろうが化け物だろうが旦那は旦那ヘビよ」

「そうか――ところで勇者の傷の程度は、どんなもんだ?」

「手応えはありやした、毒も聞いてるはずでやすが――それでも(タマ)までは取れやせんでしたヘビ。当分は役立たずでしょうが、意識が戻れば爆弾製造機として戻ってきちまうでしょうヘビね……」

 そろそろ話すのも限界のようだ、かなり無理しているのだろう。


「もう死んでもいいぞ」

「しんどいんで、サックリ()ってもらえやすかヘビ?」

「おう、()()()

 俺は兜を脱ぎ、カブトムシの鋭い角を頭に生やしてサックリと毒蛇ラッコの首を落とした。

 魂の回収をして、ここでの戦いは終わった。


 ――――


 兵糧を失った人間国軍は、グラビン砦攻略戦において短期決戦以外の選択肢を失った。

 だがオレンジの勇者が意識不明になって爆弾の補充ができなくなり、更に我々からの奇襲への備えを警戒しながら、砦を短期決戦で落とすというのは事実上不可能だろう。

 紫の勇者の戦死による、士気の低下も大きい。


 人間国軍の撤退を見届けてから、俺たちも秘密基地へと帰る事にした。

 基地へ帰るまでが作戦ですよっと。


 …………


 そろそろ基地へと辿り着こうかという頃、基地から慌ててこちらへ向かってくる人影が見えた。

 留守を任せていた地割れ店長である。

 息せき切ってやってきた地割れ店長による報告に、俺は呆然とした。


「モロフンドの街が人間国に占領されました、ジャラク平原の獣人国軍が敗北したようです」

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