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1-8.友達と魔法の可能性を探しましょう(2)

メリーです。今日は、少しばかり、リーン以外の過去に飛ぶので、3人称で書いてみました。




1-8.友達と魔法の可能性を探しましょう(2)




 いつもと変わらない場所。

 ここに来るようになったのはいつからだろうか。エルザはふと思いながら、周りは草木で覆われた獣道を歩いていた。

 どこにでもあるだろう森の中に、ぽつんとあったフウノの女神像。風の女神ウエンデイが奉られていた秘密基地。

 若草が生える場所に近づくに連れて声が聞こえてくる。広場にある木材の周辺には村人の子供たち全員がおり、見覚えしかない彼らは私と目が合うと、気まずそうに片手を上げて挨拶してくる。

 エルザは驚きつつも、片手をあげみんなに挨拶する。


「(きっと、みんな手伝いに来てくれたんだわ。)みんな、ありがとう!!!」

「まぁな」

「何も言っていないのに……」

「面白そうなことをするんだって」

「おう!」

「さて、適当に作ります?」

「う~ん。リンちゃんが魔法を使って作るみたいなことを言ってたから、来るまで待ってようかな」

「オオーー」

「ケェーー」

「…………」


みんなの甲高い声が交わる中、ガルヴィーとサンニュは声にならない悲鳴をあげ、頭を抱えて転げ優っている。

そばにはタクトがおり、魔導映写機を様々な方向から眺めていた。


(よくリンちゃんを含めた4()人で、魔道具の試運転をしていたみたいだけど、何かあったのかな。)


エルザは、目線だけ二人に向けて、今度は何をやらかしたのか聞いてみた。


「あの二人はどうしたの?」

「「「あー……」」」

「もう!はっきり言ってもらえないと、私がわかんないよ!」

「「「タクトさん。お願いします」」」


 三つ子の男の子達は顔を赤くさせて、口どもる。

 エルザは、はっきりしない彼らにモヤモヤ感を募らせていると、そんな彼らはしゃがんでいたタクトに向けて手の平をだす。注目を押し付けられたタクトは、平然とした態度で立ち上がると、握っていた拳を解き、無言で別の方向を指さす。

 指の先には、昨日と同じ木材の山があった。


「木に不具合でもあったの?」

「いいや、その下」

「草?」

「いや、それより上」

「本?」


 エルザは、目線を上下させると、視界の隅に昨日にはなかったものがあったることに気づいた。分厚い本のようだ。新しい魔導書か何かだろうか。

 タクトは、顔に手を当て、ポツリの口にする。


「あいつらは、リンをはじめ村の女の子――特にリンとエルザ、を魔導映写機で撮っていたんだ。しかも三年もの間に及び、10冊。何冊も村の()に売っていたようだ。今まで気づかなくてごめんな」


 そんな、エルザにとってよくわからないことを口にした。

 エルザは、タクトの申し訳なさそうな一言に、


「それがどうしたの?可愛く撮れてる?」


 何がいけないのかよくわからなかったので、気になっていた本を手に取り、適当に開いた。



……


………


は!?


可愛い。

エルザはこれ以外に言葉が思いつかなかった。あまりの可愛さ情熱さに、嫉妬する心など生まれず、見とれていたのだ。


(リンちゃんの普段の笑顔もいいけど、何この笑顔。見たことない!ただの寝顔のはずなのに、どうして目を見開きたくなるほど心にくるのだろう?ただの鍛錬している姿なのに、どうしてこちらまで鍛錬したくなるような錯覚を受けるのだろう?こちらまで鍛錬したくなってきたーー!!!)


「おい!エルザ!燃えてる!燃えてるから!」

「ふっふっふ。今の私は気分がいいので、リンちゃんが来るまで、魔法を教えましょう!」

「おい、リン化してないか、あれ」

「なってるよな」

「俺もそう思った」


 エルザは、本を元の場所戻し、これから使う魔法が周りの物を燃やさないように距離をとり、三つ子の子――イー、ロー、ハーに魔法の説明をする。


「こう、ぐわーと魔力を集めて、バーンってするの!」

「「「……わからねーよ!」」」


 どうやら、エルザは説明するのがうまくなかったようだ。


(あれ?昔誰かが……そうだ。お母さんも、私と同じ事を言っていた。そうか、だからあの時。)


『ぐわーとためてバンと解放するのよ』


 エルザは昔のことを思い出していた。

当時、母親に言われたこと。その時は魔法のことを言っていることだのは分からなかったが、今なら魔法のことだと実感していた。エルザが初めて魔法のコントロールに成功した時、彼女の魔法のイメージはその言葉と同じだったからだ。

 7歳にしては、賢明だったエルザの意外な一面。擬音語や効果音のような説明。

エルザにとって誰かに教えるということは、初めてで、そして教える難しさを初めて実感すると同時に母親が言っていたことを理解した瞬間だった。








 4年前。

 リーンとエルザが出会うまで1年とちょっと。

 この頃のエルザは、賢明でも何でもないただの女の子だった。

 母親譲りの紅色の髪をいかに可愛く結ぶのかを楽しんだり、母親の髪を手入れしたり、父親に甘えたり。

 家の中が全ての世界だった。

 家に監禁されていたわけではない。毎日、外に行くし、顔も合わせる。ただ、エルザは引っ込み思案で両親の後ろに隠れるような子だったのだ。目で見えたものが何なのかを確かめに行き、やっとこさ自分の伝えたいことを言葉にし、両親の手を握っていた。

 だからだろう。大好きな両親が、いつも話す人、話題に上げる人が気になった。


「今日もリュウゼンさんたちのおかげで村は安全だ」

「そうね。ザシュッと斬っては倒し、ゴゥーと魔法で燃やしつくすのはいつ見てもいいものだわ」

「――も無理はしないようにな」

「分かっているわ。ガーとやってポンってするだけだから、大丈夫よ」

「母さん。エルザの前では普通な言葉遣いを心がける約束だろ」

「あらいけない」

「ねぇ。リュウジェンさんって誰?」


 夕食の食卓にていつも会話。

保存のきくパンとスープ、採りたての野菜という質素だが、栄養はしっかり取っている食事が終わった後。

 エルザは、食べ物を溢さないように黙々と食べ終わると切り出した。


「リュウゼンさんは、この村を守っているすごい人なんだ。エルザも将来は、リュウゼンさんみたいな強い人になるんだよ。」

「へー!すごい人なの!」

「そういえば、明日は母さんと結界の貼り直しをする予定だったよな」

「ええ。ギュワっとするわ」

「明日、リュウゼンさんと一緒に村をまわろうか」

「え!本当!やったぁーー!!!」


 父親の言葉をうのみにしたエルザは、両親が尊敬している人に幻想を抱き、期待していた。

 しかし、幻想はすぐに崩れ去った。


――あんまり、かっこよくない。


リュウゼンさんと呼ばれる人に出会った。

中肉中背で、目の周りにはクマを作り、首は船をこいでいる。

話をしても受け答えしているのは奥さん方で、リュウゼンは終始頷くだけだった。

 王子様のようなかっこいい人だと思っていたが、ただのまるでだめなおっさん(マダオ)だったのである。

 話すと思えば、娘の自慢話で、


「同じくらいの娘のリーンも可愛い」

「誕生日は1日早い」

「ソフィアに似て可愛い」


娘を愛する親ばかだった。

 こんな人よりお父さんの方がかっこいいな。どうしてみんなこんなダメな人を尊敬するの?わけわかんない。

エルザは、話している時のおっさんよりお父さんの方が格好いいと思っていた。


「どうしたんだい、エルザ。昨日はあれ程楽しみにしていたのに、今日は不機嫌だね」

「あんまりかっこよくなかった。」

「……う~ん。そうだな~。エルザはリュウゼンの一部しか見てないんだよ」

「そうよ。エルちゃん!ママなんてサッシュって何度も助けられたんだから。魔物と戦っている時のリュウゼンさんの後ろは安心感があるのよ」


エルザの両親はこぞって、娘に説明するが、3歳の子供には到底難しい話だった。

エルザはとりあえず、気になる言葉を聞き返した。


「戦闘って?」

「剣や魔法を使って、悪い者を倒して、守るべきものをその手で守っていくことよ」

「魔法ってどうやって使えるようになるの?」

「そうね。エルちゃんにはまだ早いかもしれないけど、例えば『――――――』とか使う時は、ぐ~んとためて、ぐわーと魔力を高めて、バーンッ!って放つのよ」




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「おい、エルザ。写真を見たまま固まっているがどうかしたのか」

「っは?ううん。リンちゃんと出会う前のことを思い出していただけ」

「そうか。村の中だからまだいいが、戦闘中に考え事とかすると命取りになることもあるから気を付けろよ」

「もう!分かってるって!!」


 エルザは、メイド服姿の親友に写真を見せ、魔法のことを思い出していた。


(あの魔法は何だったんだろう?今度聞いてみよう)


 少し怒っていたリンの様子はどうなったのだろうと、エルザは周囲を探してみれば、魔力を高めて魔法を発動させていた。


「『インパルス』『ソフトウィンド』――!!!」


 メイド服のリーンが、体の周りでパチパチ音を響かせながら、柔らかい風を生み出す。

 ソフトといいながらリンの魔法はガルヴィーとサンニュを軽々空中に浮かしていた。

 その出来事をみたエルザは、目を見開き、楽しそうと感じた


「あの、リンちゃん。次は私も空を飛びたいなー。なんて……」

「リンちゃん、俺も!」

「私も!」

「俺も!」

「僕もっす!」

「ちょっと!?どういうことですか?」


 お仕置きとして、空中に飛ばしたというのに、リーンは大人数から予想外なことを要求されたため戸惑う。彼らを地面に落さないように、両の手を突き出したまま魔法を維持するが、リーンの頭はクエスチョンマークで覆われていた。

 周りには、年少者たちとエルザが今か今かと待っている。

 そして、便乗して浮かれている人がもう1人。


「自分でジャンプしても自然落下するだけっすから。自分も飛んでみたいっす!フワフワ~って優雅に飛んでみたいっす!!!」

「ん?おい、なんでハヤトがいるのですか?仕事はどうしましたか?」


 リーンは魔法を解除し、ガルヴィーとサンニュは落下した。もちろん安全を考慮して、秘密基地ように集められた草の上に落している。

 落下して動けないふたりに対して、タクトはいつもより強い口調で、言い放つ。


「まあ、リンだって全てを許すわけじゃねーんだ。今回は甘いようだったし、本人たちも納得しているようだから、俺は何もしない。だが、犯罪には手をだすな!いいな」

「「はいっ」」


そんなガルヴィーたちは急落下した影響をもろに受け、何とも言えない初めて味わった感覚に戸惑いを隠せないでいた。

 ハヤトはじっくりと経緯(いきさつ)を観察し、興味深げに風魔法の残骸を触ると、一息つき、リーンとエルザを交互に指さした。


「様があるのは、二人にっす。今日は久しぶりに休暇をいただいたんすけど、アンナさんに伝言を頼まれたっす」

「「師匠はなんて?」」

 

 リーンは腕を組みながらハヤトを睨み、エルザはリーンに抱き着きながら、新しい魔法を教えてもらえるのだろうかと目を輝かせていた。


「予想どおり、新しい魔法を教えるみたいっす。そのために、今日の夕方――まあアンナさんが帰って来るぐらいに村の入り口に来てくれだそうっすよ」

「「やったーー!!」」

「それは、そうと、自分にも風魔法かけてくださいっす」


 リーンはガッツポーズを上げ、エルザは力強く握りしめた。




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




~おまけ~


<クマさんパンツ>



 魔法で空中浮遊を楽しんでいる最中。


「リンさん。その魔法でリンさん自身が飛ぶことはできないんですか?」


 みんなが一通り飛んだ後、2周目に入っていると、年少者の女の子が聞いてきた。


「え?」

「他人を飛ばせるから、自分も飛ばせるかなって」


――なせ、そんな単純なことに気づかなかったし。


 私は、つい先程お仕置き用に作った即席の魔法を維持しながら、単純な考えを見落としていたことに気がついた。

 どんなに記憶力がよく、予測力があっても、即座の反応力は未だに鈍いままですね。

 そもそも、自分一人なら<魔力解放>をコントロールすれば簡単に飛べる。

 既に飛ぶ方法は確立していたため、他の方法でも飛ぶ挑戦をすっかりしていなかった。


「ふっふっふ!そうですね!自分にもかけてみましょう!」


 私は飛ばしていた、ローとハヤトを下すと、自分自身に向かって魔法を使った。


「『ソフトウィンド』!!……あれ!?前が見えません?」

「リンちゃん!パンツ隠してぇ!!!」


 リン自身がフワフワと浮いていたが、それと同時に、メイド服のロングスカートが捲り上がっていた。


「ぶっふ」

「わー!クマさんだ!」

「サンニュ!シャッターチャぐべらっ」


 村の女の子でワンピースやスカートを履いている子がいなかったのは、たまたま前日に、タクトが長ズボンの有用性を語っていたからだろう




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