1-4.友達に魔法を教えましょう(3)
あとがきでキャラ紹介忘れてた汗のメリーです。
タクト
村の子供の中で一番の年長者、15歳。
村の子供たちからは、タク兄と呼ばれている。
ちなみに、父親はガメッシュ。
左目が義眼で全身に生々しい傷痕が残っている。
村長をしている。
1-4.友達に魔法を教えましょう(3)
夕食後。
夕食中に今日あったことを言うリュウゼンは、最後にリーンのことを言った。
「今日からアンナにリンとエルザを見てもらおうと思う」
「あなた、どう言うことかしら?」
「魔法だ」
「そう。もう先伸ばしもできないのかしら?」
「リンもエルザも、もう7歳だ。魔法の危険性を理解した上で、魔法の大切さを学んでほしい」
「あなたがそう言うなら、母さんからは何も言いません。でも前もって相談ぐらいしてほしいわ」
リーンの母親は少し考えた後、リーンに対して今日から片付けいいよと言い残して、片付けを始めた。
いつもどおり手伝おうとしたリーンは、食器も手に持ち、
「手伝うことも大切だけど、今日から忙しくなるわよ。魔法は奥が深いのよ」
「え?」
「リンには、私から教えないといけないこともあるから、寝る前に母さんのところに来なさい」
「うん」
片付けがいつもより減り、エルザたちが来ないことで暇になった。
メイドとして休憩できるときに休憩すべきだろうが、体力が有り余っているリーンは、どうせ使っているしという気持ちで、家にある魔石に魔力の補充をする事にした。
「早く来ないかな」
「もうすぐ来ると思うぞ」
リーンが手に持っている魔石は、魔物から取れた魔石に錬金術師が加工したものであり、魔法を蓄えるだけで魔石の属性にあった効果が現れる代物だ。
今補充しているのは、お風呂場で使っている魔石で、40度の水が出続けるもの。ただ問題なのはオンとオフの切り替えができないことだろう。普通は使う時に必要な魔力を補充するものだが、リーンの家では、リーンのMP最大値に物を言わせて、全ての魔石に6割程度補充していた。
水の魔石の他は、雷、土、風、火、が一般的で、他の属性の魔石は珍しいため、開拓村のような場所にはまず来ない。
そんな開拓村に住んでいるのに魔石が豊富なのは、リュウゼンたちが魔物を狩り、村に住んでいる錬金術士が魔石を加工する事ができるからだ。
(魔石の魔法の補充も終わってしまいました。何をして待っていましょう?)
リーンが扉を見た時、扉を軽くたたく音が聞こえた。リーンは音が聞こえると共にドアまで素早くかけより、勢いよく開け放つ。
「よっす!」
「こんばんはリンちゃん」
足音1つ立てずに近づいたにも関わらず、それほど驚かない様子の2人。
玄関の前には、エルザとハヤトがいた。
夜になり外は暗いものの、月明かりだけで、二人の表情は見えるぐらいだ。
エルザはにっこりと笑っており、ハヤトはエルザを肩車している。
「エルザちゃんのいうとおりっすね」
「でしょお!」
エルザは宙返りの要領で素早く降りると、ゆっくりと入ってくる。ハヤトはエルザの後に続くようにお邪魔するっすとリュウゼンに向けてお辞儀をした。
「アンナさんは了解だそうっす」
「すまないな」
一仕事してきたハヤトにリュウゼンは、装備の手入れを中断し、腕を組みながら頷いた。
ハヤトさんの声が聞こえたのだろう。奥で歯磨きをしていたスーちゃんの手を引いて、反対の手を頬にあてながらリーンの母親であるソフィアが出てきた。
「ソフィさん、お邪魔していますっす」
「主人がいつも迷惑をかけます。」
「いえいえ、そんなことないっす!リュウゼンさんにはいつも自分がお世話になってるっす!」
定番のような挨拶を済ませると、下から見つめている視線に気が付いたハヤトは、しゃがんで目線を合わせた。
「スー君も大きくなったっすね。」
「ママ、このオジサン誰?」
「こら、ダメでしょ、スーちゃん。」
「ショックっす」
ハヤトは、子供から送られた悪気のない一言に笑顔のまま動かない。
そんなハヤトとは裏腹に、自分の息子を躾けるソフィアは、手慣れたもので、素早くお詫びを言いつつ、ソフィって誰?という質問に対しても丁寧に答えていた。
そんな大人の様子に、初めての対応にしては手馴れ過ぎていた。
(私の時はこんなことがなかったから始めてのはずなのに……すごく手馴れていますね……っく。これがメイドに求められているものですか!)
「ぐぬぬ。これが大人の魅力というものですか!」
「リンちゃん、ちょっと違うような気がするな」
「大丈夫っすよ、ソフィさん、……あれなんか前にもあったような……それに自分まだ23っす、23はもうおっさんっすか」
ブツブツと口ずさんみながらハヤトは、エルザとリーンに近づいた。
yesロリータ!yesタッチ!
するのではなく、これからアンナの家まで送り迎えするためだ。
そんなハヤトの涙声を聞いた、リーンは懐かしいという抱いていた疑問も忘れ、目線が合ったエルザとお互いに小さく笑った。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「ついてくるっす」
右手でエルザ。左手で私。優しく掴み引っ張っていく。
――この後の事を知らなかったら、ハヤトさんは幼女二人と手を繋ぐ怪しい人ですね……っと。これ以上考えるのはやめましょう。
連れてこられたのは、木造の一軒家。今までにも何回か来たことのある家――アンナの住居だ。
「アンナさん!2人を連れてきたっす。」
「「お邪魔します」」
「「いらっしゃい」」
靴を脱ぎ、部屋に上がると、女性と男性の声が一緒に聞こえてくる。
ハヤトが案内した家にいたのはアンナとナイトだった。
アンナは柔らかそうな絨毯の上でいくつかの本を漁っており、これじゃない、どこにあったかしらと、いくつもの本をペラペラしながら流し見ている。
そんな彼女をニヤニヤ見ながら、ソファーでくつろいでいるのが、ナイトだ。
「あれ?ナイトさん、同居されていたのですか?」
「リンちゃん」
予想外な人物に、私は驚き、口から出てくる言葉は少し棘がある。そんな私たちのやり取りをみて、エルザが呆れたような目線で睨んできた。
あ、はい。すみません。
私たちのやり取りなど目に入っていなかったハヤトは、にやけた顔に怯えているのかと思っただろう。
「ナイトさんもその顔やめてくださいっす。2人とも怯えているっすよ。」
「いや、ハヤト。リンは俺のこと覚えている、だろ?……そっちのガキは結構前にあったような気がするな。ええと、エルザって名前だったか」
私はゴクリと喉を鳴らし、思わず顔を背ける。
「な、何のことでしょう。ナイトさん」
「ップ。」
目を揺らしながら冷や汗を垂れ流す様は、あからさまに動揺していることが分かっただろう。
そんな私をみて無表情で笑うナイトはかまをかけていた。
――エルザもいるんですし、ふざけないでください。
お互いに冷や汗を流しながら、この空気どうにかしてくださいとハヤトに目配せするも、苦笑いするだけだった。
リュウゼンの娘として、ハヤト、アンナ、ナイトの彼らには幾度となく会っているが、ナイトとはちょっとばかし深い関係だ。
と言って、対した関係ではない。私とアンナさんが親しげに話していると、ナイトがどこからともなく見てくるのだ。通り過ぎるのを装ったり、木に隠れていたり、時には影に隠れていたりする。
これだけなら、お宅の彼氏さんストーカーしていますよと言うだけだが、彼には弱みを握られている。
――私が夜密かに、両親の夜伽を盗み見ているということを。
あ、白い目で私を見ないで!
だって、邪な気持ちで私が誰かに触れると、私自身気絶してしまうんですもの。
見るぐらい許してください。
両親の尊厳もあるが、主に私の尊厳を守るためにも、彼がストーカー気質であることは堂々と言えない。
(ちょっと、どうしてくれるのですか)
(わりーわりー、ついな)
私とナイトがアイコンタクトで会話していると、そんな私を不思議に思ったのだろう。エルザが脇腹を指でつついて聞いてきた。
「ねえどうしたの?いつものリンちゃんらしくないけど……」
「いえ、今ここには村を守ってくれている人達が3人もいると思うと、私だって緊張します――」
「あ、あった、これだわ」
方便を述べていると、探し物が見つかったアンナが、他招きして、私たちを呼ぶ。
これ幸いにと、私はアンナさんに駆け寄り、納得していない顔で続くエルザ。
「こほん。それで、2人に魔法を教えることでよかったのよね。」
「「はい!よろしくお願いします!」」
「固くならなくていいから!私はそんなたいそれた人でもないし、座ってちょうだい」
素直に絨毯に座ると、足から伝わって来る感触がサラサラして嵌りそうだ。
先程まで、何度も聞いてきていたエルザも、隣ではせわしなく足を動かしており、感触を楽しんでいる。
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『鑑定』
名前:売れ残りの絨毯
製作者:haueerb;nui
説明:nbeの皮とniubの羽毛を錬金術で合成したもの
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パチン
鑑定の文字化けに、またかと思っていると、手を叩く音が聞こえてきた。
「はい、2人とも、絨毯で遊ぶのもいいけど、魔法はいいのかしら?」
慌てて背筋を伸ばし、魔法を教えてくださいとお願いする。
「それじゃあ、まず、この魔法陣に両手を置いてみて」
アンナはエルザと私の前に魔法陣が書かれた紙を置く。
言われるがままに手を置くと、光を発した。
「手を離さない」
光が出てきたので、手を引っ込めてしまった。エルザも手を引っ込めていたようで、早くしなさいと促される。
「光が収まるまで手を乗せていてね」
私も初めて見たころはびっくりしたものよ、と言いつつ、先程より柔らかい口調で言う。
私は、今度は手を引っ込めないようしようと両手ゆっくりと乗せる。
手を乗せると、光は弱まるどころか、徐々に強くなっていく。
びっくりしてアンナの方を見るが、頷くだけで、何も言わない。
横を見れば、エルザの方も光が出ているし、このままでいいのだろう。
……
………
ゆっくりと待っている間、魔力が少しずつ引っ張られている感じがすることに気がついた。
(魔力が逃げないようにコントロールすることもできますが、このままの方がいい気がしますね)
そのまま魔力が吸い取られていると、徐々に吸い取る量も減り、それにともなって光も収まっていく。
そこに現れたのは、3D状のような歪な形を表したようなものだった。
「これは、その人の魔法潜在能力と、現在使用可能領域を示しているわ。簡単に言うと魔法の才能のことよ――」
今したことは、魔法の存在能力と現在使用可能な魔法を把握するためのものだったらしい。
この世界の魔法は大きく3つの種類に分けられる。……が、どの魔法が使えるのかは本人ですら分からないことの方が多い。極度の場面では使えると直感で分かるそうだが、日常での生活程度では、魔力が感じられてもどの魔法がどこまで使えるかは分からないそうだ。
そのために、かつて作られたのがこの魔法陣。魔法陣の名前は、歴史と共に消えていったそうだ。
しかし貴族であるクラリネット家が、魔法陣が書かれている紙を発行しているため、低価格で買えるようなものらしい。
「クラリネット家は貴族でもいい貴族なんですね」
「う~ん。これだけで言い切るのはいけないと思うわ。それに、貴族については、私よりリーンのお父さんの方が詳しいから、今度聞いてみて。」
アンナはそう区切ると、魔法について話し始めた。
魔法とは、MP(何の略かは終わりなき審議らしい)のエネルギーを使って、世界の理に新しい別物質を発生させる現象のことで、誰しもが使用できる可能性を秘めているもの。ただ、得意か不得意で魔法の威力や発現のしやすさが変わるものだ。
大きく分けると、基本魔法、血統魔法、原始魔法の3つに分けられる。
基本魔法は、<火><水><土><雷><風>の5つの属性からなるとされており、1属性の一般魔法、2属性以上を組み合わせて使う複合魔法、他者と魔法を共鳴させる混合魔法等、様々な魔法がある。この魔法は他の血統魔法や原始魔法に比べて研究が進んでおり、日常で使える魔法から戦争に使われる魔法まで幅広く魔法が使われている。
血統魔法とは、名の通り、一族秘伝の魔法とされている。有名なのは、精霊と契約した一族は、その精霊の使う属性魔法の威力が跳ね上がる。リーンの先祖であるフウノは、かつて風の精霊と契約している。
原始魔法は、原理は不明だが、光と闇の2種類の属性からなっているとされている。無属性魔法はここに含まれ、<鑑定>などがある。
魔法の説明をざっくりと終え、一息つく。
「それでは、今映っているこれの見方を教えるわね」
アンナは指を指し、3Dみたいなものの説明を始めた。
「上層、中層、下層に大きく分けらてているのは、見て分かるわね。ここからここまでが上層つまり、原始魔法。」
「輪が2つあるように見ますが……」
「あ、本当だ」
2人の原始魔法領域には、大きさは違うけれど、輪に見えなくもない。
「内側の線が現在使える割合で、外側は限界域……とされているわ。これは基本魔法でも血統魔法でも言えることね。……まあ、外側の輪は、成長と共に形を変えていく不確定のものでもあるけれど……」
「どうして外側の形も変わるのですか?」
限界域が変わるのはどうしてだろう。そう疑問に思うと聞かずにはいられなかった。
「限界は、いつ何時でも、変わるものよ」
アンナはウインクしながら返答する。
私は目が点になり、エルザは難しい顔を浮かべ、首を捻る。
そんな私たちをみて、アンナは肩を落としながら、言いなおした。
「限界は常に同じではないということよ。それに2人ともきれいな輪ね。ほとんどの人が歪な輪になっているのに……」
「歪?」
「いびつって何?」
内側も外側も綺麗な輪のように見えるが、どこが歪なのだろう。
私の疑問に対して、エルザは言葉がわからなかったらしい。アンナはお茶を啜っているので、聞いてきたようだ。
「いびつというのは形がゆがんでいる、つまり綺麗ではなく、グニャグニャしているということです」
エルザと話しているのに夢中になっていると、アンナが小さく喉を鳴らし、再び説明を始めた。
上層は原始魔法、中層は基本魔法、下層が血統魔法になっている。
上層は、魔法の根源を示し、形が綺麗なほど、大きければ大きいほど、魔法が使いやすくなる。
輪が綺麗でも大きさが小さければ、使える魔法は小さいものになる。けれど、輪が大きいからと言っても形が歪だと、魔法は使えるが使いづらいそうだ。
中層は、5つの属性を表した五角形のなっている。
限界値は、私は風属性が、エルザは火属性が大きく吐出している。内側の線は2人とも点のような小ささだった。
下層は、血統魔法の存在能力を大きさで示したものだ。
フウノの血を引いている私は、かなり大きいようだ。エルザほどんど輪が見えない。
ただ、アルファベットで
M E I D O L O V E
と出てきている。アンナさんは、文字見たいね。これは新しいわ。グヒヒ。と女性がしてはいけない顔で笑っており、この文字が読める私は恥ずかしさで顔が熱くなるのが分かった。
――見ないようにしていたのですが。それに……
これを読んでおいてと本を渡すと、メイドラブの文字を、辞書らしきものを使って調べている。
どうせ分からないだろうと、半ば諦めつつ、渡された本に目を移した。
「ええと、魔法概論基礎。あ、これ、母さんに渡されたやつと同じ題名だ」
ただ、読んでみると、簡単な言葉で解かりやすく書かれていた。
エルザも読みやすかったのだろう。
早速、魔法を感じるのに集中していた。
…
……
………
(あまりにも面白かったので、全部読んでしまったっ)
所々に著者のコメントが書いてあり、思わず笑ってしまうようなデフォルトな絵が、専門書だと感じさせない。
町にあるという図書館に行く機会があれば、同じ著者の書いたものを読んでみたいものだ。
リーンはそう思い、表紙の下の方を見た。
――シルヴァンヌ・クラリネット
クラリネットの者が書いているものだった。
先程の魔法陣といい、魔法に詳しい者たちなのだろう。
(魔法に正通している貴族……いいですね。ぜひ、メイドとして雇ってほしいものです!ぐへへっ)
頬を叩いたリーンは再び本を開き、チェックしていたページに目を移した。
SIDEソフィア
唐突に主人が言った。
お願いするですって。
いつもいつも勝手に決めて……
どういうことなのか説明してもらいますからね。
え?私たちよりアンナさんの方が詳しいから。魔法を安全に使ってほしから。
あらあら、確かにそうなんですけど、あの子は……
ふう。
事前に言ってほしいんですよ。私だって、リンに教えたいことは山ほどあるんですから。
あなたは、朝の時間に剣術を教えてるんですから、ずるいです。私だって……
あ、スーちゃん!パパと組手ごっこするのは歯磨きが終わってからにしましょうね。