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1-1.生まれたばかりは未知から始まるもの

匿名希望のメリーさんが、今日は通ります。



1-1.生まれたばかりは未知から始まるもの




 風の都ウンウィ――邪神の加護により魔物のステータスが跳ね上がった世界にある都の1つ。いくつもの村や町が無くなっていった中、魔物の進行を防ぎ切ったこの街は、平和の象徴と言われていた。

 そんな都も町だけで守ってきたわけではない。町を覆うようにいくつもの開拓村があり、魔物の進行を食い止めていた。町から離れれば離れるほど危険は増すが、人々の安全はいくつもの村の犠牲によってなり立っていた。


 街から離れ、未開拓地に最も近い場所。本来であれば人が安全に住めるような場所ではないにもかかわらず、100人程度の小集団であるが小さな集落がある。未開拓地であるこの村は、町からの物資もままならず、魔物の危険性と隣り合わせ。それにもかかわらず、自給自足しなければ生きてはいけない。

 しかし、村人たちに恐怖は見られなかった。

 その村が成り立っているのは1人の男の存在。その男が村の先導に立ち、魔物の間引きを行っていたからだ。


 今日もその男――リュウゼンは、4人組の集団で村周辺に魔物がいないか見回っていた。

 村の英雄的存在でリーダーを務める片手剣使い――リュウゼン。

 戦闘補助が得意な短剣使い――ナイト。

 少年の幼さが残る両手剣使い――ハヤト。

 紅一点の魔法使い――アンナ。


 それぞれが使い古された防具を身に纏い、武器を手にして歩いている。

 その身に着けた服装は勿論のこと、磨かれた武器や、足音を立てないで歩くその姿は、彼らが戦歴の者であることは明らかであろう。


「魔物発見!前方250程度、数30前後。」

 鬱蒼とした森に響いた声。

緊張感を高める彼らは、近づいてくる魔物にすぐさま反応できるように準備していく。

 5秒それとも10秒だろうか。静寂する森の中で草木を踏み潰す音が大きくなっていくのが彼らには感じ取れていた。

 魔物が飛び出して来た瞬間、4人の中で一番若い男が、魔物名を言った。

「ゴブリンみたいっすっ」

「いつも通りでいく!」


 リュウゼンが指示を出すと、他の3人もすぐさま動いていく。ゴブリンが飛び出してから1秒にも満たない間に、彼らは対応していた。


「『鑑定』。上位種なし、レベル20~27。」

「変更なし!『身体強化』ーー!」

「『並行詠唱』。■□▼……」

「『攻撃力上昇』っす!」


~ステータス~


名前:名無し

種族:魔物

レベル:23

HP:728/728

MP:65/65

SP:68/68

物攻:245

物防:243

魔攻:244

魔防:244

素早さ:44


 30匹近くいる魔物の絶え間なく続く攻撃に対して、彼らは防戦を強いられていた。


「リュウさん!数が多すぎますっ!」

「隊列を守れば、死にはしない!もう少し耐えてくれ!」

「そんなこと言われても怖いものは怖いですって!」


 ハヤトが悲鳴をあげながら、一心不乱に、剣を振っている。多少の粗さが残るものの、剣の太刀筋は見事なもので、魔物からの攻撃をどうか防いでいた。

 リュウゼン、ナイト、ハヤトの3人は、一撃を受けないように攻撃を受け流しながら、ゴブリンに傷を与えていく。


「みんな離れて!『ファイヤアロー』!『ライジングボルト』--!!!」


 アンナの声で即座に離れる3人。

 離れると同時に稲妻が走り、続いて無数の炎の矢が襲ってきた。

 炎が消えると、焼け焦げた跡が残り魔物は全滅している。


「あちっ……危ないっすよ!」

「早く片付けるにかぎるでしょ!」

「アンナの言うとおり。」

「そ、そんな~。レベル20越えのゴブリンが30体もいたんっすよっ!普通では無理な数が一撃ですよ!僕、危うく死にかけたんすけどっ!?」


 1人だけ遅れたハヤトは、魔法の熱気を浴びていた。

 戦闘指示から遅れると命の危険があるとはいえ、かすっただけでこの熱さだ。怖いものは怖い。いくら信頼しているとはいえ、多少の文句がいいたくなる。

 そんな彼の気持ちを落ち着かせるように、肩を寄せるアンナとにやけ顔で同感するナイト。魔物のLv20と人のLv20はステータスがかなり違うのは周知の事実であり、2人とも、かつての自分をみているようだった。

 今のハヤトでは、Lv20の魔物1匹を倒すこともできないだろう。その魔物30体近くを一撃で葬った魔法が直撃するのは、想像するだけでも恐怖心を抱いてもおかしくはない。


「正確には27体だな。」

「まだまだ、しゃべる余裕もあるね!」

「いやいや……」


 正確の数を言うナイト。バシバシ叩くアンナ。

 納得できないハヤトの様子をみた2人は、リュウゼンが助けていたことを言う。


「まぁリュウがハヤトの方の魔物を調整していたしな。」

「そうそうリュウさんは相変わらずよね~。ゴブリン全体に私の魔法が当たるようにしつつ、ハヤトに攻撃や魔法が当たらないようにしていたもん。」


 ゴブリンがハヤトの方に行きすぎないようにゴブリンの数を調整しつつ攻撃を与え、ナイトとアイコンタクトのみでアンナの方には一匹も通さない。魔法を打つ瞬間にはゴブリンを密集させ、退避が遅れたハヤトに魔法が当たらないように自分自身が盾になるような位置取りに変える。

 周囲が見渡せて、なおかつ迷いなく動ける人だからこそ、彼のもとでもっと学びたいという気持ちが、ますます湧いてくる。そんな2人の話は徐々に声量が大きくなっていた。


 先輩にあたる人たちに言われて、短い戦闘の中で自分のことで精一杯だったと、落ち込むハヤト。感謝の気持ちと憧れる気持ち、自分自身の未熟さを感じていた。


 リュウゼンにお礼をしようとするも、張本人が先程からいないことに気づく。


「ぜんぜん気付かなかったっすっ。リュウさん……って!そんなことは僕がしますから!休んでいてください!」


 話しながらも、次の戦闘に向けて魔力を回復させているアンナと周囲を警戒しているナイト。それに対して話すだけで何もしていない自分自身。

 ハヤトは、倒した魔物を解体して素材回収をしているリュウゼンに、できることを教えて欲しいと思っていた。

 

 そんなことがおきているとは知らないリュウゼン。彼は、手を休めず、解体ナイフできれいに解体していく。時折、照れくさそうに指で頬を掻いたり、たどたどしく言い訳をしたりしている姿は、先程までの姿とは全く違っていた。


「い、いや~。ド派手な魔法だったからな!ほら、使える素材を早く集めようと思ってだな……」


 こんな彼でも、村一番レベルが高い。戦闘では頼りになるリュウゼンのことをハヤトは憧れの目で見ていた。

 


~ステータス~

名前:リュウゼン・フウノ

種族:人

レベル:163

HP:1874/2765

MP:210/210

SP:204/238

物攻:166(+104)

物防:73(+49)

魔攻:60(+12)

魔防:58(+47)

素早さ:188(+4)




 ♢ ♢ ♢




 そんな彼らが守る村――風の都第1542開拓村。

 魔物が徘徊することなどありえないような暖かな光が照らされている。

 そんな朝の陽ざしが照らす中、幼い子供に微笑んでいる女性は、絵本を読み聞かせていた。

 簡易的なワンピースを見にまとい、淡い緑色の長い髪には汚れひとつ付いていない。顔は瓜二つで、子供が大人に甘えている姿、仕草や笑い方が似ていることから彼女らが親子であることは、誰の目にも明らかだろう。


「なんで、恐怖の象徴が年号の名前になっているの?」


 女性の膝の上で顔を見つめている女の子――リーンは、疑問に思ったことを口にした。

 そんなわが子の問いかけに、絵本から目線を移すと、優しい声で問いかけた。


――リーンはどうしてだと思う?




 ♢ ♢ ♢




 どうも。メイド大好きな俺こと、リーンです。

 生まれ変わって早3年。村の中ならどこへでも行けるようになりました。


 本当は、村の外に出てみたいです。でも、無理でした。出ようとしたら、母が鬼に変わりました。泣き落としは卑怯だと思います。


 それと、つい先日、弟が生まれました。お姉さん(・・・・)になりました。

 えぇ、ワタシはオネエサン。女の子になりました。もう、こうなってしまっては仕方ありません。コミュ力0の自分でも、メイドさんと仲良くなるために……


――私もメイドになりましょう!!!


 同僚がメイド!友達がメイド!私もメイド!これで話すネタが同じになり、自然と仲良くなっていくはずです!

 ぐへへっ。


 そうと決まった私は、一流のメイドになるために自己磨きをしようとしました。でも、神風さんがしていたことしか知りません。20年もの間、メイド喫茶に通っているにもかかわらず何も知らないとは……


 ええと、神風さんがしていたこと、していたこと…


 あれ?

 靄がかかったように思い出しにくい?

 よく思い出すのです!リーン!


 まず、入店すると笑顔で挨拶!その日のおススメをそれとなく提示し、料理を出す。悩み事を聞き、いくつかの複数案を出したり、その日あったことを話したり。


……神風さんのことを何も知らなかっただと!?


 落ち込んでからの私は、自ら行動に移すことにしました。

 お手伝いに自己鍛練、言葉で言うのは簡単ですが、体ができていないので、思うような結果が出せません。それでも諦めず、まずは、この世界のことについて知ろうと思います。

 そしてこれが、私の成果です。(小物感)


「『鑑定』ーー!」


~ステータス~

種族:人

年齢:0→3

レベル:3→4

HP:128/128→158/158

MP:13/13→74/74

SP::11/11→14/14

物攻:9→10

物防:9→9

魔攻:9→11

魔防:9→9

素早さ:16→17

魔法:なし→<鑑定><魔力操作>

加護:<ウェンディの祝盃>


 順に上から振り返ってみましょう。

 レベル。

 魔物を倒さなくても、レベルが上がりました。弟の子守をしていたその晩にレベルアップしたことに気づきました。その日は子守しかしている記憶がないので、レベルが上がった理由が分かりません。でも、レベルが上がったことで、物理防御力と魔法防御力以外が上昇しました。


 HP。

 1歳年を取った時、レベルアップした時、料理を手伝った日に最大値が上がりました。村の中で減ることが滅多にないため、上げ方が分かりません。メイドを目指すものとしては、最大値の上げ方を知っておきたいですね。


 MP。

 初めのころは面白いように最大値が毎日上がっていました。しかし次第に2日に1回、3日に一回、4......となっています。きっと、魔力が空になるまで使い切った成果でしょう。MPを使い切ると疲労感を感じたのち気絶しますが、今でも寝る前には、魔力放出しています。この行為がMPを上昇させるものと信じています。


 SP。

 1歳年を取った時、レベルアップ時に最大値が1ずつ増えました。MPを使ったり、運動したりすると減り、日中過ごすだけでも減っていきました。そして値が減ると、お腹がすくので、何らかの行動を移す時のエネルギーなのでしょう。SPが0になると動けなくなるそうです。

 まだハイハイもできなかったころは迷惑をかけました。MPを回復させるには、マジックポーションを飲むか、SPによる自然回復しか今のところ知りません。

 MPとSPの両方が0になると、気絶して動けなくなることで有名だそうです。絵本に書いてありました。


 物攻、物防、魔攻、魔防、素早さはいつの間にか上がっていました。


 はっきり言ってステータスのことは分からないことが多いです。両親も詳しくは分かっていないと言っていました。

 だた、この3年の間に魔法を取得しました。

 <鑑定>と<魔力操作>です。

 <鑑定>では自分のステータスしか見れません。ただ魔法である<鑑定>は、熟練度が上がると他のことも詳細にわかるようになるそうです。

 例えば、目の前にある絵本。

 自分で読んだ初めの導入だと、―― 約1000年前。邪神がこの世界に降臨し、人類と共存していた魔物は狂暴化した。魔物の王様――魔王が立ち向かうも、叶わなかったことから、暗黒時代と呼ばれるようになり、邪神が降臨したときを邪歴0年とされた。――となります。

 そして<鑑定>すると、―― 絵本。邪歴の根源がかかれている絵本。保存状態がよく読みやすい。――となります。

 鑑定するより、自分で読んだ方が内容は分かります。表紙を見れば書いてある内容は大まかに分かります。

 母さんに鑑定をかけても何も分かりませんし、今のところ、他人や他のものの鑑定はうまくいきません。


 <魔力操作>はMPを自由に動かせるものでした。とても便利で愛用していますが、物に付加するときは込められる量が決まっているみたいで、爆発しました。注意が必要ですが、時間を忘れるほど楽しいです。


 <ウェンディの祝盃>は、まあ、はい。女神様の名前がついていますね。




 ステータスでわかることはこのくらいですが、それより重要なことは、知識や技術です。そのため、絵本を読んでもらったり、短剣を振っていたり、掃除家事洗濯のお手伝いをしたりしています。メイドになるためには、ステータスで表示されないようなことでも、できるようにならなければ……






 今も、絵本読んでもらっていますが、知らないことばかりなので驚きでいっぱいです。

 剣と魔法の世界だから、ステータスはあるだろうと思っていましたから、その点は驚いてはいません。ただ、魔物が恐ろしく強いみたいです。魔物を強くしたのが邪神であり、邪神討伐が人類の希望だそうです。

 これを聞いて思いました。


――どこの英雄章だ、と。


 正直、そういうことは勇者とかに選ばれた人がすればいいと思うんですよ。たとえ私が勇者だとしても、邪神討伐なんて死んでもごめんですね。危険を冒してまでメイドと仲良くなろうとは思いません。どうせなら、勇者の帰りを待つメイドを可愛がるメイドになりたいです。


 村の外は危険と言われていますし、当分の間は、憧れのメイドを目指して、過ごすことにしましょう。


自己鍛練とかしたほうがいいのかな?






ゲスな主人公を縛る加護


<ウェンディの祝盃>


一言コメント:「私以外の人とは許しません」

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