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97 魔導列車、発進!

こっそりと連載再開。えーっと何年ぶりだ。うわ! 5年経ってるのか!

黒妖こくよう乙葉おとは捜索のため、その翁の能面をつけた顔を深々と下げ、魔方陣の中に消えていった。彼の魔力で生み出されたちょう型の微細びさいなゴーレムたちが、夜の闇に紛れて飛び立っていくのが見えた。えんの国への旅立ちを翌日に控えた俺は、乙葉の無事を黒妖に託し、龍都りゅうとへ向かう準備を整えていた。


翌朝。

龍都の東にある巨大な城門を抜けると、目の前に広がるのは広大な草原だった。地平線の彼方まで続くかのような緑の絨毯。その中央を、一本の黒い線が真っ直ぐに伸びている。魔導列車のレールだ。


「うおおお!これが魔導列車ですか!生で見るのは初めてです!」


千春さんが目を輝かせながら、馬車から降りて声を上げた。無理もない。魔導列車は巧魔が建造したばかりで、まだ一般には公開されていない。龍都にいる者でも、その存在を知る者は少ないだろう。


「ふふふ、千春は興奮しすぎじゃ。都会っ子ではないな」


「鈴音氏!あたしは生粋の魔道士です!新しい魔法技術に胸が躍るのは当然でしょう!それに、鈴音氏だって昨日、この列車を見て『なんじゃこりゃあ!』って叫んでたじゃないですか!」


「む、むむむ!それはその…ワシはただ、あまりの完成度に驚きの声を上げただけじゃ!そうじゃ!芸術を見た時の感嘆の声というやつじゃ!」


鈴音が必死に言い訳をする。猫耳がピコピコ動いているあたり、相当動揺しているようだ。そんな鈴音の様子に、エマニエルさんがくすくすと笑った。


「鈴音様は昔から変わらないですね。さて、巧魔くん、準備はいいですか?」


「はい、いつでもどうぞ。コン先生、最終チェックお願いします」


≪了解。システムオールグリーン。マスター、安全確認完了です≫


「よし。それじゃあ、発進!」


俺の合図と共に、機関車の先頭部分に乗り込んでいたミニゴーレムが、天井からぶら下がる紐を勢いよく引っ張った。


ゴオォォォォ!


大地を揺るがすような轟音と共に、真っ白な蒸気が勢いよく噴き出す。それは蒸気機関車を模しただけの演出だが、迫力は満点だ。車輪がゆっくりと回転を始め、魔導列車は滑るようにレールの上を進み出した。


「うわああああ!動いた!速い!速いです巧魔氏!」


千春さんは窓にへばりつき、過ぎ去っていく景色に歓声を上げている。馬車では味わえない、この圧倒的なスピードと快適さに、感動しているようだ。


「ふむ、なかなか良い乗り心地じゃな。揺れも少ない」


鈴音も感心したように頷いている。そう、この魔導列車はただ速いだけではない。風魔法を応用した「空気抵抗ゼロ」の機能と、精密に制御された車輪型ゴーレムの駆動により、ほとんど揺れを感じさせないのだ。まるで絨毯の上を滑るかのような乗り心地である。


「巧魔くん、この速度でどれくらいかかるんですか?」


「ええ、このままずっと走れば、燕の国の国境まで半日もかからないと思います。馬車なら三日はかかる道のりですが」


「は、半日?!う、嘘でしょう?!そんな馬鹿な!」


千春さんは目を丸くして驚愕の声を上げた。無理もない。この世界の常識を覆す移動速度なのだから。


「ふふふ。驚くのはまだ早いですよ、千春さん。この列車には、もっと驚くべき秘密が隠されていますからね」


俺はニヤリと笑った。燕の国への旅路は、始まったばかりだ。


旅の途中、魔導列車の客室で、俺は新たに生み出した二体のゴーレムに指示を出した。


「コン先生、あの二体には乙葉の捜索を最優先で。魔力量が尽きるまで、燕の国全域を隈なく探すようにプログラミングしてくれ」


≪了解。鷹型ゴーレムには広範囲索敵プログラムを、モグラ型ゴーレムには地下探査プログラムをそれぞれインストールしました。目標:乙葉の探索、優先順位:最上位。魔力枯渇まで無限ループで実行します≫


鷹型ゴーレムとモグラ型ゴーレムが、俺の魔力を吸収し、静かに活動を開始した。鷹型ゴーレムは窓から飛び立ち、モグラ型ゴーレムは床に吸い込まれるように姿を消した。燕の国全域を、空中と地下から同時に捜索する。これなら、乙葉を見つけ出す可能性は格段に上がるはずだ。


「メガスローライフとは程遠いけど……まあ、これも悪くないかな」


自嘲気味に笑いながらも、俺の胸には、新たな世界を「プログラミング」していくことへの、密かな高揚感が芽生えていた。

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