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70 二百年前の追憶八(右京 六慶視点)

 右京(うきょう) 六慶(ろっけい)は、次元脱兎の能力によって生き返ったことを確かめるように静かに深呼吸をした。


(……生き返ったか。何度発動してもこの能力には慣れないな)


 六慶は(うさぎ)の契約者であり、魔法とは違う特殊な能力を所持している――が、六慶はその能力を嫌っているため、あまり発動する機会は無かった。なぜなら(うさぎ)は逃げることに特化している能力が多く、六慶の(しょう)に合わないからだ。

 

 六慶が使う能力はただひとつ、次元脱兎のみ。

 次元脱兎は自分の死をきっかけに発動する常時発動能力(パッシブスキル)で、致命傷をうけた瞬間に発動、死の危険が無い地点まで時を遡ることができる能力だ。 

 


(まさか次元脱兎(じげんだっと)を使わされることになるとは。戦争が終わればもう発動することもあるまいと考えていたが…………驚いたな。まさかこんな小娘を相手に発動させられるとは) 



 少女が剣を下げたとき、なんらかの策がある事は分かっていた。が、所詮は小細工であり、歴然と広がる力の差を埋めることなどできようはずもないと判断したのだが――俺が少女の首を切り落としたと思ったそのとき、足元から信じられぬスピードで生え上がるナニカ()に胸を貫かれていた。


 六慶には、そのナニカに思い当たる技がある――錬成剣術「竹林(ちくりん)


(錬成剣術は初代国王一代のみが扱えた技で、継承者がいたという話は聞いたことが無かったが…………あるいは秘密裏に継承者を育てていたのかもしれない)


 六慶はあふれでる殺気を抑え、気を練り上げてゆく。

 

 丹田から二の腕へ。

 腕から指先へ。

 指先から剣の切っ先へ。


 そのとき、対峙している少女の構えに予想通り――いや、経験した通りの変化が訪れた。正眼の構えから徐々に切っ先を下げ、地の構えへ。それは俺を誘い込むための巧妙な一手だ――が、死を超えてすべてを見てきた俺には通用しない。

 

 剣が下がりきった所で俺の足は地をはね飛ばす。間合いは瞬時に詰められ、少女が射程内におさまると同時に何千何万と修練を重ねた上段切りを放つ。技の至らぬ者ならば反応することさえ叶わぬ動きだ――が、少女は俺の姿をしっかりと瞳に捉えている。

 

 本来は防御のため剣を上に構え直すべき少女の剣は、定跡に逆らい更に下へ落ちる。その切っ先が土に触れた刹那、俺の足元から長大な剣が超高速で延び上がる。

 

(いいタイミングだ。これは知らねば避けられまい――知らねばな)

 

伸び上がる剣が六慶の顔へ迫る。が、既に彼の重心は僅かに左へ傾いていた。六慶の(こめかみ)から血しぶきが舞う。


「ツっ?!」


 決死の一手を外された鈴音は、その瞳に驚愕の色を浮かばせた。

 

(なかなかの使い手だったが――恨むなら錬成の覇者と関わったその非運を恨め)

 

 顳を削られたくらいで俺の剣筋に乱れはない。俺の上段切りは、狙い違わず少女の首を撥ね飛ばした。

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