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65 二百年前の追憶三(鈴音視点)

「……別に良いが、傷をつけるなよ。値段が下がる」

「へへへ、分かりやした。おい、旦那の許可が出た。捕まえるぞ!」


 路地を塞ぐように三人が近づいてくるのだが、隙だらけ。こちらをまるで警戒していない足運びだ。


路地を塞ぐように三人が近づいてくるのだが、隙だらけ。こちらをまるで警戒していない足運びだ。


「いいのかお主ら? 丸腰じゃが。それじゃあ十秒も持たんぞ」

「何を言ってんだ嬢ちゃん。それ、捕まえた……」


 男の手がワシの手を捕まえようと伸びてくるが、あくびが出るほどに鈍い。

 身を沈めて避ける。

 地面に手をつき長剣を錬成。

 地を蹴り込み、滑るようにして男の脇へ入り込む。男は目ですら追えていないようだ。脇を切りつけると次の敵へ視線を移す。

 

「がっ?! 痛っ?!」

「ちっ! 刃物なんて一体どこから!」


 次の男が短剣を引き抜くが、まったく様になっていない。おそらくまともな練習すらしたことのない奴だろう。要するに雑魚だ。


「おい、傷をつけるなと言っているだろう」

「分かってますよ! 嬢ちゃん、怪我をしたくなかったら――うわっ」


 男がワシの方へよろける。男の足元へ盾を錬成、その傾きを利用してよろけさせたのだ。

 一閃。

 男が呻いて剣を落とす。

 痛さのあまり踞った男の肩を踏み台替わりにし、高い位置へ跳躍する。最後の男は呆けた顔でこちらをみており、まったく展開についていけていないようだ。少々高く飛びすぎたようなので、長剣に魔力を送り込み、刃渡りを倍の長さにする。

 最後の男の頭上で一回転。

 着地と同時に血しぶきが舞った。


「五秒ももたんかったな。……さて、今から病院で縫合すればまだ間に合うが。どうする? 包帯の旦那とやら」

「……ふ。おい、引き上げるぞ」


 あきらめたか。よかった。こやつが相手では少々手こずりそうじゃったからな。


 野党どもは覚えてろ、と過去に百万回以上使われたであろう捨て台詞を吐いて去っていった。


「あ、あんた地面から剣を出してなかったか? まるで錬成の覇者のような力……」

「錬成の覇者、か。奴には遠く及ばん。動いたら汗ばんで余計寒くなってきおったわ。茶でも飲むか?ゴミ娘」

「その呼び方止めろ!」

「おお、寒いはずじゃ。雪が降り始めおった」


 ワシは長剣を路地裏に放り投げた。


(明日にはこの長剣は雪に埋もれてしまうだろうか)


 何故か、それを寂しく思う。


 しんしんと、雪はつもりゆく中、ワシはゴミ娘と二人宿へ向かっていった。

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