62 鈴音の過去
「いやはや、巧魔君には驚かされます。鈴音様、良きパートナーを見つけられましたな」
「うむ。わしの目に狂いはなかった」
「そういえば、エマニエルさんって鈴音とは昔からの知り合い何ですか? 始めにお会いしたときそんな話を聞いた気がしますが」
「ええ。随分昔の話になりますが。あの時は本当に助かりました」
「何。たまたま見かけたから助けただけじゃ」
200年前って、元の世界で言えばちょんまげに刀を差している時代だ。
「その頃って、今の時代とは違ったりするのか?」
「うん? いや、変わらん。いつの時代も、人は相争い、泣き、つまらぬことで喜び、そして死んでいく」
「私が鈴音様にお会いしたときは、初代国王が崩御された頃でした。荒れておりましたが、未だこの大陸は東一国が支配しておりましたね」
「ふむ。そうだったかのう」
そう言った鈴音の横顔は、何かを懐かしむような、それでいて寂しそうな表情を浮かべていた。俺はつかみどころのない、妙な喪失感にかられた。
「珍しいね。鈴音がそんな表情をするなんて」
「ん? なんじゃ人の顔をじっと見て」
鈴音はそういうと、頬杖をついて窓の方を向いてしまう。俺は何だか鈴音に話しかけにくくなり、エマニエルさんに声をかける。
「その頃の鈴音って、どんな奴だったんです? やっぱり今と変わりませんか?」
「変わらないと言えば変わらないけど……鈴音様、私がお話しても構いませんか?」
「……いや、ワシが話そう。龍都まで時間もある。たまには年寄りの昔話に洒落こむのもおつなものじゃろう」
馬車に入り込んできた風が鈴音の切り揃った前髪をふわりと揺らす。
そういえば鈴音はこんなにきれいな顔をしていたんだなと、俺は今更ながらに思った。
次回から鈴音の過去編となります。
本編に関わってくる部分もありますが、お急ぎの方は73話までお進みください。
さて、ここまでいかがでしたでしょうか?
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あと娘。娘かわいい。
執筆中にふん登られてもエンターキー壊されて外付けキーボード買う羽目になっても全然怒る気しない。娘が元気でポイントがあればもう他に何もいらない。
……あと嫁ね。うん。忘れてない忘れてないカワイイヨーヨメ。