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48 舌鼓

 父さん、母さん、隆一郎爺さんが豚狩村に到着し、宴が開始された。

 俺の目の前にはこんがりと焼けた豚の丸焼き。その周りに数々の豚肉を使った料理が並んでいる。


「おお! うまそうじゃのう!」

「ささ、どうぞ冷めない内にお召し上がりください」


 皆、用意された食事にてをつけ始める。「うまい!」「おお、これはこれは」

 至るところで感嘆の声が上がっている。そんなにウマイのか。では、俺も頂くとしよう。


 俺は目の前で切り分けられた豚の丸焼きにかぶりつく。すると、肉汁が湯水の如く溢れ出し、口からボタボタと零れ落ちた。むむ! ウマい! ウマイぞこれは!!

 弾力のある肉は噛めば噛むほど旨味が溢れ出す。かといって脂っこいわけではない。まるで濃厚な肉のスープが噛むほどに溢れてくるようだ。元の世界で食べた豚とは全く違う。


「どうですか、巧魔様。お気に召されましたか?」

「ええ! こんなに美味しいお肉は初めて食べました! こんなに肉汁が溢れるなんて。何か特別なお肉なんですか?」

「これは光ポークと呼ばれる豚肉です。年に一匹取れれば運が良い方で、龍都では幻の肉と呼ばれ高値で取引されております」


 ま、幻の肉だって?! そんな貴重なお肉が丸焼きにされてるけど。これ全部でいくらになるんだろうか?

「そんな貴重なお肉を! すみません、そんな貴重なお肉とは知らずにパクパク食べてしまいまして」

「何をおっしゃいますか! これは我々の感謝の印です、むしろ開通のタイミングで光ポークが獲れた事に感謝をしたいところです。ほら、お連れ様のようにーー」


 村長の目線を追うと、一心不乱に肉にかぶりついている鈴音の姿があった。頬は紅をさしたようで、表情はふにゃふにゃと溶けきっている。案の定、耳と尻尾は出しっぱなしだ。あとでからかってやろう。


「ーーああして召し上がって頂くと、我々も狩ってきた甲斐があったというものです」

「そうですね。では、僕も遠慮しません。村長もこちらで一緒に食べましょう。早くしないと、僕が全部食べてしまいますよ」

「フフフ。では、お言葉に甘えて失礼致します」


 俺たちは豚狩村の方々共に、豚料理の数々を味わった。どの料理ひとつとっても一級品の味わいだった。鈴音は食べ疲れたのか空になった皿に囲まれ、仰向けに居眠りをしている。腹がボールのようで、進化前の豚助を彷彿(ほうふつ)とさせる。


村長に光ポークの狩り方を伺ったところ、豚の中でも魔力の高い個体は、オークと呼ばれる豚のモンスターへ変化するらしく、変化する豚は淡い青色に光るらしい。その瞬間を逃さず仕留めると、肉汁が溢れ出す光ポークとなるそうだ。


 問題は、光ポークになるタイミングである。光る時間は15分ほどしか無いらしく、偶然その瞬間に出くわさない限りは、狙って狩ることは出来ないそうだ。


 だが、俺のゴーレムを使えばその問題は解決しないだろうか? ゴーレムなら24時間体制でオーク平原を見張ることが可能だ。オーク平原は広大で、相当数のゴーレムを常時放っておく必要があるが、あの光ポークが食べられるのであれば、やる価値はある。上手くいけば、龍都への販売品として使えるかもしれない。


ーーもちろん、俺が食べる分を確保してからの話だが。この肉で豚丼とか作ったら最高だろうなあ。聞くところによると、東と燕の国の中間にドワーフが住む里があるらしく、そこでは稲の先に実った小さな果実を主食としているらしい。その情報だけでは解らないが、もしかしたらお米の事かもしれない。機会があれば、ぜひとも伺ってみたいものだ。


「よー、巧魔っち。楽しんでるぅー?」


 俺が食後の余韻に耽っていると、正義が声をかけてきた。

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