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43 主の幼馴染(鈴音視点)

「あるじー、何時まで寝てるんじゃー」

 主の寝室に入って声をかけるが、全く起きる気配が無い。

 ベットを覗き込むと、口をぽっかりと開けて熟睡していた。


 主は朝の仕入れ作業が終わると、そのままベットに直行、二度寝を開始してしまった。


 (昨日は逢魔時じゃったからな。魔力も相当消費したようじゃし、疲れたのかもしれん)


 逢魔の剣は、錬成の覇者……大和(やまと)の奴が国の犯罪者への罰として実験的に作り出した7色剣の内の1本だ。


 逢魔の剣は捕まった盗賊への罰として開発されたが、逢魔の剣の効果を受けた盗賊が皆、陰にやられて死んでしまい、これでは死刑と変わらん、ということでお蔵入りになった経緯がある。


(城の倉庫にしまっておいたはずなんじゃがな。一体どこから流出したんだか。龍都に行く機会があったら、正義(せいぎ)の奴にひとこと文句を言ってやろう)


 ワシが主の顔を眺めながら考え事をしていると、階段をドタバタと登ってくる音が聞こえてきた。


 この品の無い足音はまさか……


「たーくーまーくーん! 乙葉(おとは_)ちゃんが来たよ! あーそーぼ!」


 ……やはり乙葉か。


「あれ? 鈴音ちゃんだ。今日、猫ちゃんちがうね」

「声がデカいわ馬鹿もの。もっと静かに出来んのかお前は」


 東 |《乙葉《おとは|。主と同じ年にここ森谷村に生まれた、言わば主の幼馴染だ。

 くりくりとした目と、二つに縛った髪は、どちらも珍しい青色をしている。


 普通、生まれてきた時の魔力量は皆差異が無く、魔導士を志す者は血の滲むような研鑽(けんさん)を重ねていく事によってその魔力量を増やしていく。

 だが、数十年に一度、桁違いの魔力量を持って生まれてくる者が現れる事がある。そのような者は生まれつき髪や目が青い為、通称『青の魔導士』と呼ばれ、将来国の筆頭魔道師になることを約束されている。


 乙葉も将来の筆頭魔導士を約束された者の内の一人だ。


「主は今日は遊べん」 

「なんで? たくまくんは乙葉とごーれむで遊ぶんだよ」


 主は乙葉との人形遊びの為にちんまいゴーレムを作ってやっていた。

 異能の無駄使いだと諫めたが、主は『いいテストになってるから無駄じゃないよ』と言って聞かなかった。


「今日主はワシと村に設置してある灯台ゴーレムの見回りをする約束なんじゃ。だから今日は遊べん」

「えー? なんでー?」

「だから、『お仕事』じゃ、『お仕事』! だから今日は遊べないんじゃ」

「なんでー?」

「むーー! 何で分からんのじゃ!」


「おいおい、鈴音。子供相手にムキになるなよ……」


 主が眠い目を擦りながらベットから起き上がっていた。


「おお、起きたか主! 主からも言ってくれ、今日は主はワシとの約束があると言うのに、乙葉が遊ぶと言って聞かんのじゃ」


「たくまくん!」


 乙葉は巧魔に抱き着く。……子供は無邪気に抱き着けて良いのう。まあ、決して羨ましいとかそういう事では断じてないが。


「……ほれ、いつまで抱き着いてるんじゃ。それはワシの主じゃぞ」

「どうした、乙葉ちゃん? 一緒に遊ぶの?」

「うん! 今日はたくまくんのゴーレムとぬいぐるみで遊ぶの!」

「しょうがないなあ。じゃあお昼までだよ」

「な?! 主、それでは約束が……」

「まあ、しょうがないだろ。それに『マイクロ・ゴーレム」シリーズで試したい命令コードがあったから、ちょうどいい機会だ。あ、見回りは午後から頼むよ。かってにどっか行くなよ。――じゃあ、乙葉ちゃん行こうねー」

「うん! 乙葉ちゃん、たくまくん大好き!」


「あ、主……」

 主と乙葉は楽しそうに階段を下りていってしまった。


 決して羨ましいとかそういう事では……あまり無い。

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