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41 逢魔時

 森谷村から西へ30分ほど歩くと、広大な荒れ地が広がる場所にやってきた。

 所々に人影のようなものが見えるが、それらはすべて人ではなく、開墾用のゴーレム達だ。


 西の荒れ地は周囲が山に囲まているためか、殆ど魔物が出現しない。

 加えて陽当たりも良いので、昔から畑として活用しようとしてきたが、余りにも石が多くてずっと開墾が頓挫していた。


 そこで、去年から開墾用ゴーレムを50体配置し、24時間体制で石を取り除かせていた。


 既にかなりの土地が開拓されており、試しに今年は10月頃から小麦の栽培を始めてみる予定だ。


「……さて、ようやくお出ましだな」


 辺りにポツリポツリと、陽炎のように揺れる(かげ)が立ち並び始めた。


 それらは人のようであったり獣のようであったりと、思い思いの形をしている。


 額の痛みは30分ほど前から(おさ)まっており、辺りは夕焼けで紅に染まっていた。


 現実と非現実の境い目、逢魔(おうま)時。陰達は決まってその頃、白昼夢が現実に染み出してくるようにして現れ始める。


「本当にワシは手伝わなくて良いのか?」

「とりあえずは大丈夫。今日は広範囲に影響する魔法を試してみる予定だから、鈴音は少し離れた場所で待機していてくれ」


 俺は、先程の豚助との戦いでは試せなかった新しい改編魔法を試すつもりでいた。


 ーー逢魔の剣。

 かの錬成の覇者が残した負の遺産と呼ばれる代物(しろもの)だ。

 1週間から10日ぐらいに1度、夕方が近づいてくると頭痛がし始め、空が茜色(あかねいろ)に染まる頃、になると幾つもの陰が現れ、問答無用で襲いかかってくる。

 戮がどういうつもりで俺に逢魔の剣を刺したのかは分からないが、戮対策に作り出した魔法を試すには絶好の機会となっている。


「主、構えろ。来るぞ」


 小さな人形の陰が一体、朧気な姿を揺らしながら近づいてくる。


 辺りが夕焼けに染まっている為か、その(かたち)(はかな)く、気を抜けばたちまち風景に溶け込んでしまう。


 陰は朧気な姿で近いていたが、ふと、その色が濃くなった。


 (ーー来る!)


『私は魔法を行使する。

 デキム(10個の)・ファイアーボール』


 陰が朧気な腕を振り上げる。

 俺の足元の地面が盛り上がった。

 顔を覗かせたのは鋭利な刃物のような影。

 俺を刺し通すべく襲いかかってきた。

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