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38 豚助の奥の手

 これは驚いた。20メートルは浮かび上がっている。


 しかもなかなか落ちてこない。まるで風船だ。


「ハーッハッハ! 見たか巧魔! これが俺の『脱兎』の能力だ!」


 なるほど。逃げる事に特化した能力か。なかなか侮れない能力だが、次の攻撃はどうかな?


 赤武者に(ほど)こしたプログラム、『飛礫(つぶて)』が発動。足元に落ちていた石ころを拾い上げると、豚助の額にめがけて正確な一撃を繰り出した。


 すると、豚助は加速度をつけて地面へ急落下、的を失った飛礫は遥か後方へ。

 

(重力操作か? これは驚いたな。

 ――馬鹿だとは思っていたが、|まさかここまで馬鹿だとは《・》思わなかったぞ)


「キャーーー! 小夏死んじゃうぅぅ!!」


 小夏の悲鳴と共に、豚助が大きな音をたてて落下した。


 20メートルもの距離からの落下だ。飛礫に当たるよりもダメージはデカイだろう。

 落下の直前に能力でブレーキをかけたようだが、勢いを殺すには遅すぎたように見える。

 能力は強力だが、扱っている人間が馬鹿すぎるな。


「……大丈夫ですか?」

「ぐぐぐ。なんのこれしき。」

「その根性はたいしたものですが、廻りをよく見渡してみてください」

「オ、オ、オヤビン……。囲まれてるよ」

「何だと?」


 噴水の廻りは既にミドル・ゴーレム達に取り囲まれていた。

 近くにいたミニゴーレムから連絡を受けて集まってきたのだろう。優秀なゴーレム達だ。


 うーん、ちょっと期待不足だな。もっと色々赤武者の性能テストをしたかったんだけどなあ。


「『ゴーレム、全員待機』。さて、もう他に他に打つ手が無いのであれば、降参した方がいい。今日の見廻りは農業組だから、逆らえば命の保障が出来ませんよ」


「くくく、他に手がないと思ったか? 俺には奥の手がある!」

「大丈夫ですか? ゴーレムの攻撃を再開すれば、途端(とたん)に数十本の鎌が飛んでいきますよ」

「そんなもの、問題ではない。どうせお前は覚えてはいる事は出来ないだろうから教えてやる。俺は『次元(じげん)脱兎(だっと)』という特魔(とくま)を持っている! これを使えば時間を越えて逃げ出す事が出来るのだ!」


 なるほど、魔女邸であったのはそれか。こいつは|未来で事件を起こし今へ戻って来たんだ《・》。戻って来たと言うことは、今魔女邸に怪我人はいないと言うことだ。魔女邸の方が騒がしくないから大丈夫かとは思っていたが、これでひと安心だな。


(コン先生、豚助が言う特魔と言うのは俺にも使えるのか?)


≪解。使えます。干支(えと)の契約者は皆、1つだけ特魔を修得可能です。が、マスターは未だ特魔を修得しておりません≫


(そうか。どうすれば修得出来る?)


≪原理は改編魔法の修得と同じです。精神的に大きな影響を受けた際に修得します≫


なるほどね。戮との闘いもあるし、覚えられるのであれば覚えておきたいな。


「オ、オヤビン」

「ん? どうした小夏」

「次元脱兎はさっき宿で使ったよ」

「それがどうした」

「特魔は1日1回だよ」

「……そうだったな」


 豚助と小夏が青い顔をして廻りを見渡す。見渡したところで絶体絶命の状況が変わる訳では無いだろう。


「……今のお話を聞くと、もう打つ手は無いって事で宜しいですか?」

 

「……これだけはやるまいと思っていたが」


 ん? 何か打つ手があるんだろうか?


「小夏! 奥の手(あれ)をやるぞ!」

「あれですね! アイサーオヤビン!」


 豚助と小夏が飛び上がる。

 俺はゴーレムに指示を与えるべく身構えた。

 彼らは空中で膝を折り畳む。

 そのまま地面へ足から着地すると膝、頭、手を地面へ置いてゆきーー


「「申し訳ありませんでしたーー!!」」



 ……見事な奥の手(どげざ)が決まったのであった。

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