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35 春の陽気

「んー、おかしいなあ」


 俺は自室でひとり首をかしげていた。


「コン先生、もう一度警報(アラート)を開いて貰える?」


≪命令受領。アラートを表示します≫


 俺の目の前に半透明の光る文字が浮かび上がった。


 そこには『4時23分:うっかり魔女邸にて部外者の敵対行為を確認』と表示されている。

 だが、今は4時になったばかり。ここに書いてあるのは未来の時間だ()


「コン先生、ホントにプログラムのバグではないの?」


≪有り得ません。マスターのプログラムは完璧です≫


「いやいや、そんなことないから」


(しかし、バグでは無いのか。

 そうなると原因が全く分からないな。

 まさか本当に今から20分後に『敵対行為』が発生するんだろか?

 考えても仕方ない。とりあえず千春さんへの挨拶もかねて、様子を見に行くとしよう)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺は魔女邸に向かう途中で、森谷村の中心地に差し掛かった。


 今、森谷村の中心地には地下水を利用した大きな噴水が設置されている。


 一年ほど前に、魔女邸の建設を祝って造った物だ。ちょうどその水が吹き上がる場所には、仁王立ちをしたサムライ・ゴーレムの像が設置されている。普通のサムライ・ゴーレムよりも一回り大きい。

 当世具足(とうせいぐそく)の全身鎧は赤を基調とした造りで、額には金の三日月が飾られている。

 今にも動き出しそうな見事な造りなためか、村の子供達には非常に不人気な存在だが、森谷村の観光スポットの一つとなっている。

 

 噴水を通り過ぎようとしたちょうどそのとき、その時魔女邸の方から慌ただしい声が聞こえてきた。

 


「ここここここ」


 なんだ? ニワトリか?


「殺された!」「オヤビン殺された!」


 青い顔を顔をしたボールのような男と小さい子が慌てた様子でこちらに向かって走って来た。


(今、殺されたと言ったか? まさかアラームの予知が本当に起きてしまったんだろうか?)


「あの、魔女邸の方で何かありましたか?」

「ん? ボウズ、こっちに近寄ってはいかん! あそこに見える宿に人殺しゴーレムがいる!」


(どうやら本当に敵対行為があったようだ。そして犯人は既に……。村を守るためとは言え、人が死ぬというのは慣れるものではないな)


「それで、殺された人物はどこに?」

「俺だ!」


 ……黄色の蝶々が俺の前を横切り、何処からか現れたミニゴーレムがその後を追いかけて行った。


「…………あなた生きてますよね?」

「今はな!」「オヤビンは死んだけど生きてる!」



(…………はいはい、なるほどね。ちょっと頭がお花畑(バカ)な方でしたか。これはあまり関わり合いにならない方が良さそうだ)


「はっはっは、そうですかそうですか。……それじゃあ、僕はこれで」

「待て! 俺様の話を聞いていたのか? そっちは危ないと言っているだろ!」「危ないぞ!」


(えー、もう面倒なやつに捕まったなあ)

「僕なら大丈夫ですよ」

「そんなわけないだろ! そんなことよりもボウズ、俺様をこの村の諸悪の根源たる東商店へ案内するのだ!」「スルノダ!」


 俺はその言葉に魔女邸へ進みかけていた歩みを止めた。


 父さんの店を諸悪の根源呼ばわりか。


 ――いいだろう。話を聞いてやろうじゃないか。

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