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31 猿彦氏の忠誠(千春視点)

 訪れた故郷の北の端、ちょうど森との境に位置する場所には厳重な関所が組まれており、しかも門番にはサムライゴーレムが2体、猿彦氏を値踏みするように見下ろしている。


 ようやく村に入れた猿彦氏は、東商店を訪れ、運命的な出逢いを果たした。(いや、本人が運命的だと主張しているだけだが)


「そえは、もうちあけないことーいまちた(それは申し訳無いことをしました)」


 その時巧魔氏は2歳。


 その頃は未だ言葉も拙かった頃だ。


 始めは守谷商店の店主である晃一氏のものに案内されたのだが、その晃一氏に「おれは名ばかりの店主で、実際ここを経営してるのは俺の息子だ」と言われて紹介されたのが巧魔氏だった。


 猿彦氏はがっくりと肩を落とした。話を聞けば巧魔氏は転生者との事だったが、それにしたって2歳の幼児に文句を言うわけにもいかない。


 重い気持ちを引きずったまま実家へ向かおうとした猿彦氏に、巧魔氏は提案を持ちかけた。


 あろうことか巧魔氏は『前払い』として猿彦氏の借金をいったん肩代わりし、さらに鋼鉄製の装備品の在庫を猿彦氏に優先して割り当ててくれたのだ。


 通用の半値である商品が売れぬ道理はない。巧魔氏が肩代わりした借金も1か月後にはきれいさっぱり無くなっていた。


 既に死ぬことすら頭にちらついていた猿彦氏にとって、自分を救ってくれた巧魔氏に対する感謝は一様ではない。


 自分に何か手伝えることは無いかと巧魔氏に相談した所、「ああ、そえならばーー」とお使いをお願いする気軽さで依頼されたのが、金貨5万枚をかけた宿の建設である。


 猿彦氏は、簡単な造りで良ければ金貨5千で造れますがと提案したが、巧魔氏は「んー、まあうぐにたありあすから(まあ直ぐに貯まりますから)」と言って聞かない。それどころか、何時までに作りたいかを尋ねると「はんとし?」との無茶な要望が飛び出したのだ。

 

 猿彦氏はほとほと困ってしまった。経験したことのない大仕事である。

 だが、恩を(あだ)で返すわけにはいかない彼に断るという選択肢はない。


 彼は全力で仕事に(のぞ)むことを決意した。

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