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13 184日ぶり

 俺は鈴音に抱えられながら町と森の境にいる。

 そして少し離れた場所には菫、晃一、千春、さらにその奥には森谷村の村民たちが手製の槍やスキ、クワなど思い思いの武器を装備して見守っている。

 装備は村長である龍一郎じいさんが用意させたそうだ。


 俺は何が悲しくて鈴音に抱えられなきゃいかんのかと思うが、これからゴブリン討伐の要となるゴーレムを生成しなければいけないので仕方がない。というか、本当に悲しい。鈴音にさとられたくないから感情を押さえているが、この感情はーー


「くくく、隠そうとしてもワシには通用せん。母が恋しいか?」


 ばれとるがな。そう、この腹の奥から込み上げてくる感情は、一言で言うと『お母さんが恋しい!』だ。

 つい1時間程前迄菫に抱き抱えられていたのだが、もう充電が切れたようだ。何だが自分の感情が自分のものでないような気がしてちょっと怖い。


「いや、すまん冗談じゃ。そう恥じることはない。主は転生者とは言え、その魂はその赤子の体に引っ張られる。赤子が母を求めるのは当然の事だ。無理にその赤子としての感情に逆らわない事だ。今後の精神形成に影響するからの」


 そうなのか。そういう事であれは、この感情に問題はないな。さっさと終わらせて母さんにだっこしてもらおう。


「ふむ。もう気持ちの整理がついたか。切り替えが早いと言うかなんというか……」


 切り替えが早いのは前世からの職業病だろうな。ブログラムの世界にはイエスかノーしかないからな。まあ、その影響で女性のイエスでもノーでもない摩訶不思議なオトメゴコロという厄介な代物を理解できずに彼女が一度も出来なかったという黒歴史があるのだが。


 巧魔達は森と森谷村の境には一件の家の前に立っていた。木造一階建てで簡単な作りの家だ。ここは昔から『森の魔女』が住んでいたとのことだが、今住んでいるのは千春だ。どうやら千春は森の魔女の弟子で、森の魔女に命じられてこの森の監視や調査を行っていたそうだ。その家と森との間には木製の簡易な柵が張り巡らされていた。高さは2メートル程か。


「さて、見ての通り、村と森の境には簡易な木の柵はあるものの、ゴブリン200体の襲撃の前には紙同然じゃ」


うーん、確かに役に立ちそうにはないな。でもせっかく柵があるのであれば、遠距離攻撃が出来ないかな。

よし、先ずは魔道コンパイラ先生を呼ぼう。


(私は魔法を行使する)


≪――184日ぶりの起動です。マスター、ご命令を≫

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