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121話:巧魔の抵抗、第三の戦場

漆黒の巨神兵がそびえ立つ大樹の都。その足元、第三ルートの戦場では、俺は激しい頭痛に耐えながら、いのししの契約者の猛攻に立ち向かっていた。彼が放つ「亥爆進いばくしん」の衝撃波は、都の樹木をなぎ倒し、地面を深く抉る。このままでは、都が破壊されてしまう。


俺は、ミニゴーレムたちの力を借りて、なんとかうまの契約者を足止めしている。だが、亥の契約者の攻撃は、範囲が広すぎて回避が難しい。


「(コン先生!亥の契約者の次の攻撃は?奴の動きを止めるための新たな戦術を!)」


≪解析中。対象の魔力反応、高まりつつあります。間もなく、再び広範囲攻撃を放つと予測。マスターの魔力残量では、直接的な防御は困難。周囲の地形と、ミニゴーレムの集団行動による『予測阻害』を推奨します≫


予測阻害……。亥の契約者は、その強大な破壊力ゆえに、大雑把な攻撃を好むはずだ。その予測を狂わせる。


「よし、ミニゴーレム!僕の周囲を高速で動き回れ!奴の視界を攪乱するんだ!」


俺の指示に、数十体ものミニゴーレムたちが、ワラワラと高速で動き回り始めた。彼らは、俺の周囲を円を描くように駆け巡り、亥の契約者から見た俺の姿を、まるで無数の残像のように見せる。


「な、なんだ!?あのチビどもめ、鬱陶しい!」


亥の契約者が苛立ちの声を上げる。彼の視線は、ミニゴーレムたちの動きを追うのに必死だ。その隙に、俺は次の手を打つ。


「(コン先生、亥の契約者の足元を固めろ!奴の動きを制限する!)」


≪了解。土属性魔法による地形操作を開始します。目標:亥の契約者の足元固定。優先順位:最上位≫


俺は両手を地面に突き刺し、魔力を集中させる。亥の契約者の足元の大地が、まるでコンクリートのように硬質化していく。彼の巨体が、地中に縫い付けられたかのように、動きを止めた。


「ぐっ……な、なんだと!?体が動かない……!?」


男が驚愕の声を上げた。その顔には、焦りの表情が浮かんでいる。


「ふむ、なかなかやるではないか、主よ。猪突猛進するばかりの猪め、足元を固められては手も足も出まい」


鈴音が俺の肩の上で呟いた。彼女の言葉に、俺は安堵の息を漏らす。強烈な頭痛は続いているが、なんとか亥の契約者を足止めできた。


だが、この状況は長くは続かない。亥の契約者は、再びその巨体から魔力を噴き出し、俺が作り出した足元の拘束を打ち破ろうとしている。


「(コン先生!この拘束は一時的なものだ!奴が能力を発動する前に、何とか奴の力を完全に封じる手段を!)」


≪解析中。対象の魔力活性化、急速に進行。拘束の限界まで、残り10秒。最終手段として、マスターの魔力を限界まで集中させ、拘束を強化。ただし、脳細胞への負荷は最大値に達します≫


脳細胞への負荷が最大値……。このままでは、本当に「植物人間ライフ」になってしまうかもしれない。だが、ここで引くわけにはいかない。都が、燕の民が、そして乙葉が。俺が守らなければならないものがある。


その時、俺の視界の端に、新たな魔力反応が捉えられた。それは、燕の国の兵士たちのものとは異なる、しかし、この森の奥深くから感じられる、温かく、そして力強い魔力だ。


「(コン先生、この魔力反応は……まさか、燕の国の『森の意志』か!?)」


≪解析中。燕の国『第8支・未』の契約者『森の意志』の魔力パターンと一致。この場所へ、高速で接近中。援護、あるいは新たな局面への転換の可能性。マスター、最終決断を推奨します≫


森の意志が、この戦場に!?


その瞬間、亥の契約者が、俺の作り出した足元の拘束を、力ずくで打ち破った。


「くそっ、貴様のような小僧に、俺の動きが止められるとでも思ったか!」


男はそう叫ぶと、再び体から黒いオーラを噴き出し、都目掛けて突進しようとした。その巨体が、大地を揺るがす。


だが、彼の視界の先に、突如として、巨大な影が立ちはだかった。それは、全身を樹木や苔で覆われた、荘厳な羊の姿。第8支・未の鬼、**森羅しんら**だ。その瞳には、深い緑色の光が宿り、森全体を映し出しているかのようだった。


「グオォォォォォン!!」


森羅が、大地を揺るがす咆哮を上げた。その声は、森の木々だけでなく、燕の都全体に響き渡る。まるで、都を守る守護神が、ついにその姿を現したかのようだ。



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