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114話:燕の国の攻防、そして酉の目

漆黒の巨神兵が、燕の都を守るかのように静かにそびえ立つ。その圧倒的な存在感は、亥の契約者だけでなく、都に侵入しようとしていた呉国の兵士たちをも威圧しているようだった。彼らは巨神兵の姿を目にし、一瞬動きを止め、困惑と恐怖の表情を浮かべている。


「(コン先生、巨神兵の現在の状態は?周囲への影響は?)」


≪解析中。巨神兵、能力『全吸収結界ぜんきゅうしゅうけっかい』発動中。亥の契約者からの魔力攻撃を継続的に吸収し、周囲の魔素に還元しています。都への直接的な被害はゼロ。周囲の魔力濃度が一時的に上昇していますが、生態系への影響は軽微と予測されます≫


よし。巨神兵は期待通りの働きをしてくれている。これで亥の契約者からの都への攻撃は完全に防げる。まさに「最強の防御プログラム」だ。


俺は巨神兵の足元から、森の奥へと視線を向けた。千春さんがいる第一ルートと、蒼武者が向かった第二ルート。そちらの状況も気になるところだ。


その時、都の遥か上空から、再び鋭い鳴き声が響いた。先ほども聞こえた、第10支・とりの契約者のものだろう。


「(コン先生、酉の契約者の状況は?)」


≪第10支・酉の契約者の能力は、周囲の情報を網羅的に把握し、戦場の状況を分析しているように見えます。行動パターンから推測するに、遠距離からの魔力攻撃も可能と思われます≫


なるほど、「偵察機」の役割か。リアルタイムでの情報共有は、戦場においては非常に強力なアドバンテージとなる。まるで、上空から戦場全体を「デバッグツール」で監視されているかのようだ。このままでは、都の防衛システムや、俺たちの行動が筒抜けになってしまう。


その思考を読んだかのように、上空から何かが高速で飛来してきた。それは、風を切り裂くような鋭い音を立て、真っ直ぐに俺目掛けて飛んでくる。


「(コン先生!迎撃!)」


≪了解。緊急回避プログラム起動。マスター、プッシュ・ウィンドウ発動。後方へ5メートル、横へ3メートル移動を推奨≫


俺はコン先生の指示に従い、即座に「プッシュ・ウィンドウ」を発動し、身体を高速で移動させる。飛来してきた魔力弾は、俺がいた場所を正確に貫き、地面に小さなクレーターを形成した。


その一撃の威力は、決して侮れない。遠距離から、これほどの精度で攻撃してくるというのか。


「ふむ、まさか主が狙われるとはな。やはり、この燕の地にまで来たのが誤算だったか」


鈴音が俺の肩の上で呟いた。彼女も、上空からの攻撃に警戒しているようだ。


「(コン先生、酉の契約者の攻撃を無力化できる方法は?あいつを落とす、あるいは攻撃を妨害する手段は?)」


≪解析中。対象の能力は空中での絶対的な優位性を有しているため、物理的な攻撃は困難。魔力による遠距離干渉、または、酉の契約者が視認できないような隠密行動が必要です。ただし、隠密行動は酉の契約者の索敵能力に阻害される可能性が高いです≫


やはり、正面からの攻撃は難しいか。だが、このまま一方的に攻撃を受け続けるわけにはいかない。


俺は、上空にいる酉の契約者に向けて、片手を掲げた。


「(コン先生、遠距離攻撃型ゴーレムの生成。ただし、高速で移動する対象に命中させるには、高い追尾性能と速度が必要だ)」


≪了解。命令をコンパイル。遠距離攻撃型ゴーレム、生成を開始します。目標:酉の契約者。優先順位:制圧≫


俺の魔力が再び消費され、足元に小さな魔法陣が展開される。


その時鋭い痛みがこめかみを襲う。


ぐっ!!? 頭が――割れそうだ!


≪マスター?≫


(いや、気にするな)


そうだ、今はそんなことを気にしている時ではない。あいつが今にでも襲ってくる。

痛みに耐え、魔法陣の維持に集中。

そこから、掌サイズの小型ゴーレムが、数体生成された。彼らは、鳥のような形状をしており、その瞳には、狙いを定めるかのように鋭い光が宿っている。


「行け!ホーミングバード!やつらの目を潰せ!」


俺の指示と共に、小型ゴーレムたちは一斉に飛び立った。彼らは、上空の酉の契約者目掛けて、高速で飛び上がっていく。


小型ゴーレムたちは、酉の契約者目掛けて、精密な魔力弾を放つ。酉の契約者は、その魔力弾を巧みに回避するが、小型ゴーレムたちは、まるでプログラムされたかのように執拗に追尾していく。


上空での攻防が始まった。酉の契約者の遠距離攻撃と、俺の小型ゴーレムたちの追尾攻撃。これは、燕の都を守るための、情報戦と攻撃戦の複合的な「システムバトル」だ。

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