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113話:守護神、起動

眼前に迫る「亥爆進いばくしん」の衝撃波。その威力は、都の美しい景観を容易に破壊する。俺はプログラマとして、この「システムエラー」を許すわけにはいかない。


「(コン先生!都を破壊させずに、亥の契約者の攻撃を完全に無効化する防御プログラムを構築!優先順位は最高だ!)」


≪了解。解析開始。第12支・亥の契約者が契約する鬼である**蛮猪ばんちょ**の魔力パターンから観測される現象は、強力な魔力変換型衝撃波です。物理的防御は一時しのぎにしかなりません。魔力による相殺、または吸収が最も効果的と判断。マスターの持つスキルで最も効果的なのは、『英霊のレプリカント・ボックス』による防御特化型ゴーレムの生成。ただし、現在の魔力残量では、完全な相殺には不足。鈴音の魔力供給を推奨します≫


コン先生の分析は速い。やはり『英霊の箱』で、防御特化のゴーレムを生み出すしかないか。しかし、俺の魔力だけでは足りない。鈴音の力が必要だ。


「鈴音!力を貸してくれ!奴の攻撃を完全に防ぐ、防御特化のゴーレムを生成する!燕の都を守るんだ!」


俺が叫ぶと、俺の肩にいた鈴音は、即座に猫の姿から人の姿へと変身した。腰のあたりまで伸びた銀髪が、夕日に照らされて輝く。


「ふむ、ようやくワシの出番か。ワシの魔力、心ゆくまで使うがよい!ただし、後で肉じゃがをたくさん作ってくれればの話じゃがな!」


「肉じゃがは任せろ!それより、頼む!『亥爆進』を止めろ!」


俺は鈴音と手を繋ぎ、全魔力を集中させる。膨大な魔力が、俺たちの足元に展開された魔方陣へと吸い込まれていく。魔方陣の模様が、複雑に、そして高速で変化していく。


「(コン先生、防御特化型ゴーレムの生成。最高の防御力を。そして、都への被害は絶対に出すな!)」


≪了解。『英霊のレプリカント・ボックス』発動。防御特化型ゴーレム、生成を開始します。目標:都の完全防御。優先順位:最上位≫


大地が大きく揺れる。森の木々が唸りを上げ、地中から、漆黒の巨人がゆっくりと姿を現した。その巨体は、優に50メートルを超えるだろう。全身を覆うのは、漆黒の岩石と、鈍く光る金属の装甲。その瞳には、深く沈んだ蒼い光が宿っている。


「なんだ、あのバケモノは……!?」


亥の契約者が、驚愕に目を見開いた。彼が放った「亥爆進」の衝撃波は、漆黒の巨人に向かって一直線に突き進む。


ゴオォォォン!!


衝撃波が漆黒の巨人に直撃する。しかし、巨人はビクともしない。いや、それどころか、巨人の体表に刻まれた複雑な紋様が、吸い込むように衝撃波の魔力を吸収していくのが見えた。


「な、なんだと!?俺の『亥爆進』が、効かないだと!?」


亥の契約者が、信じられないといった表情で叫んだ。彼の攻撃は、まるで巨大な壁に跳ね返されたかのようだ。


「ふはははは!どうだ!このゴーレムは、そなたの攻撃を全て受け止める!燕の都に、指一本触れさせはせんぞ!」


鈴音が、得意げに胸を張った。その言葉に、漆黒の巨人も呼応するように、低い唸り声を上げた。その声は、森の奥から響く『森の意志』の咆哮と、どこか似通っているように感じられた。


「(コン先生、このゴーレムは……?)」


≪解析完了。生成されたゴーレムの名称は、『巨神兵きょしんへい』。能力:『全吸収結界ぜんきゅうしゅうけっかい』。あらゆる魔力攻撃、および物理攻撃を吸収し、自身の装甲に変換。また、吸収した魔力を、周囲の魔素に還元することで、環境への影響を最小限に抑えます。防御力:無限大。現時点のマスターの魔力供給量と鈴音の魔力供給により、無限の防御力を有します≫


巨神兵!そして、『全吸収結界』!まさか、ここまでのものが生み出せるとは。これなら、亥の契約者の攻撃どころか、どんな攻撃も通じないだろう。まるで、どんなバグも弾き返す「最終防御システム」だ。


「くそっ、こんなバケモノ、聞いてないぞ!」


亥の契約者が、焦りの表情を浮かべた。彼の攻撃は、巨神兵によって完全に無力化されている。これでは、都に侵入することなど、夢のまた夢だ。


俺は巨神兵の足元に立ち、亥の契約者を見上げた。この巨神兵が、燕の都を守る「守護神」となるだろう。そして、この「守護神」の起動は、呉国との戦争において、燕の国に大きな「アドバンテージ」をもたらすことになるはずだ。

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