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112話:森の防壁、怒りの咆哮

大樹の都の樹上を駆け抜けながら、俺はコン先生に指示を出す。


「(コン先生、呉国の侵入経路に自動迎撃システムを構築。都の被害を最小限に抑えつつ、敵の行動を制限しろ)」


≪了解。マスターの魔力を演算領域に展開。自動迎撃システム構築を開始します。目標:都への侵入者。優先順位:制圧。副次目標:都の物理的損害の最小化≫


俺の魔力が高速で消費され、都の至る所に半透明な魔法陣が展開されていく。そこから次々と生成されるのは、軽装で機動力に優れたミドル・ゴーレムたちだ。彼らは、俺が以前作成した「ミドル・ゴーレム(農具)」のプログラムを応用したもので、敵の侵入を感知すると、装備した農具を投擲して牽制し、動きを鈍らせる。


「ほう。主は戦いながらにして、新たな術を構築しておるのか。しかし、これでは一時凌ぎにしかならまい」


鈴音が俺の肩の上で呟いた。彼女の言う通り、これはあくまで時間稼ぎだ。呉国の契約者たちが本気を出せば、これらのゴーレムはあっという間に突破されてしまうだろう。


その時、都の遥か上空から、鋭い鳴き声が響いた。


「(コン先生、あれは?)」


≪解析中。第10支・とりの契約者である可能性を検知。能力名:不明。ただし、広範囲の偵察、および遠距離からの精密な魔力攻撃を行う可能性があります。注意してください≫


とりの契約者か!上空からの偵察と攻撃。これは厄介だ。まるで、上空から都の防衛システム全体を監視し、弱点を突こうとしているかのようだ。


森の奥からは、第12支・いのししの契約者らしき魔力反応が、都に近づいてくるのが感じられた。地面を揺るがすような重い足音と共に、木々がなぎ倒されていく音が聞こえる。


「(コン先生、亥の契約者が接近中。奴の能力について、他に何か情報は?)」


≪解析中。第12支・亥の契約者の魔力が膨れ上がっています。物理的な防御では完全に防ぎきれません。避ける、あるいは能力発動を阻害する手段を推奨します≫


地形破壊を伴う衝撃波……。都の建物に被害が出れば、復興に膨大な手間がかかる。それは俺の「メガスローライフ」の夢にとっても「致命的なバグ」だ。何としても食い止めなければならない。


「鈴音!僕が亥の契約者を足止めしている間に、『森の意志』の元へ急ぎます!鈴音は、周囲の援護をお願いします!」


「ふむ、了解じゃ。主も無茶をするでないぞ」


鈴音が俺の肩から軽やかに飛び降り、都の防衛に向かっていく。彼女なら、エルフの兵士たちと連携し、敵を攪乱してくれるだろう。


俺は、亥の契約者の魔力反応が最も強い場所へ向けて、樹上を高速で移動する。途中、森の木々が、自らの枝を伸ばして呉国の兵士たちの行く手を阻んでいるのが見えた。まるで、森全体が巨大な「防壁」となったかのようだ。


木々の間を縫うように進むと、視界が開けた先に、巨大な猪の姿があった。それは、通常の猪とは比べ物にならないほど巨大で、その体毛は鋼鉄のように硬質化している。そして、その背には、一人の男が立っていた。


男の顔は、猪のように厳つく、その瞳には好戦的な光が宿っている。彼が、第12支・亥の契約者、間違いないだろう。


「グオォォォォン!!」


猪は、大地を揺るがす咆哮を上げた。それに呼応するように、男の身体から、黒いオーラが噴き出す。それは、大地をえぐり、周囲の木々をなぎ倒していくほどの、強烈な衝撃波となって、俺に迫ってきた。


「ハハハ!これで終わりだ、燕のカスどもめ!亥爆進いばくしん!」


男の雄叫びと共に、衝撃波が俺を襲う。俺は咄嗟に「プッシュ・ウィンドウ」を発動し、衝撃波を避けようとする。しかし、その範囲は予想以上に広い。


ドゴォォォォン!!


衝撃波が通過した後、地面は大きく抉られ、周囲の木々は無残にもへし折られていた。その威力は、まさに「地形破壊」。このまま都に侵入を許せば、甚大な被害が出るのは間違いない。


「(コン先生、奴の能力を無力化する『システムパッチ』を!都を守るための、最強の『防御プログラム』を構築しろ!)」


俺は、プログラマとしての全知識と、残りの魔力の全てを集中させた。

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