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103話:樹上への跳躍

猿舞えんぶが指し示した枝は、見上げるほど遥か上空に伸びていた。普通の人間が到達できる高さではない。だが、俺には「サポート・ゴーレム」がある。


(コン先生、今回のベンチマークテスト、目標地点はあの枝。足場なしで最速到達を目指す。軌道計算と出力調整、頼む)


≪了解。最適経路を計算。マスターの全魔力解放を推奨します。成功率99.8%。なお、着地時の衝撃吸収を考慮し、脚部への魔力集中を最大化します≫


99.8%か。残りの0.2%が気になるところだが、プログラミングの世界で完璧なコードは存在しない。許容範囲内だ。


「よろしいですか、猿舞殿?」


「うむ。いつでも構わんぞ、少年」


俺は深く息を吸い込み、足に魔力を集中させる。「サポート・ゴーレム」が起動し、身体の関節部分に黒い金属がピキピキと音を立てて形成されていく。腰の両サイドに灯った青白い光が、魔力供給の準備が整ったことを示している。


「ほう……それはまた、奇妙な術を使うな」


猿舞が興味深そうに目を細めた。千春さんは、俺の魔法に興奮して身を乗り出している。


「いっけえええ!巧魔氏!」


千春さんの声援が響く中、俺は地面を強く蹴り上げた。


ズン!


まるでバネが弾けたかのような反動で、俺の体は垂直に跳ね上がった。1メートル、2メートル、あっという間に人々の頭上を超え、ぐんぐんと高度を上げていく。


「なっ!?」


猿舞が驚きに目を見開いた。その表情には、計算外の事態に直面したかのような動揺が浮かんでいる。


5メートル、10メートル、15メートル。俺の視界は瞬く間に大樹の都の広がりを捉え、風の庭園が足元に小さく見えてくる。まるで、巨大なプログラムのコードを上から眺めているような感覚だ。


(まだまだだ、コン先生!)


≪了解。脚部へ追加魔力注入。出力最大化≫


俺の体はさらに加速し、空を切り裂くように舞い上がった。20メートル、30メートル。周囲の枝が瞬く間に下を通り過ぎていく。風が頬を叩き、その勢いで体がブレそうになるが、「サポート・ゴーレム」が完璧に制御してくれている。


40メートル、50メートル。目的の枝が間近に迫る。


「……あれは、まさか**申模倣さるもほう**か?」


猿舞が呟いた。俺の動きを、彼自身の能力に重ね合わせているのだろうか。


そして、ついに──


ガシッ!


俺の右手が、目的の枝をがっちりと掴んだ。着地と同時に衝撃が走るが、脚部のゴーレムが完璧に吸収し、体への負担はほとんどない。


成功だ。


俺は枝の上に立つと、下を見下ろした。猿舞と千春さんが、呆然とこちらを見上げている。特に猿舞は、口をあんぐりと開け、泥だらけの顔がさらに呆けた表情になっている。


(ふふん、これで俺の能力の片鱗は伝わったはずだ。さあ、次はどう出る、猿舞殿?)


俺は、プログラマが完璧なコードを書き上げた時のように、静かに達成感を味わっていた。

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