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私と彼の大冒険  作者: 一弧
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なれそめ

 割と大きめのバスタブの中で肩まで沈み込むように入る、お尻の下に男性器の感触を感じるが、特に変化があるようには感じられない、なるべく客観的に見ても自分は美少女といえるたぐいだと自覚している、それの裸と接していてもこの男はまるで反応しない、身体を洗うようにお願いすれば綺麗に丁寧に洗ってくれるが、まるで興奮するそぶりはなく、牛馬を洗ったり壺を磨いたりするのと同じようの感性で洗っているようにしか感じられない。

 



 6年ほど前、大国の侵攻の前に呆気なく敗れ、国を捨てて逃れようとした時に混乱のどさくさに紛れた盗賊行為に走った武装した傭兵崩れのような一団に襲われた、従者や父は殺され、母もその後どうなるのかを察して懐剣で喉を突き、自分も死を覚悟した時に助けてくれたのがチェフと名乗るこの男だった。

 山道で襲われ、戦利品の一つとして彼らの根城に連れ帰られその後どこかの奴隷商人にでも売られるのだろうと覚悟していると、その根城を襲いその一団を壊滅させてしまったのだ、その光景は今でも覚えているが凄まじいの一言に尽きた、素手で剣をへし折り目にもとまらぬ動きで間合いを詰め一撃で戦闘不能にしていき、20名以上はいた団体を30分かかることなく殲滅してしまっていた。

 殲滅が済むと特に物色するでもなく、立ち去ろうとして唖然とするチェフをあらん限りの叫び声で引き留め拘束を解いてもらうと、なんでもするから連れて行ってくれと泣きついてついて行く事に成功したのだったが、そこから先は彼女の想像と全く違っていた、まだ生理もこず夜の相手ができるとは思っていなかったが、自分の置かれた境遇がこの男の気まぐれに全て掛かっていることは理解しており、出来る限りの事はなんでもするつもりであったが、粗末な山小屋に連れて行かれた後の生活は少し頭が足りないが忠実な従者を得たような生活だった。

 お腹がすいているのを察すると食事が提供され、粗末ではあるが寝台での就寝を指示され、「なんでもします」と言えば、何をやらせていいのか分からず本気で悩みだしてしまっていた。元々どのような人物なのかもまるで分らず聞いてみると、昔からここに住んでおり、山賊が割と近くに住み着いたせいで微妙に邪魔に感じたんで追い払うつもりで壊滅させたとの事であった。

 それにしても常識外れに強いその強さは一国の騎士団長や剣術指南役よりもはるかに強いのではないかと感じるほどであった、最も彼女もそういった役職に就く人物の強さがどれほどのものなのか理解していたわけではないが。

 不思議な生活が5年間にわたって続き、それは穏やかな生活であったが、変化には乏しい物であった、そしてどうしても生活に必要な物が最低限にはあり、そのままの暮らしをあと数十年なら可能かも知れないが、窮屈にも感じ始めていた。チェフは全く気にしていないようだったが、料理を作る際に塩を使わないため食事が本当に味気なく感じられた、甘味など皆無と言ってよく、我儘が言える立場ではないが少し恋しく感じられた。衣服に関してもそうだった、布の類いは備蓄があるようだったし、自分の分は逃亡する際に持ち出し、山賊壊滅の際に取り戻したため、それで何とかなっていたが成長しサイズが合わなくなってくると、新しい物が欲しくなってきていた、母親の残した衣類では少し大きく、しかも山の中での生活には不便な衣服しかないため、このままここで生活して行くのはどうしても不自由を感じてしまっていた。

 5年間の生活の中でチェフは一度も怒った事も怒鳴った事もなく、少し拗ねたような態度をとっただけでオロオロとする事さえあった、気質的にどうしても荒くれた傭兵や騎士だったようにも見えず何者か掴みづらい部分は多かったが、怒らないだろうとの憶測の下で、町へ行き生活の場にしてみないかという事を提案したところあっさりと許可が同意してくれた、本人曰く「気付いたらここに住んでいただけで、特にここに居なくてはいけない理由はないから」との事だった。

 山を降りるにしても、不安材料はいくつもあった、アンネローゼはこれまで碌に屋敷から出た事のない貴族令嬢であり、山賊に襲われて以降は山から出た事もなく、町や村での暮らしとはどういうものなのかがまったく分からなかった、チェフもそういった世の中の常識に詳しいタイプにはまったく見えなかった、そして生活の基盤として職を得なくてはならないが、どのような職に就ける自身もまるでなかった、ただ完全歩合制、保障なし、前歴問わず、そんな謳い文句の掃除屋スイーパーの話は知っていた、邪魔な魔獣、敵対的な亜人を倒しその倒した内容によって対価が支払われる完全実力主義の世界、チェフなら行けるのではないだろうか?はっきり言えば浅はかな思い付きではあったが、それ以外に細かな事は思い付かず、実行する事となった、山を降りてからの設定はアンネローゼの身分については詐称することなく、真実を話し、チェフはその従者とする事でよいかと許可を求めると、これもあっさりと許可して来た。

 本来ならここまで生きる面倒を見てやった人間に対してふざけるなと激怒されても仕方ないとの自覚はあったが、たぶんすんなり受け入れてくれるだろうと言う確証もあった、なんとなくだがそういう人なのだと分かってしまっていたのだ、求められたらこんな貧相な身体でよければいくらでも提供する覚悟などとうの昔にできているが、よるに裸で布団に忍び込んでも全く手を出してこず、我慢している気配すらなかった、何を考えているのか全く分からないが、少なくとも危害を加えるつもりがないのだろう事だけは理解できその点は安心していたし、仮に危害を加えるつもりだったとしても仕方ないという覚悟にも似た思いを持っていた、どうせ助けてくれなければ奴隷として売られたか成長を待って山賊たちの情婦にさせられたかの二択くらいしかなかったのだろうから。


 大きな町までの道中で立ち寄った村で食事や宿を所望する際に、旅用の衣服もや装備も整えたかったのだが、町に行かなければ商店などに商品はなく、どうしても大きな町に到着するまでは不自由な移動を余儀なくされた、若干目立つ二人連れだけに道中で襲われかけた事が3度もあったが、全員あっさりと返り討ちに遭い、そいつらの持ち物や有り金は路銀の足しとなった。

 やっとの思いで辿り着いた王都であったが、城門前での審査に思いの他時間がかかった、食い詰め者など治安の悪化を招くだけの存在なので、どうしても審査が厳しくなるのは仕方なかったし、二人は通行手形を持っているわけでもないため余計に時間を取られたが、かなりの金額を持っている事が幸いし、町での滞在費が早々底を突くことはないだろうとの判断からなんとか入場を許可された。城門を通過するだけでここまで厄介な事になるとはまるで知らなかったため、非常に疲労感を感じてしまった。

 それでも一刻も早く掃除屋スイーパーギルドに行き登録と今後について色々聞きたい事があった、誰に聞いていいのか分からず、こういう時に訳知り顔で近寄って来るやからは信用ならないという事は知っていたため、どうしても公共性の高い機関での助言が欲しいところであった。

 ギルド登録はスムーズに進み、色々な説明も受けられた、本来面倒な手続きが必要な城門も、専用の別口が用意されており、駆除で出かけて獲物ターゲットの死体を持って帰って来た際はその別口が用意されそんなに時間をかける事無く出入りが出来る事などもこの時初めて知る事が出来た、それ以外でも装備品や宿屋などで提携している所を聞くと、一応手頃な所を教えてもらえた、これは後で知った事だが中間マージンが発生するため、そこで紹介されるところは品質が悪いわけではないが、若干割高になる傾向があり、本当にいいところは自分の勘と経験で探すしかないという事を後日知る事となった。それでもその時点ではありえない粗悪品を割高に買わされる事や盗人宿のような所に間違って泊まってしまう事もなく、十分に役に立ったと言える。




「はい、終わったよ」


 綺麗に全身を泡だらけにした後で流し終えると、大きな布で丁寧に拭いてくれる、魅力がないのだろうか?もう少し大きくなり胸が膨らみ成熟してくれば対応は変わるのだろうか?そんな事を考えてしまったが下半身に目をやってもまったく反応している様子がない事から、やはりこの男の考えていることはイマイチ分からない、この後大き目のベットで二人で寝ても全く手を出したりはしない事は分り切っていた、だからこそチェフの方から積極的に動き女にしてくれる日を心待ちにしている部分もあったが、いつになるのか全く分からなかった。

 その夜は流石に、討伐で街を離れ野宿しながら迷宮ダンジョンを突破して魔神将アークデーモンを討ち取る大冒険を終えた疲れもあり、チェフの厚い胸板で鼓動を感じながら早々に深い眠りに着いた。

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