第四話
イケメンは滅びろ!!!
おっと、つい。
気づかれる前に笑顔を作っておかないと…。
第一王位継承者、つまり王子様。
そして、俺の曖昧な記憶によれば『あな日々』のゲームの攻略対象者。やつは、六歳でもやはりイケメンだった。
つまり俺の敵だな。性格とか設定とかほとんど知らないが、そう決めた。イケメンだからな。
まあ…主人公がコイツとのルートを進めると、俺、つまりアレイシアと婚約するんだろうな。その後でまた主人公とくっつくにしても。
なんでライバルキャラって性格が悪くて婚約破棄される流れがテンプレなんだろうな? 俺はライバルとは協力して敵を倒す展開とか好きなんだが。熱いじゃん?
…いや、深く考えるのはやめよう。
まあともあれ、俺も挨拶くらいはしないとな。レオンフィールド公爵家の娘として、会った事はあるわけだし…。
「おはようございます、アレックス様」
「おはよう。ええと…レオンフィールド公爵のアレイシアだったな。これからよろしく。…ところで」
と、ちらりとアンの方を向くアレックス王子様。
「ん、んん。そちらの方はどなたかな?」
…なんか、挙動不審だな?
アンはアレックス王子の周りにはいないタイプだろうし、気になるのはわかる気がするが…。
「アン・ホワイトです。…初めまして」
「あー…。初めまして。アレックス・イース・オルタ・エンデルクだ。イースと呼んで構わない」
んん? なんだコイツ…アンに色目使ってんのか?
なんかムカつくな。イケメンだからって女の子が全員自分のものとでも思ってんのか? だったらアンにおかしなちょっかい出さないよう、守ってやるか。
いくらアンが平凡な子とはいえ、権力者の気まぐれで傷つけられたら可哀想だしな。
「まあ。では私もイース様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「え? あーそうか、そうだな。構わない」
横から口を出した俺の方ではなく、目線が斜め下を向いてるぞ、王子様。やはり何か後ろめたい思いがあるんだな。
「ではイース様、挨拶したがっている方達がお待ちですわよ。皆様の方へどうぞ」
「あ…そうだな…」
さっさと切り上げさせると、なんだかガッカリした様子のイースだった。ざまぁないな、フフン。
「大丈夫ですからね、アン」
「え…? う、うん…??」
戸惑った様子のアンを横に俺は胸を張るのであった。
「おはよう、新入生の諸君。私はこれから皆の教師を務めさせてもらうロドリゲスだ。知っているとは思うが、この後の入学式と、それに伴う〈新緑の儀〉について説明させてもらう」
担任は自己紹介と共に説明を始めた。
父様達にもあらかじめ聞いていたが、この後で〈新緑の儀〉というものが始まる。
これは六歳の春、全ての子供がどこかしらで受ける儀式で、これによって人は[ステータス]を開ける様になる。それによって人は自らの力を数値として見ることができ、神の祝福によって成長の力が増していくんだとさ。六歳からなのは、神の力を受け入れる器として、それくらいの時間が必要だかららしい。
ゲームで言うとここからチュートリアルが始まって、初期ステータスが決定されるってところかね?
周りの皆も期待と不安の様子が見えているが、俺もワクワクして、たまらない。この世界で生きていくって決めてから、この日の事はずっと待っていたんだ。
どうか高い値でありますように!!