第一話
俺はアレイシア・リル・レオンフィールド。
簡単に俺の経歴を説明すると、地球で16年生きたあとでトラックにひかれてゲームの世界に転生、その時に悪役令嬢にさせられ勇者にさせられダンジョンマスターにさせられた、ってところだ。
声を大にして言いたい。
設定盛りすぎなんだよクソ神様が!!!
「リルちゃん? 入るわよ~」
さて、俺の事を話すと長くなるのでそれは置いておいて。
ドアから入って来たのは俺の母上。セフィーリア・サーシャ・レオンフィールド。28の若くて綺麗な自慢の母上だ。いつもおっとりとした女性で、周囲の人間に癒しを振り撒いている。俺が男のままで、血がつながってなければ、是非とも結婚したい。
「おはようございます、お母様。今日もお綺麗です、リルと結婚して下さい」
「ありがとうリルちゃん、でも私には愛する夫がいるの~」
残念ながら今日も断られてしまった。
やはりまずは愛する夫とやらを亡き者にしなければ駄目か…。
「サーシャ、リルは起きたかい。朝食にするよ。さあ支度して」
次に俺の部屋に入って来たのは母上の愛する夫、俺の父親。
アイン・ガルド・レオンフィールド。
この国の公爵にして高名な冒険者。「レオンフィールドがドラゴンと戦った事がないのは、ドラゴンがレオンフィールドを恐れるからだ」などと噂される程に強い魔法剣士なのだ。
さらに言うとすげぇイケメンで、結婚までに貰った恋文は一万を数えると聞いた。
強くて権力もあって見た目もいい。どこの主人公かと妬ましくなる。
サーシャ母様と結婚するための壁は、高かった。
「おはようございます、お父様。今日は病気で弱っていたりはしませんか? でしたら息の根を止めて差し上げますが…」
「ははは、見ての通りの健康な体さ。心配いらないよ」
爽やかに笑うお父様。ケッ。
「今日は学園の入学式ね~。頑張ってね、リルちゃん」
転生してから六年。今日は俺の入学式だ。メイドに任せずわざわざ起こしに来てくれたのは、そのせいだろう。
「はい、お母様。レオンフィールドの名に恥じぬよう、しっかり学んで参ります。そして強さも手に入れ、私の敵は滅ぼしますわ」
「うんうん、その意気だ」
「まあ~」
さて、俺が転生したこのゲームの世界について少し語りたい。
この世界は『あなたと結ばれるための日々を過ごして参りました』、ネットでは『あな日々』と呼ばれるゲームの世界らしい。
らしい、というのは、実は俺はこのゲームはあまり知らないので、自信がもてないのだ。
俺は女性向けゲームは詳しくないのだが、ネットでネタにされる事が多いため、辛うじてわかったという次第だ。
元のゲームはなんと三部作で、育成ゲームの『学園編』、RPGの『世界編』。…それとあと一作あるらしい。育成編で自分を育て、世界編で目当てキャラと世界を救う旅に出て、あとなんかする流れだったと思う。
登場人物は主人公、ライバルキャラ、あと攻略キャラが五人位。
主人公と秘密の幼馴染みにして同級生の王子様、おネエ系の先輩の、イタズラ好きの後輩…あと忘れた。
ちなみにガルド父様は世界編で登場する有名キャラらしい。なんでも育成編でサボって低ステータスだった場合、ボス戦で急に現れてボスを軽々ヤって行くとか何とか…。
そりゃあネタにもなろうというものである。クソゲーだろ、それ。
まあそのお父様のおかげさまで、この世界がゲームとわかった訳だけどな…。
そんな世界に転生した理由はまた次の機会にするとして、さて入学式に、いっちょ行きますか!!