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有機☆化合物!〜アル☆ケンの付加反応編〜

作者: 石田杞憂

「ボクはエチレン。アルケンの一種だよ。ボクには兄弟がいるんだ。アセチレン兄ちゃんと弟のエタン。でも最近、エタンの奴がずっと行方不明なんだ。

どこ行っちゃったのかなあ」

とぼとぼと歩く、学校の帰り道。弟思いのエチレンはどうにも晴れ晴れとしない気持ち。

「一緒に電子回そうって約束したのに」

小石を蹴りながら虚しい気持ちに浸るエチレン。

家に帰ると兄のアセチレンが受話器を持ってエチレンを呼んでいた。

「おい、エチ、電話。しらねえ奴から」

エチレンに電話を渡すとそのまま自分の部屋に行ってしまった。

エチレンは何だろう、と思い受話器に耳をつけた。

すると、受話器の奥から、か細い声が聞こえた。

「今日の二時、濃硫酸公園に来て欲しいの」

知らない女の子だった。エチレンは誰だろうと思いつつも、

「分かったよ」

と言って電話を切った。こういうことは実はよくあることだった。

何故ならエチレンは中性的な立体構造をしているため、周りからは好かれるタイプだったのだ。

内心またか、と思いつつ無下に断るわけにも行かず、支度を始めた。二時はもうすぐだった。


○  ○  ○


エチレンが濃硫酸公園に着くとベンチは人で埋まっていた。

「うわ、化合物がいっぱいだ」

中には、分子間脱水をしているエタノールのカップルもいた。

「……いれるよ…………」

「……あ……ん……いーよぉ……凄く……きもちいいよぉ…」


(エタノールに濃硫酸を加え130℃〜140℃(いーよぉ)に加熱すると分子間脱水が起こり、ジエチルエーテルとなります。ただし、160℃〜170℃だと分子内脱水が起こりエチレンが出来ます。140℃(いーよぉ)は2人で交わったときの声です。


「うわあ、見ちゃいられないな、ジエチルエーテルが生まれちゃうじゃないか」

まったくこの町の規律はどうなってんだ、と思いつつ、相手が現れるのを待っていた。


数分過ぎた頃、背後からあの細い声が届いた。

「あ、エチレン君……」

エチレンが後ろを振り向くと、そこには学園一のお嬢様、「水」がいた。

「水さん、どうしたの?」

「そ、その……」

もごもごと口を開け閉めし、やがて決心したように言った。

「わ、私と付加して欲しいの」

「ふ、付加だってっ!!!」

あまりにも衝突で破廉恥な発言に腰を抜かすエチレン。

「その、私を貴方で満たして」

エチレンは端と思い至った。そのために、この公園を……。

この公園は昼間からそういう行為に明け暮れる者が多い公園なのだ。

「きみはいいのかい?エタノールが出来ちゃうんだよ」

そして、それは学園にいられない事を意味していた。

「それでも……エチレン君が好きだから……」

顔を赤くして水は答えた。

ややあって、ついにエチレンは折れた。

「分かったよ、ボクの上に乗って」

日影のベンチに腰を下ろしたエチレンはそう言ってズボンを脱いだ。

水は恥ながらもそれに従い、ゆっくりとエチレンと一つになった。





こうしてエタノールは生まれた。エチレンと水が一つになった証だった。


〈アル☆ケンの付加反応編〉 終わり


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