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かしましい夜

 ここはチェスナットマナー大学の学生寮の女子エリア。高岡真由子のひとり部屋にリアとマキが泊まりにきている。



「今日はたいへんだったね高橋さん」

「すいません高岡先輩、私のせいでこんな事になっちゃって……」

「お二人ともなんだか他人行儀ですね。『マキちゃん』、『真由子さん』でよろしいではありませんか」

「……マキちゃんって呼んでもいい?」

「もちろんです、ま、真由子さん」



「さあ、真由子さん。先ほどおっしゃっていたように『ジョージさん』のことを教えてくださいますよね?」

「ジョージさんってどこの国のひとなんですか!?やっぱりアメリカ人?」

「ハハハ、ジョージは日本人よ。譲るに児童の児で譲児」

「えー、なんか期待はずれだなー」

「ちょとマキちゃん!失礼ですよ。すいません真由子さん」

「いいのよ。本人もその名前で日本人を驚かすのが好きなようだし。あ、あなたたちも後輩になるんだから、もしかしたらジョージが外人のフリして話しかけてくるかもね。その時は適当にあしらっていいから」



「それでジョージさんと真由子さんって、どういう関係なんですか?」

「う〜ん……ジョージは私の同期でね、私のトレーナーだったんだ」

「「真由子さんのトレーナー?」」



「ふたりはアメリカにいると太るって話聞いた事ある?」

「ああ、カロリーの高いものばっかり食べちゃってってやつですね。ひょっとして真由子さんも太っちゃったんですか?」

「実を言うと……私アメリカに来る前からかなり太ってたの。それがアメリカに来てなおさら……」

「真由子さんが?信じられない」

「ひょっとして……いつもお召しになってるスーツはその頃から着てらっしゃるものですか?」

「リアちゃんよく見てるね。なんか恥ずかしいな。そう、当時はあのスーツがぴったり……どころかパンパンで……」



「そんな真由子さんを今の体型に導いたのがジョージさんってことですか?」

「そうよ。ジョージは今大学でスポーツ医学を学んでいてね、将来的にはプロスポーツ選手のトレーナーになるためにいろいろやってるの」

「は〜、すごい人なんですね」

「そんな人だから当時からトレーナーになるための知識はいろいろと持っててね、私に対して『生活習慣病になるぞ』だとか『アメリカでデブは活躍できない』とかさんざんな言いようでさ」

「なんてデリカシーの無さでしょう!」

「どうしてそんなのと付き合おうと思ったんですか!?」



「うーん……決め手はやっぱりスカンク騒動かな」

「じゃあ、やっぱり真由子さんを泊めてくれたのって!」

「そう、ジョージだったの。『ぜったい、絶対に手は出さないから安心してくれ』とか言っちゃってさ」

「なんだかそれも失礼なような」

「そうだよね!ホントに失礼なのアイツ!……でも、恥ずかしそうにそんなセリフを言うジョージがとってもかわいくってさ……」

「「へぇ〜」」ニヤニヤ



「はい、私の話はこれでおしまい!」

「え〜、もっとジョージさんとの恋バナ聞かせてくださいよ〜」

「そういうマキちゃんはどうなの?誰かいい人いないの?」

「私も知りたいです!マキちゃん、どうなんですか?」

「別に好きな男なんていません!」



「あれ?そうなの?マキちゃんは桜井くん辺りを狙ってると思ったんだけど……」

「たしかに一時期憧れたこともありましたが、初めてみんなでボストンコモンに行ったときに、ニコラとの仲を思い知らされましたよ!」

「あ、あの時はごめんね……」

「ほんとですよ。あの時みんながスポーツをしなかったのは、本当は失恋のショックでそれどころじゃなかったからなんですよ」

「ええ!?そうだったんですか!?」

「……なんでリアさんが驚いてるんですか……」



「じゃあそれ以降は気になる人はいないってこと?」

「いないってわけじゃないんですが……」

「えー!?全然気付きませんでした!誰ですか?ひょっとして外国人留学生の誰かですか?」

「どうしてそうなるんですか!?」

「だってマキちゃん、日本人男性を見る目がなんだか冷やかですから……」

「それは加納くん限定です!」



「そうだ、リアちゃんは今どうなの?その加納くんと。まだ一緒に走ってる?」

「え、走る?何ですかそれ?聞いてませんよ!」

「ランニングマシンだとシュウがすぐにへばっちゃうんで、他の筋トレしたり、バドミントンをやったりしてました」

「なんだか2年前の私たちみたいね」

「いつの話をしてるんですか!?」



「アーグルトンに行くって決めてからは、その時間を使ってシュウとひたすらトーフルの対策をしてきました」

(あいつ……私が授業に出ている間にぬけぬけと……)

「そういえば不思議に思ってたんだけど、なんでリアちゃんはトーフルのクラスを取らなかったの?」

「その……私が申し込んだときには既に定員オーバーとかで……」

「あれ?たしかトーフルの上級クラスはまだ余裕があったはずだけど……」

「わ、私の事はいいですからもっと真由子さんの事教えてくださいませんか!」

「リアちゃん、あなたってばずいぶんと大胆な手を——」

「ワーーーーアーーーー何も聞こえません!!」





「あ〜今頃あの3人、女同士で何やってるんだろう?気になるな〜!!」

「うるさいぞ日本人ジャパニーズ!さっさと寝やがれ」

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