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加納くんの自決シーン楽しみにしてますね

その後ディナーはお開きとなりケイとニコラは自分たちの寮へ帰っていった。僕も撤収しようと思ったらリア様がマキちゃんにこんな事を言い出した。


「マキちゃん、私は加納くんと話すことがあるので先に部屋に戻っていてもらえますか?」

「え?わ、わかりました……」


渋々と言った様子だが一人引きあげていくマキちゃん。リア様が僕と話したい事っていったいなんだろう?


「今日は誘っていただきありがとうございました」

「こちらこそ、ボストンの素敵な観光スポットを教えてくれてありがとう」

「あら、ボストンにはまだまだ素敵な場所がたくさんあるんですよ」

「そうなの?僕も時間のあるうちにいろいろ行っておきたいなぁ」


きっと大学の授業が始まったらどこかへ遊びにいく事なんてできなくなる。今の外国人向けの授業でさえ集中してないともたないのに、アメリカ人向けのスピードについていこうなどと思ったら、ネイティブの3倍は努力しないとダメだろう。


「よかったら私が案内して差し上げましょうか?」

「ホントに?願ってもない申し入れだけど……ホントにいいの?


こ、これはひょっとして1対1の、いわゆる、デ、デートって奴なんじゃなかろうか。


「……奨学金もゲットできたことだし、大学始まるまでなら遊んでも誰も文句言わないよね」

「あ、私から誘っておいてなんですけど、そんなことではダメですよ。最後の演劇発表で手を抜かれたりしたら困ります」


おお、リア様だいぶ演劇に熱が入ってらっしゃるな。


「もちろん演劇に関して僕が手を抜く事はないよ。そんなこと俳優の卵としてできるわけがない」

「俳優の卵?どういうことです?」


あちゃあ、リア様には言ってなかったっけ。どうしよう、この雰囲気なら僕の夢を言っても笑われたりしないかな?


「僕の将来の夢は……ハリウッドで活躍することなんだ」


うわー。言っちゃった。恥ずかしい。何でこんなに恥ずかしいんだろう。今まで周りの人間にバカにされてきたからかな。これなら舞台に出るときの方がよっぽど気が楽だ。


「それは素晴らしい夢をお持ちですね!私応援しますよ!」


え、まじで?笑わないの?こんなにだいそれた夢なのに?


「あ、ありがとうリアさん」


ホントにありがとう。なんだかその一言だけで少しだけ夢へと近づけた気がするよ。


「では夢の手前、今度のオーディションは確実に勝ち上がらなくてはいけませんね!」


オーディション?ああ、ロミオとジュリエットの事か?


「僕なら大丈夫。一番競争率低そうなロレンス修道士をやろうと思ってるから」

「何を言ってるんですか?俳優を目指してる方が主役を狙わないでどうしますか!」

「脇役には脇役なりの演じる価値というものが……」

「そんなものはオーディションに落ちたら考えればいいんです。私が加納くんの夢を応援すると言ったんです。ですからちゃんとロミオ役に立候補するんですよ!」


そんなむちゃくちゃな!あ、でも待てよ。


「もしリアさんがジュリエットに立候補するって言うなら考えてもいいよ」


ふふふ、これならリア様もだいそれた事は言えなくなるに違いない。


「あら、私なら最初からジュリエットに立候補するつもりでしたよ。それでは加納くんもロミオ役しっかりつかみ取ってくださいね」

「……オッケー。わかったよ」


僕はそれ以上何も言えなくなってしまった。どうしてこんなことになったんだろう?


ん、待てよ?リア様はジュリエットをやる気満々だったんだよな。それで僕にロミオをやって欲しいだなんて……それって遠回しに僕の事好きだって言ってるんじゃ……


「加納くんの自決シーン楽しみにしてますね」


何だよその楽しみ方!あなたの笑顔が怖い!



「ずいぶん話がそれてしまったような……。ええっと、何の話でしたっけ?」

「僕の夢の話?」

「そうではなくて……あ、ボストン観光の話でした」


そういえばそんな話をしてたよね。リア様どこに連れていってくれるんだろう?


「その話なんですけど……大学に入ってからというわけには行きませんか?」

「なんで?あ、リアさんたちはこの期間中に友達とナイアガラの滝に行くんだっけ。そりゃそっちを優先させた方がいいよ」


いつでも行ける旅行より、友達がそろってる今を大切にした方がいいに決まってる。僕は大学で忙しくなるかもしれないけど、人の5倍くらい頑張れば週末に遊ぶ余裕くらいなんとか作れるだろう。……たぶん。


「確かにそんな予定もありましたが、そうではなくてですね……その……」


なんだろう、リア様にしては歯切れが悪いな。


視線の定まらないリア様だったが大きく深呼吸をすると、僕の眼をひたと見据え、意を決したよう告げる。


「私、志望校をアーグルトンに変えようかと思ってますの」

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