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リア様、スーパーでお買い物

 プルデンシャルセンターをひとまわりするとリア様の買物袋が両手に収まらなくなってきた。全く、ケイたちは何をやってるんだ。早く合流を……ん?


「ねえ、リアさん」

「なんですか加納くん?」

「あの柱の影に今何かいなかった?」

「何か、と言いますと?……ひょっとして加納くんにはオカルト方面のご趣味が?」


 そうじゃない。たしかに今あの柱の影に……


「ねえ、リアさん。さっきニコラと携帯のアドレス交換してたよね。ちょっと心配だから電話してくれない?」

「わかりました!」


 初電話をする用事ができてリア様うれしそう。でも電話の相手は……


「あ、電話が……」

「早く切って……」

「2人ともそんな所で何やってんの?」


 ニコラとケイが柱の陰からばつの悪そうな顔を向けてきた。リア様に聞こえないように小さな声で2人に問いつめる。


「なんでこんなことしてるんだよ?」

「おまえたちも水族館で俺たちを2人きりにしてくれただろ?だから……」

「2人がより親密になればいいなと思って……」


 なるほど。自分たちがしてもらって嬉しかった事を僕たちに返してくれていたのか。まぁ、あの時は単に見失っていたってのが正しい所なんだけどね。


「だからってこっそりのぞくのはどうかと思うぞ」

「へへへ、ごめん」

「何を話してらっしゃるんですか?」


 こそこそ話している僕たちをいぶかしんでリア様が話しかけてきた。


「今晩のメニューの打ち合わせだよ。さあ、スーパーに買い出しにいこう!」



 リア様ごひいきのスーパーはプルデンシャルセンターから歩いてすぐの所にあった。こんな観光地のど真ん中でやっていけるのかと心配になったが入ってみると案外多くの客がいる。


 観光地と言えどやっぱり暮らしてる人もいるんだな。さぞかし家賃が高かろうに、などと余計な心配をしてみる。


「リアさんはこういうとこに住んでみたいと思う?」

「そうですね。街並もオシャレですし、とても暮らしやすそうですね」

「いずれ独り立ちするならやっぱりアメリカ?」

「日本だとお父様の影響が強いですからね。必然的に海外になってしまいますが、幼い頃に住んでいた英国に住むのもいいなと思っています」


 なるほど。リア様と一緒にいようと思ったら海外暮らしは必然か……。って、何結婚する事を前提に考えてるんだ僕は。ぺっくんにも言ったけど僕なんかでは格が合わなすぎるよな……。


「見てください加納くん!マンゴーが1個99セント!これって安すぎじゃありません!?」


 きっとブランド品を買いあさった反動で金銭感覚が麻痺してるんだろうなぁ。それにしても1個99セントはなかなか魅力的な数字だ。


「たしかに安いね。日本じゃこの値段は無理だろうな。たぶん軽く3倍はするんじゃない?」

「それはお買い得ですね!是非買っていきましょう!」


 そう言って買物かごにポイポイとマンゴーを入れていくリア様。これ以上はもう僕も持てませんよ?


「私マンゴーって大好きなんです。今晩が楽しみですね!」


 たぶんリア様が好きなマンゴーは1個が途方もない価格の完熟マンゴーの事じゃないかな?


「たぶんこのマンゴーはまだ熟してないから追熟させないとおいしくないよ」

「そうですか、それは残念……」


 寂しそうにマンゴーを棚へと戻すリア様。そんな顔を見るとついかばってあげたくなっちゃうけど、冷蔵庫もない寮ではこれが妥当な判断だったんだ、と自分を励ます。


「ほら、このあとはニコラの手作り料理が食べられるんだし、そう落ち込まないで……」

「そうでしたね。お二人の手料理が食べられるんでしたね!」

「うっ、そんなたいした物は作れないよ?」


 ひょっとしてかなりハードル上がっちゃってる?まずいなぁ……


「フフフ。正直なところ料理はどんなものでもいいんです。友達が私のために料理を作ってくれる、それだけでなんだかとても幸せな気分になるんです」


 ふーん、そんなもんかねぇ。僕は逆に好きな人に料理を作ってる時幸せを感じるけどね。ってこの発言はなんだか主夫みたいだな。でもリア様との相性は悪くないんじゃない?



 食材を買い終える頃には陽がだいぶ傾いていた。店を出るとすでにケイがタクシーを呼んでいてドア・トゥ・ドアで寮まで帰れた。全くそつのない紳士だ。


 一旦それぞれの部屋へと荷物を置き、その後ニコラと僕は談話室に集合して料理をする運びとなった。まあその前に荷物持ちの役を完遂しなければならないんだけど。


「リアさんの部屋に荷物を持っていくのはいいけどさ、また嫌な顔されないかな?」

「嫌な顔?」

「ほら、高橋さんに……」

「別に大丈夫だと思いますよ。お二人まだ仲が悪いままなんですか?」


 うん、仲良くなろうにもまったくきっかけがないからね。


「それならどうです?今日の晩ご飯に彼女も誘ってみては」

「え!?それはどうだろう……」

「やはり……ダメですか?」


 ああ、そんな悲しそうな顔しないでよ。僕だって機会さえあれば仲良くしたいと思ってるんだから。


「友達ができる事は宝物を見つける事と同じなんだって」

「なんですそれ?」

「イタリアのことわざだってさ。ニコラが言ってた」


 この言葉があったから僕はリア様と仲良くなることができたんだ。だから——


「宝物が見つかるように努力してみるよ」

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