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スーパー紳士、スーパーに行く

「カレーライス?」

「ああ、ちびっ子人気ナンバーワンの料理だ!」

「ちびっ子言うなって」


 そんなこと言われても実年齢も知ってしまったし、ニコラは正真正銘の童女です。


「カレーの素はどうすんだよ?あれがないと作れないだろ?」


 カレーの素?ああ、カレーのルウのことだな。


「ご心配なく。ルウは僕がちゃんと持ってるから」

「何でそんなもん持ってるんだよ……」


 何かの時のためと母さんが持たせてくれたカレールウが今役立ちます!


「そもそもカレーならやっぱりご飯を買ってこなきゃいけないだろ?」

「それなら米を買ってくれば大丈夫だよ」

「米なんてどこに売ってるんだよ?」

「どこって、そこのスーパーに……あれ?ケイってそこのスーパー行ったことある?」

「……ないけど」

「よし、それじゃあさっそくスーパーに買物行くぞ!」




 僕たちはさっそくシャトルバスで近所のスーパーへ向かった。


「おお、ここがスーパーか!なかなかの大きさだな」


 どうしたケイ、そんなに目を輝かせて。ひょっとしておまえ……


「日本でスーパーに入った事ないとか?」

「バ、バカにするなよ!それくらい入った事あるよ」

「へぇ、何しに?」

「文化祭の買い出しにだ」


 真っ先に出てくるのがそれか……。っていうか、たぶんそれくらいしかスーパーに行く必要がなかったんだろうなぁ、お金持ちめ。


「あの時は押せなかったけど、このカート押してみたかったんだよね!」

「うん、米も買うしカート押してってー」


 まったく、スーパー紳士が子供みたいになっちゃって。さっそく子供みたいな彼女に影響を受けたのかな。それともケイの素がこんなのなんだろうか?


「おい、シュウ!店に入れないぞ!自動ドアじゃないのかこれ!?」

「自動ドアだけどそっちは出口だよ!アメリカのスーパーはたいがい防犯のために入り口と出口が別れてるから」

「まじかよ!なかなか考えてあるなぁ……」


 うん、僕も初めて来たときそう思ったよ。だけど他のお客さんの迷惑になるから観察してないで早く店内に入ってくれ!


 店内はケイの想像通りだったのか、なんだか少しがっかりしていた。


「あんまり日本のと変わらないんだな。もっとアメリカっぽいのかと思ってた」

「アメリカっぽい?」

「売ってる物がやたらでかいとかさ……」

「売り物じゃないけどこっち来てみなよ」

「ん?なんだこのコーナー!?」


 そこから見える陳列棚は全てに扉がついている。そしてBGMの裏に流れている巨大なモーター音。


「これって全部冷蔵庫?」

「間違ってるぞケイ。この両側にズラッと並んでいるのは全部冷凍庫だ!そして入っているのは全部冷凍食品だ!」


 僕の説明を聞いてケイの口があんぐりと開いている。僕も初めてこの冷凍庫群を見た時はあんな顔をしていたのだろうか。


「どんだけものぐさなんだよアメリカ人……」

「料理に時間を割くぐらいなら仕事をしたいって人のためにどんどん市場が拡大してったらしいよ。まあ見方を変えればケイみたいな料理できない人でも電子レンジさえあれば好きな人に料理をつくってやれるってことだね」

「なるほど、そう考えると冷凍食品も素晴らしい物かもしれないな……」


 冷凍食品コーナーを抜けると一面真空パックの肉にまみれた場所にやって来た。


「そしてここがベーコンコーナーだ!」

「ん?……なにがすごいの?」


 そうか、ケイには基準とするべき日本のスーパーがないからこの素晴らしさがわからないのか。


「ケイ、日本にはこんなに大きなベーコンだけを扱うコーナーってまずないんだよ」

「へ〜。日本だとベーコンを扱うスペースってどれぐらいの大きさなの?」

「大きさと言うか、日本にはベーコンコーナー自体がない。ベーコンは加工肉コーナーでソーセージなんかと一緒にちょろっと並べられてるだけなんだよ」

「……ふーん、すごいんだな」


 くそ、僕の感動がちっとも伝わってない!あ、そうだ。


「ニコラのパスタにベーコン入ってなかった?」

「ああ!入ってた!あれはうまかった!」

「それはこれだけの種類の中からニコラがケイのために選んだからなんだぞ」

「なるほどな!アメリカのベーコンコーナー恐るべし、だな」


 ケイにとっての身近な比較対象は日本のスーパーじゃなくて二コラの手料理なんだな。うらやましい限りだ。


 さて、お肉にニンジン、タマネギ、ジャガイモ……。あとは米だな。


「おい、シュウ。俺は米には少しうるさいぞ」

「なんだよいきなり」

「たしかにインドカレーには日本のもちっとした米よりぱさぱさの米がよくあう」


 ああ、僕も全く同意見だ。


「でもおまえの持ってきたカレーは日本の家庭用だろ?つまりは日本の米にあったとろみのあるカレーってことだ。違うか?」

「いや、そんなドヤ顔で推理披露されても……ひょっとしてルウで作るカレー食べた事なかった?」

「お手伝いさんはスパイスからこだわる人だったからな」

「そうか……。まあ確かにケイの推理した通り、ルウで作るカレーはどろっとしてて、日本の米によく会うよ」

「そのカレーにアメリカの米を合わすのはいかがなものだろうか?」


 料理をしない人間とは思えない指摘だな。それだけ食べる物にはこだわりがあると言う事だろうか。でもまあ御心配なく。


「ケイ、これをみてもまだそんな事が言えるかい?」

「こ、これは!?コシヒカリだと?ササニシキにヒトメボレ……ニシキ?これは聴いたことないブランドだな。全部日本から輸入してるのか?」

「そんなわけないだろ。それ全部、アメリカ産の日本米だよ」

「な、なんだってー!?」

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