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ハーレム疑惑

 僕がケイとニコラを取り合ってるって!?


「そんな根も葉もない噂、いったいどこから……」

「どこからって、ケイ自身が言ってたんだけど……」


 ええっ!?それどういう事だよ?


「ケイが言うにはね、なんでもシュウスケが好きな人にふられてからニコラに慰められて、そこから仲良くなったんじゃないかって……」

「そんな事実一切ありませんから!」


 あれ?それってひょっとして僕がニコラにご飯作ってもらった日のことを言ってるのか?そう考えるとつじつまが合うんだけど、ニコラが秘密にしてと言ったから、あの日のことをケイは知らないはずだ。


「そうなの?タイミングからして、ひょっとしたら私がシュウスケをふったことになってるのかと思ったけど、気のせいだよね〜」


 それは気のせいじゃないんですが……


 そうか、今ケイは僕が裏切ってニコラと仲良くしてると思ってるんだ!それをふまえるとケイの「そういう事やめてくれ!」って発言も意味が変わってくるな。ケイから見たら、僕は奴の好きな人を奪い、あまつさえその子とデートさせてやると上から目線で語った最低な野郎ってことになる。まったく、どうしてこんなすれちがいが起きたんだ!


「先輩、僕ケイに会わなくちゃいけません」

「実はもう外にいるの。呼んでくるからちょっと待っててね」


 なんて手回しの良さなんだ真由子さん!ん?この抜かりのなさ……ひょっとしてこの食事会をプロデュースしたのはケイだったりする?


 真由子さんに連れられてケイがぶすっと席についた。


「ケイ、まず最初に言っておくと、僕はニコラと付き合っちゃいないよ?」

「え?マジで?でもニコラの手料理食べてただろ?」


 おお、何でコイツそんなこと知ってるんだ?


「俺はシュウとニコラが仲良く皿洗ってる所を見たんだからな!」


 ああ、そのシーンを見られてたのか。それにしてもめんどくさい勘違いをしたもんだ。

 さて、僕の真由子さんへの好意を知られずにケイに成り行きを説明するにはどうしたらいいか……


「あの日僕はニコラが誰かさんに手料理を作りたいからって味見を頼まれたんだ」

「誰かさん……?」

「おまえの事だよ、ケイ。日本人の……好きな人の舌に合うか知りたかったそうだよ」

「え、それってつまり……」


 ケイの顔がやかんのように上気する。純情だなぁ。


「僕はそれ以上の事は言わない。こういうことは本人の口から聴くのが一番だろうしね」

「……シュウ、すまなかった」

「ホントにね。お前にあんな風に言われて僕がどれだけ傷ついたかわかる?」

「ほんとにすまない……俺にできる事ならなんでもするから……」

「じゃあ、今度4人でボストン行ったらまた飯おごってくれる?」

「そんなことでいいのか?もちろん大丈夫だけど」

「よしっ、それならめいいっぱい高級なとこ予約しちゃおうかな」

「おう、どこでもいいぜ!」


 そんな、冗談だったのに……。


「あ、いつもの4人で行く事考えてましたけど……先輩はどうしますか?」

「もちろん私も行くよ。ケイが高級フレンチおごってくれるんだよね?」

「はい、もちろんです!」


 いつのまにか料理の内容まで決まってしまった。さっきまで軽く修羅場の様相を呈してたのに……。

 はぁ、安心したらお腹減ってきたな。


「おばちゃん、エッグロールください!」


 結局その後はいつも通りトーフルの勉強会となった。隣りにケイがいるのは少し不思議な気分だけど。ケイはなんだかんだでチャーハンコンボを完食していた。どうだ、おばちゃんのチャーハンはうまかろう!


 寮への帰り道、真由子さんに聞こえないようにケイが小声で話しかけてきた。


「おまえらほんとに勉強会してたんだな」


 何をしてると思ってたんだよ。


「おれはてっきり……その、なんだ。シュウが節操なくいろんな女の子に手を出してるんだと思ってたんだ」

「はぁっ!?」

「どうかしたのシュウスケ?住宅街だからもう少し静かにね」


 すいません、真由子さん。


「どうしたら僕にそんなハーレム疑惑が生まれるんだよ!?」


 僕は小声でケイに叫ぶ。


「まずは高岡先輩との密会だろ?」

「密会って……。ただの勉強会だっつうの」


 できれば僕だってそんな密会してみたかったさ!


「それと中院の部屋に着替えを持って入っていったって……」

「ああ、それか」

「え、これはマジなのか!?」

「ケイがパンいちでロックアウトされてたとき、僕がリアさんに洗濯のやり方を教えてあげたってだけのことだよ」

「ふーん……パンいちじゃねーし」


 この噂の発信源は女子エリアを開けてくれた子かな?もし逆に男子エリアに女の子が男物の着替えを持ってきたら、僕もそいつらが付き合ってるものだと思うだろう。もっとしっかり事情を説明しておくべきだった。


「あと、きれいなアメリカ人と抱き合ってたって話があるけど……」

「うわ、それも目撃されてたのか……」

「これはホントなんだな!?」

「ちげーよ。なんかものすごいビッチに背後から襲われそうになっただけだよ」

「おいおい、さすがにそんな話信じられねーよ。なんだよものすごいビッチって!」


 いったい誰が目撃してたんだろうな?真由子さんがこんな噂を流すはずないし……。


「それでとどめが僕とニコラがいっしょに洗い物してるところだったのね」

「おまえら、めっちゃ仲良さげだったから……」

「あのときは何話してたかな?あ、そうだ。たしかイタリア人街にあるおいしいリストランテの話をしてたんだ。そこでは真っ黒なパスタがでるらしいよ」

「俺にはおまえらのその様子が新婚カップルのように見えたんだよ……」


 そうか、そんなに仲良さげに見えたか。僕としてはニコラはもう近所のちびっ子感覚なんだけど。


「ところでケイは誰からそんな噂聞いたの?」

「誰からってみんな言ってたぜ?」

「みんな?」

「学校の女の子たち」


 ……マジかよ。じゃあ僕は彼女たちから女の敵として見られてるんじゃなかろうか?


「なあ、ケイから事の真相をそれとなくみんなに話しておいてくれない?」

「やだよ、めんどくさい」

「そこをなんとか!ケイ様!スーパー紳士様!」

「仕方ないなぁ……。じゃあそのかわりに……」


 お?ケイが条件出すのか。僕がおまえのためにしてやれる事なんてそんなにないぞ?


「そのかわりに?」

「あの晩ニコラとどんな事話してたか、もっと詳しく教えろよ」


 お易い御用でございます。

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