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ニコラの告白

 ニコラは僕を地下から連れ出しケイのいる寮にやってきた。


「あ、ケイも誘うのか。その方が楽しくていいね」

「ううん、今日ケイは誘わない」


 あれ?それじゃあどうして……ああ、財布かなにかをとりに行くのかな?それなら僕は玄関エントランスで待ってるよ。


「何してるの?早くこっちおいでよ」


 そう言ってニコラは僕を女子エリアの方へと手招きしてる。あれ?ひょっとしてこれは……これは……


 以前リア様の部屋に入った時はなんだか甘い香りがしたっけ。ニコラの部屋はどんなにおいがするんだろう。


「どうぞ、入って」

「おじゃましまー……す」


 なんだかとてもいい匂いがする。そう、これはニンニクの香り!


「パスタ茹でるけどシュウは苦手なもの無い?」

「生のフルーツ以外は大丈夫」


 まさか晩ご飯を手作りしてくれるなんて!なんだかこれって恋人っぽくない?ケイにバレたらなんて言い訳しよう……。


「生のフルーツ苦手なんだ?」


タマネギを手際よく切りながらニコラが尋ねてくる。


「好きなんだけどアレルギーで食べられないものがいくつかあるんだ」

「アレルギー?ひょっとしてアッレルジーアのことかな?」

「あれ?アレルギーって英語じゃないの?」

「たしか英語ではアレジーって言ったはず」

「まじかよ……またもや和製英語か」


 ニコラが乾麺のパスタを棚から取り出した。しかし大きな鍋はどこにも見当たらない。


「どうやってそれを茹でるんだい?」

「このポッドで茹でるんだよ」


 ニコラが示したのは電源コードのついたプラスチックの桶だった。


「そんなのでパスタが茹でれるの?」

「まあ見ててよ」


 そう言ってニコラがポッドに水を汲んで電源を入れると、1分も立たないうちにお湯が沸いてしまった!


「ここに半分に折ったパスタを入れればオッケー」

「すごい、アメリカにはこんなものがあるんだな」

「え?日本にはこれ無いの?」

「どうだろう、少なくとも僕は見たこと無いかな」


 こんな便利なものあったら部屋でラーメンが作れそう。あ、ひょっとして真由子さんがラーメン作るって言ってたのもこんなポッドを使うのかな?


 ……真由子さんのことを思い出したらまた気が滅入ってきた。


「もう、辛気くさい顔しないでよ〜」

「ごめん」

「ほら、これでも食べて元気出して!」


 電気コンロとフライパンで作ったソースにさっと絡めてできたパスタは、赤くてニンニクの香りの効いたとてもおいしそうなものだった。


「これは何て言うパスタ?」

「冷蔵庫のあまりものパスタだよ」

「いただきまーす!」

「ボナペティート」


 ……うまい。ニンニクの香ばしい香りとオリーブオイルのフルーティーな香りがパスタ全体を包み込んでいる。そしてやってくるトマトとベーコンの強烈な旨味!


「なにこれ!超デリシャス!!」


 僕はマナーも忘れて一気にパスタを食べてしまった!おかわり!


「気に入ってもらえてよかった。日本人もこういう味好きなのかな?」

「大好きだよ!すごいね、こんなにおいしいものがこんな設備で作れるなんて」

「でしょー!」


 ニコラは褒められてとてもうれしそうにしている。ケイよ、ニコラを落とすならこの辺に勝機がありそうだぞ。


「とにかくシュウは自分の思いを伝えなきゃダメだよ!」


 せっかくのおいしいパスタなのに、突然そんなこと言われたらへこんで味がわからなくなるぞ。


「……彼氏もいるみたいだし、どうせ無理だよ」

「そんなの訊いてみないとわからないでしょ?」

「じゃあニコラが訊いてくれるって言うの?」

「任せてよ!ちゃんと訊きだしてあげるから!」


 え、マジで?ニコラ様超素敵なんだけど!


「ところでいつ訊いてく——」

「ハロー真由子、いま大丈夫?」


 いま訊くのかよ!?行動早いな。


「あなたって今ボーイフレンドいるの?」


 ぎゃあああ!それじゃ直球すぎね!?デッドボールまっしぐらだよ!!


「うん……うん……えっ!?」


 え?『えっ!?』ってなに?なにを話してるんだ!?


「そう……わかったわ。突然変な質問してごめんね。お休み。良い夢を……」


 どうだったんだ?何を話したんだ?早く教えてくれ!


「ごめんね、シュウ。真由子彼氏いるってさ」


 はいデッドボール!試合終了!


「ああ、そのまま倒れたらパスタがこぼれる!!」

「はあ……マッスルになりたい。このパスタに入ってる貝でもいいや」

「何言ってるの?気をしっかり持って!」

「ごめん、もう帰るよ」

「ちょっと待って!私の話も聴いてよ!」


 ニコラの話?なんのこと?


「シュウに私の手料理を食べてもらったのにはちゃんと意味があるの!」


 そ、それってつまり……


「私はケイの事が好きなの!」


……は?


「今なんて?」

「ケイの事、好きになっちゃったの……」


 いや、その前にあなた思わせぶりな事何か言いませんでした?


「ケイの事好きなのに2人でのデートは緊張しちゃうというか……。あ、まだ付き合ってはいないよ?ただね、前4人でデートした時のあの感じ?あれくらいがちょうどいいと思うんだ。だからシュウと真由子には仲良くしてもらいたかったんだけど……もう無理よね。どうしようかしら……」

「じゃあ僕にこのスパゲッティを作ってくれたのは……」

「そんなのシュウに元気を出してもらうために決まってるでしょ。……それと、日本人がそういう味が好きかどうか知りたかったっていうのもあるかな」


 はいはい、僕は実験台ってことだったんですねー。


「ねえシュウ、私どうしたらいいと思う?」


 そんなのふられたばかりの僕に訊かないでくれよ!リア様よろしく「デリカシー!」って叫んでやろうか。


 それにしても……コイツら両思いだったのか、おめでとう。『ケイもニコラの事好きなんだよ』って言ったらどうなるだろう。……うん、普通に上手くいきそうだ。しかしそうは問屋がおろさないよ!


「とにかくもう一回4人でデートしてみようか」

「本当に!?でもちゃんと真由子を誘える?」

「まあ、自分の気持ちにけりつけるためにも誘ってみるさ」


 おまえらが結ばれるのは僕の最後のデートプランが終わったあとだ。それまではお互いモキモキ悩み続けろ!デートの決行は7月のトーフルが終わったあとだ!

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