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中院凛愛と笹塚

 翌朝、学校の図書館でシュウの作ってくれた問題を解いていたら、シュウがいつにも増して挙動不審な様子でやってきました。私がその事を指摘すると慌てた様子で「なんでもない」と否定し、かと思えば定まらない視点で何か考え事を始めてしまいました。

 そんな様子が午後まで続き、劇の居残り稽古中も心ここにあらずと言った様子です。


 もしかしたら……昨日は劇の稽古に加え、深夜まで勉強に付き合ってもらいましたから、無理させてしまったかもしれませんね。でもそんなことでは私と一緒の大学に行けませんよ!……なんちゃって。


「さっきから何をぼけーっとしてるんですか?やる気がないなら今日はもうやめます?」

「いや、ちゃんとやるよ……」


 あらあら……挑発してやる気を起こさせるつもりだったのですが、普段の快活さが全く見て取れませんねぇ。


「どうやらほんとに調子が悪いようですね。今日の所はここで切り上げましょう」

「そんな、大丈夫だよ。まだやれるって!」

「私に付き合わせてしまってばかりで疲れがたまってるんですね。今日はしっかり休んでください。それではごきげんよう」


 一緒にいるときっとシュウは無理をしてしまいますからね。今日は自室で大人しく勉強でもしましょうか。

 そんな事を考えながらスクールバスに乗り込むと、なぜかこの学校の番号から電話がかかってきました。


「ハロー?」

「ナカニンさん?こちらは正門ゲートの警備員です。あなたにお客様が来ています」

「まあ、どなたでしょう?」

「ミスターサーズカと言っていますが」

「サーズカ?……ああ、笹塚さんですね」

「お通ししてもよろしいですか?」

「もちろんです。今からそちらに向かいます」




 バスがゲート前に着くと、駐車場から笹塚さんが猛然と駆けつけてきました。


「リア様!あ〜よかった。ご無事でしたんですね!」

「無事?いったいなんのことです?」

「……ここはひと目につきますからとりあえず車の中へ」


 笹塚さんの安心し切った顔が一瞬で真剣なものになったことに、悪い予感がいたしました。




「……つまりお父様は、ネビル家の人がここに来て私を攫うかもしれないとお考えなのですか?」

「ええ、まさにそういった事態を危惧していらっしゃいます」

「まったく、お父様の心配性は困り者ですねぇ。笹塚さんもこの学校の警備をご自分で体感なさって、どれだけ厳重かはおわかりでしょ?」

「ええ。たしかに学校内にいるうちは問題無さそうです。しかし昨日リア様はマキちゃんも連れずに外を出歩いたそうじゃ無いですか!」

「そ、それはスクールバスで行けるレストランでトーフルの勉強をしてただけで……」

「そのうえ帰りは深夜だったとか!たしかに雅哉様も心配しすぎだとは思いますが、リア様もご自分の行動が周りにどれだけ心配をかけているか考えなければいけません!」


 うう……マキちゃん、笹塚さんに何を吹き込んだんですか。このままではシュウとの行動を制限されかねません。


「そのお顔は雷が去るのを待つ顔ですね」

「ちがっ……わないです。笹塚さんは本当になんでもお見通しですね」

「なんでもじゃありませんよ。雅哉様とリア様のことだけです」

「私に対してはなんでもお見通しって事じゃないですか!」

「もちろんですよ。私はあなたのことをアメリア様のお腹の中にいた頃から知っているんですから。超音波で見てもなかなかお腹を見せてくれないから、ずっと男の子か女の子かよくわからなかったんですよ」


 そういえば笹塚さんはお父様お母様と大学時代からのご友人でもありましたね。お母様が亡くなってからはまるで女親のように相談にも乗ってくださいましたっけ。……ひょっとして笹塚さんがいわゆるオネエっぽくなったのって私のせいでしょうか!?


「安心してください、私はもともとこんな感じです」

「えっ!?そんなことまでわかるんですか?」

「声に出てましたよ。さあ、その調子で今悩んでる事も打ち明けてください」

「どうして私が悩んでると?」

「今のリア様、教育実習の先生に恋したときと同じ目をしていらっしゃいますよ。さあ、どんな恋をしていらっしゃるんですか♡♡♡」


 こうなるともう、笹塚さんを抑える事はお父様にだって不可能です。いつの間にやら私はシュウとの今の関係を洗いざらい白状してしまいました。


「あら?でもたしかあの子は桜色のドレスの子と踊ったんじゃありませんでした?」

「その方に恋人がいて失恋なさったようです」

「まぁ、それじゃあリア様が彼の失恋のショックを癒して差しあげてるんですね」

「ちょ、それじゃあまるで私がシュウの弱っているところに付け込んだようではありませんか〜!」


 私の恋バナで散々私をいじり倒した後、笹塚さんはとても優しい顔をして私の手をそっと包み込みました。


「この通り私はリア様の恋の味方です。ですから絶対に元婚約者になんてあなたを渡しませんから!」

「笹塚さん……!」

「そのためにもまず、しばらくの間外出は禁止させていただきますね」


 そんなぁ、それはあんまりです!!

裏ではシュウがマキちゃんに投げられたり、無くした指輪を探したりしてます(笑)

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