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中院凛愛の変装

本日1話目

 私はバスルーム(アメリカでバスルームと言えばトイレのこと)で髪の毛を帽子に詰め込んで、普段人前でかけることのないメガネをかけました。合格者発表の場にすでに合格している私がいたらイヤミでしょうから変装することにしたのです。


 うん、こうして見ると私も結構外国人っぽくみえるじゃないですか。

 変装したリアですから……ヘンリー……では男性ですね。さすがに男の子には見えませんから、ヘンリエッタなんて名前はどうでしょう。今から私はヘンリエッタちゃんです!




 ヘンリエッタちゃんになってみたはいいものの、やはり堂々と講堂に入っていくのは気が引けたので、こっそりと最後尾の席に腰を落ち着けます。真っ白なおひげの先生がかた眉を上げて私を見てきますが気にしてはいけません。私だってここの生徒なんですから胸を張っていればいいんです。


 成績表を手渡される皆さんの表情はあまりいいものじゃありませんでしたが、その分合格している人は一目で合格だとわかりました。

 中でも前回の合格発表で眉ひとつ動かさなかった加納くんは、成績表を受け取ると同時にガッツポーズをしていたので合格したのがまるわかりでした。そのうえ先生方が拍手をしだしたので皆さんも加納くんの合格に気付いたようです。先生方にこんなに愛されてるなんてよっぽど頑張って授業を受けて来たんでしょうね。

 私も一ヶ月後加納くんと同じように喜べるように頑張らなくちゃいけませんね!

 そんな事を考えていたら、なんと加納くんと桜井くんが二人そろって私の目の前に腰掛けました!私の変装がバレてしまったんでしょうか!?


「残念だったなケイ。まあ次があるさ」

「ったく、自分が奨学金ゲットできたからって気軽に言ってくれるよな……」

「それでスコアはどうだったんだ?ちょっと見せてくれよ」


 どうやら全く私の変装に気付いてないようです。ひと安心してふぅとため息をついた瞬間、桜井くんがヘンリエッタちゃんを見つめてきました!そしてフッと笑ったかと思うと視線を外してくださいました。どうやら桜井くんには私の変装がバレバレのようです。


 ニコラは満面の笑みを浮かべ、先生方の盛大な拍手の中桜井くんの隣にやってきました。結果は言わずもがなですね。ニコラに集まる皆さんの視線がまるで私を見ているかのような気がして思わず机につっぷしてしまいました。


「おめでとう二コラ。満点なんてかっこいいね」


 満点ですって!?あの難しいテストでパーフェクトを取るなんて、ニコラの頭の中はどうなってるんですか!?


「ありがとうシュウ。これも皆がいてくれたおかげだよ」

「わずかでも君の力になれたならそれが僕の喜びさ」


 うわぁ……。加納くんがなんだかキザなセリフを吐いてます。英語を話すだけでどうしてここまで人が変わってしまうのでしょう。不思議ですね。


「よし、二コラの合格を祝してまた4人で遊びにいこう!」

「何言ってるの?ケイはこれから勉強しなきゃダメでしょ!」

「お祝いしたらちゃんとやるから!むしろお祝いしないと勉強が手につかない!」

「そ、そういうことなら……仕方ない、かな?」


 なんだか桜井くんがやけに子供っぽいのですが……。もしかしてこれが桜井くんの素の姿なんでしょうか。なんだかレアなシーンに立ち会ってしまいました。

 いったいどんな顔でそんな子供っぽいセリフを言ってるのかと顔を上げた瞬間ニコラとバッチリ目が合ってしまいました!どうも、ヘンリエッタちゃんです……。ダメ?


 ニコラは何事も無かったかのように会話の環の中に戻っていきました。私の正体に気付いたかどうかはよくわかりませんが、どちらにせよこの場で何か言うつもりは無いようです。


「ケイ、おまえここで落ちたら二コラとお別れだってわかってる?おまえの志望大学には語学研修所なんてないから、下手したら9月からもこの女子大に通うことになるんだぞ?」

「く、そうだった……。仕方ない、今回のボストン行きは諦めるか……」

「そうだ!私がケイに勉強教えてあげる!そうすればきっと合格できるよ!」

「なんて素敵な提案なんだ!次のトーフルまでよろしく頼むよ二コラ!」


 たしかに素敵な提案ですね。私も加納くんに教えてもらえたら……って、どうしてそこで加納くんの名前が出てくるんですか!たしかに奨学金を獲得した加納くんに教えてもらえば私もレベルアップできるかもしれませんが……あれ?よく考えたら本当に良い案じゃありません?いまさらよく知らないトーフル上級クラスに入るよりも、一ヶ月で奨学金を獲得してしまった加納くんにポイントを教えてもらった方が良いのではないでしょうか!


 それに授業料のこともあります。たしかお父様はすでに授業料は振り込んだと言っていましたが、私が再度トーフルの授業を取る事は想定していなかったはずです。つまりトーフルの授業を取るためには私の貯金を切り崩さなければいけないでしょう。そうなるとマキちゃんへの支援が不十分になってしまうかもしれません。それだけはあってはなりません!


 いろいろ言い訳めいた事を考えてしまいましたが結論はひとつ!加納くんにトーフルを教えてもらいましょう!!

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