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中院リアの目撃

本日1話目

 ある日の午後、授業を終えて寮に帰ると洗濯物が少し溜まっていたので、マキちゃんと一緒にランドリーに行くことにしました。


 以前までマキちゃんは私が眠ったあと1人で洗濯をしていたようで、今こうして一緒にランドリーに向かえることがすごく嬉しいと言ってくれます。それだけで洗濯を身につけた甲斐があるというものですね。


 いつもはこの時間になると談話室で加納くんがニコラや桜井くんとビリヤードで遊んでいるのですが、今日は誰もいないようです。代わりに奥のランドリーから人の声が響いてきます。


「誰かいるようですね。リアさんどうしますか?またあとにしますか?」

「女性の声ですし平気ですよ。行きましょう」


 私たちがランドリーに近づくと女性の声の他に加納くんの声も聞こえてきました!思わずランドリーの入り口に身をひそめてしまいます。

 マキちゃんも私に習いそっとランドリーを覗いています。


「あの外人は昼にカフェテリで高岡先輩に叱られていた人ですね」

「ということはここの生徒ではなく真由子さんのお知り合いかもしれませんね」

「……『真由子さん』ですか?」

「ええ」


 話せば長くなるのですが、みんながトーフルの勉強をしている時間に独り体育館でダイエットをしていたら真由子さんがやって来て一緒にバドミントンをしてくれるようになり、以来私は彼女のことを『真由子さん』と、真由子さんは私のことを『リアちゃん』と呼ぶようになりました。真由子さんは今の私の辛い状況を癒してくれるステキな方です。


 まあそれは置いといて……


「マキちゃん、今ボーイフレンドがどうとか聞こえませんでした!?」

「リアさん、シーッ!声が大きいです」


 あわてて口を押さえますがどうやら加納くんたちには聞こえなかったようです。ランドリーがうるさくて助かりました。まあそのせいであちらの声もよく聞こえないのですが。


「……教えてあげてもいいわよ」

「ほんとに!?」


 何の話をしているのでしょう。加納くんが彼女に英語の手ほどきでも頼んだのでしょうか?それにしては2人の距離がなんだか近いような……


「ええ、いろいろ教えて上げる。あなたのベッドの上でね」


 キャアアアアアアア!!ベッドの上で教わるあれこれってなんですかっ!?

 思わず私たちは地下の談話室から一階へと階段を駆け上がっていました。


「マキちゃん聞きました!?」

「ベッドの上で教えるって……つまりそういうことですよね!?」

「ダメです!!加納くんは真由子さんが好きなんですから!!」

「あ、やっぱりそうなんですか!?」

「あっ!口が滑りました!!とにかくあんなことダメです!!」

「でも男はやっぱりああいうのが好きなんじゃないですか?特に加納くんみたいな弱気なタイプは相手から押されたらあっという間だと思いますよ……」


 まずいです、このままでは加納くんがブロンドアメリカ人の餌食に——!!


「あら、リアちゃん、高橋さんこんにちは。2人とも洗濯?」


 私たちの声が聞こえたからか、そこへちょうど真由子さんが部屋から顔をのぞかせてくれました。


「真由子さん!!どうしましょうたいへんです!!」

「どうしたの!?何かトラブル?」

「加納くんが……加納くんが……」

「加納くんが下でアメリカ人といちゃついてますよ」


 マキちゃんなんて言い方するんですか!?それでは加納くんの印象最悪じゃないですか!


「ミラ……本当に節操ないんだから!」


 そう言うと真由子さんはあっという間に階段を駆け下りていってしまいました。

 地下への扉が開いた音がすると「こんなところで男を漁るな!」という真由子さんの声が聞こえ、扉の閉まる音と同時に何も聞こえなくなってしまいました。


「……洗濯物はまたあとにしましょうか」


 覗きにいく気満々でしたが、マキちゃんの手前一緒に大人しく部屋へ帰る私なのでした。




 すっかり暗くなった頃、もう一度ランドリーに行くと誰もいなくなっていました。あるのは乾燥機に残された誰かの洗濯物だけ。あのあといったいどうなったのでしょうか。私気になります!


「リアさんすっかり洗濯上手になりましたね」

「ありがとうございます!」


 加納くんに教わってからもう3度目の洗濯ですから、もうだいぶ慣れてきました。今ではひとりでネットに入れるべき物を区別できますし、色移りしそうなものをわけることも可能です!

 最初こそ謎の霊現象に怯えていましたが、あれ以来変な音が聞こえることはありませんでした。

 だからと言って私ひとりでランドリーに来る勇気はまだないのですが。


「……マキちゃんはここで変な音を聞いたことってありませんか?」

「またあのお化けの話ですか?私は全く霊感が無いのでわかりませんね」

「すごく怖いんですよ、まるでその乾燥機に誰かが閉じ込められてるように、ドンドンドンって——」


 ドンドンドンッ!ドンドンドンッ!


「ギャアアアア!!出ましたぁぁああ!!」

「落ち着いてくださいリアさん!!」

「マキちゃんたすけて!!」


 私がマキちゃんに抱きつくと、マキちゃんは力強く私を抱き返してくれました。ああ、なんて男らしいんでしょう!


「リアさん、これ乾燥機の音じゃないです。これはたぶん壁の向こうから……」

「壁の中!?ひょっとして誰かが塗り込まれて……いやぁああ!!」

「リアさん落ち着いて!そうじゃなくて談話室の方から聞こえてくるんですよ」

「……え?」

「ちょっと来てください」


 そう言うとマキちゃんは私をずるずると引きずりながら談話室の方へと向かいます。

 するとまたドンドンドンッ!ドンドンドンと乾燥機を内側から叩く音が聞こえてきました!


「やっぱり幽霊がいるんですよ!!」

「これは……共振かもしれませんね。このレベルの音ならきっと近くで……あ、なるほど」

「何がなるほどなんですか!?いたんですか!?」

「ええ、いました」

「嘘だと言ってください!!」

「ほら、そこにいますよ、ニコラが」


 嫌ぁぁあああああ!!……え??

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