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中院凛愛あらわる

 ボストン観光当日、待ち合わせ場所である寮の前には、すでにケイとニコラがいた。英語で何か話しているようだがケイの表情が少し固い。紳士モードなら無敵なやつも恋愛モードになると僕より奥手になるようだ。これが男子校で寮生活を送った者の定めなのか。


「シュウ、おはよー!」


 こちらに気付いたニコラが元気に話しかけてくる。いくらケイに任すと言っても、挨拶くらいはしといたほうがいいだろう。


「おはようニコラ。調子どう?」

「調子良過ぎて朝5時に起きちゃった」


 そんなに楽しみにしてくれてたのか。誘ったかいがあるというものだ。おっとケイ、そんな恨みがましい目で見るなよ。わかってるからさ。


「ニコラが嬉しそうだと僕まで嬉しくなるよ」

「それは光栄だわ」

「そういえば、ニコラが観光に参加するって言ったらケイも嬉しそうにしてたよ」

「ケイが?」

「なんかイタリアに興味があるみたい。よかったらいろいろ教えてあげてよ」

「オッケー。ケイとも友達になれたらいいな!」


 よし、チャンスは作ってやった。あとはお前次第だぞケイ!

 さて、真由子さんはどこかな〜?


「ちょっと」


 あれ、真由子さんまだ来てないのかな。今日はどんな格好してくるんだろう?私服姿楽しみだな〜!


「ちょっとそこの!」


 だれかさん、呼ばれてますよ?


「ちょっと、加納くん!?」


 あ、僕ですか?

 何の用でしょう、女子グループ最大派閥のリーダー、中院凛愛なかのいんりあさん。僕は皆さんから無視されてるんじゃありませんでしたっけ?


「なんで外国人がこの旅行に紛れ込んでるのかしら?あの子、あなたの友達でしょ?」


 無視してた割によく知ってますね。


「そうだよ。ボストン観光したことないって言うから誘ったんだ」

「この旅行は日本人同士が仲良くするためのものじゃなかったかしら?そこに外国人を連れてくるなんて、あなたもっと空気を読んではいかが?」


 言ってろ。真由子さんには悪いけど、僕にとって日本人同士の親睦なんて正直どうでもいい。僕が望むのはケイとニコラが仲良くなること、そして僕と真由子さんが仲良くなることだ!


「ねえ、あなたからあの子に来ないように言ってきてくださらない?」

「は?なんで誘った本人がそんなこと言わなきゃいけないのさ?」

「あなたが言えば一番穏便にすむでしょう?」


 うーん、この思考回路どうなってるんだろ?世間のお嬢様ってみんなこんな感じなんだろうか。


「とにかく僕から言うことは何もないよ。そんなに嫌なら中院さんから直接言えば?『日本人の親睦会なんだからあなたは出てってくれるかしら?』って」

「くっ……」


まあ、無理だよね。素敵なケイくんの前でそんな嫌な女を演じるのは。ケイがニコラと一緒にいる限りこいつらは文句を言うことすらできない。我ながら完璧な計画!


「はあ?あんたちょっと調子乗ってない?」「自分の立場わかってるの?」


 おっとこれは計画外。中院の取り巻きがあらわれた!


 きっとケイがこの現場を見ていたら助けてくれるんだろうが、あいつニコラにメロメロでやんの。お幸せに!ここは自分で切り抜けねば。


「僕に立場?そんなものがあったんだ。ねえ、よかったら教えてくれない?」

「は?なにいきってんの?そんなもん自分で考えなよ」


 『いきってる』って何?日本語?ああ、こいつらと話すくらいならトーフルの勉強しながらうんうん唸っていたい。


「自分で?僕が考えるに僕たちの立場になんら違いはないはずだよ。だってここは自由の国アメリカなんだから」

「はぁ!?」「ふざけんなよ?」


 おーおー、顔真っ赤。親同士につながりがありそうな他の留学生と違って、こいつらに恨まれて失うもんなんか僕には何もない。どうせ3ヶ月だけの同級生だ。そっちがやる気ならこっちも徹底抗戦してやるよ。


「あなたたち、やめなさい。加納くん、この子たちが失礼なこと言ってごめんなさい」

「リアさん!?」「悪いのはコイツじゃないですか!」


 うわ、こいつら小物臭が漂ってるよ!反対にリアからは妙な余裕を感じる。


「私はただ、日本人同士の親睦と聞いていたから趣旨に合わないと思って忠告しただけなのよ。他意はないわ」


 さっきまでケイに話しかけられなくて未練タラタラって顔してたのに、今はもうお嬢様の顔に戻ってる。


「だから加納くんもこれ以上この子たちを挑発するようなことは言わないでくださいね」

「挑発?何を言って……」

「あら高岡先輩、いらっしゃったんですか。おはようございます」


 え、真由子さん!?ひょっとして今のいざこざ見られてた?



 僕の慌てる姿を見てリアたちがニヤっと笑ったような気がした。

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