世界一幸せな国と少女
幸せの裏には何があると思いますか?
ここは世界一幸せな国、ランバルド王国。
この国には、人間はもちろん、その他に、魔界人や、想像をはるかに超える植物や生物達が共存している。
例えば、ドラキュラだったり、狼男、魔法使いなどがいる。たくさんの人種がいるなかで、国民全員が幸せに暮らしている。けど、国同士の争いは絶えない。
じゃあ、なんで幸せなのかって?
それは、世界会議で全世界の国が、世界平和保護協定を結んだから。
世界平和保護協定は、ざっくり言えば、国内で争いをするな、国民を巻き込むな、という事。
どの国であれ、国民に危害を加えた時点で、その国は国でなくなる。世界から国として見られなくなるのだ。
この星には国じゃないフリーランドと呼ばれる土地があり、ある時は、貴重な資源収集場所になり、ある時は戦場にもなる。過去に協定を破った国の跡だったりする。だから、焼け野原になってる場所もあれば、ジャングルになってる所もある。
この国は今日まで目立った争いはしてこなかった。その事もあって、世界一幸せな国と呼ばれている。しかし、ついにこの国も争いをせざるを得なくなってきた…。
さて、頭の回転が速そうなそこの君。今疑問に思ってない?
「争いがある以上、戦場に行き、戦う人がいる。そうなれば、負傷者はもちろん、亡くなる人がいる。それで幸せとは呼べないのでは?」と。
もちろんその通り。怪我人が出る。死者が出る。という事はその家族や友人が悲しむよね。
では、もっと頭の回る君。そう。『争い』とは言ったけど、『戦争』とは言ってないのに気付いてた?
世界平和保護協定では戦争も禁止されている。だから、争うと言っても殺し合いではないんだ。基本ロボットや、魔術で技術の高さを競い合ったりする。
そんな国と世界の話。物語は小さな北国、メルンカの国からはじまる…
「カティ!早く支度しなさい。ノーラが呼びに来たわよ。」
「分かってるってばー!」
いつも通りの慌ただしい朝。
私はカティ・コーリー。小さな北国、メルンカに住む少し変わった女の子。
朝は苦手。
いつも親友のノーラ・デイルを待たせてる。
パンを口の中に放り込むと一気にココアで流し込んだ。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
お母さんはそういうと家の中に戻っていった。
「ノーラ、待たせてごめんね〜!」
そういうと彼女は決まって、
「ううん。カティは朝苦手だもの。いつもの事だし気にしてないよ。」
と、ふわふわした笑顔で、何気に痛いところを突いてくる。
い、いつもの事…これでも頑張ってるのにぃ!泣
「そ、そう、私は《いつも》寝坊し、ノーラを待たせているけど、遅刻した事はないのよ!ふっふっふ流石はわたs…(バコッ!)痛っ!?」
振り向くと、頬に絆創膏を貼り、シューズの入った袋をぐるぐると回している少年が立っていた。
「バーカ。それはノーラが早めに来てくれてるからだろーが。」
「はぁ!?だからって、頭部を叩かなくても良いでしょ!?」
その様子をオロオロと見ていたノーラが口を開いた。
「ル、ルトくん、私本当に気にしてないから。カティは早く起きれるように頑張ってるし…」
少年の名前は、ルト・パーシー。3人は小さい頃からの幼馴染。
「そうよ! だいたい、か弱い乙女に暴力だなんてありえないわ!」
「あ?ノーラ以外どこにそんな子いるんだよ?」
「なんですって!?」
「ちょ、ちょっと、2人とも!朝からやめてよ〜。」
「「ノーラが言うならしょうがない」」
(…ルト(カティ)とハモった…!)
「「!!!」」
お互い目を丸くして驚いてるのを見てノーラはクスクス笑ってる。本当に可愛い。
なーんて思ってると、ルトはスタスタと先に学校の方へ歩いて行ってしまった。
するとノーラが、
「カティ、私達も行こっ!」
と手を差し出した。
「うん!」
私は差し出された手をしっかり握って学校へむかった。