プロローグ
プロローグ
妻が亡くなって半年が経った。
もともと身体が弱く、娘を産んで、あっさり逝ってしまった。
絶望と後悔に苛まれ、どうしたらいいのかわからない日々が続いた。
そして、家族や友人たちに支えてもらい、娘を育てていかなければという想いで、なんとか生きていく折り合いを付けたのだと思う。
それから実家に戻った俺たちは両親と姉の助けを借りながら過ごしていた。
娘と過ごす生活は毎日が刺激的で、そして欠落した穴に時々心をもっていかれつつも、日々は過ぎていった。
その日は、顧客から無理難題を出されて、上司からは嫌味を言われたりもしたけれど、帰って娘の寝ている姿をみるだけで、全てが癒やされるような気がした。
よく、眠っている。
こんなに小さいのに、指先には小さい爪があって、ふわふわの髪の毛も柔らかくて。
本当にかわいいな。
生まれてきてくれてありがとう。
本当は抱き上げて頬ずりしたかったけど、それをやると、せっかく寝たのに起きてぐずってしまう。娘のほとんどの世話をしてくれている両親と姉に叱られることは確実だ。
うん。何度もやってしまったからね。
流石に自制するさ。
お前は仕事だけやってればいいと思ってるんだろうけどな、なんて説教されるのはね。
でも、やっぱりかわいいよ。
思わず両手がベビーベッドに寝ている娘に伸びてしまった時、それに気づいた。
隣の居間から障子越しに照らされる薄暗い部屋の中、娘を中心として、急に明るく光る模様が現れた。
光る線で書かれた円形、複雑な文字のような文様。
なんだこれ、まるで魔法陣………?
光が急速に明るくなりはじめたところで、ハッとして娘を抱えてその模様から離そうとし………たところで、視界が暗転した。