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魔王就任 【魔石編】  作者: 市太郎
初外交
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魔王様と魔石 ■ 03

 魔界用貨幣は潤わないが、人間界貨幣をそれなりに蓄える事が出来た魔石なんだけど、本当は前々回の慰安旅行の時で、先代魔王時の魔石は全て処分する事が出来たのよ。

 最初、魔石が必要だと聞いてたから、特に考えるでもなく作っては携帯食として配っていたんだけど、馴れてくるとこれがまた非常に効率悪いのよ。

 大体、消費量と携帯サイズを考慮して、魔石は鶉から鶏の卵サイズが標準だったりする。

 主に淫魔族だけど、魔力とかが主食な連中には、この程度の魔石なんて直ぐ消費しちゃうのよ。

 作っては戻され補充しては戻されって状況が、非常に鬱陶しい事この上ない。

 私って凄いよ! と自画自賛したくなる程仕事頑張っているのに、やってもやっても、一向に減らない書類の山って気分萎えない?

 執務室の隅で、一向に減らない魔石の山を見て、うんざりしてきたので別の方法を考える事にしました。


 まず考えたのがテレビとかラジオ。

 電波塔から信号を発信するのと、受信するテレビやラジオね。

 通話する術があるんだから、会話を魔力に置き換えれば出来るんじゃないかなと思ったの。

 イシュとガルマにテレビの事を言っても分からないから、魔力の発信と受信が出来る物が作れないかどうかを聞いてみた所、術の構成で可能である事が判明。

 発信は私の執務室、受信は淫魔族の最も僻地な場所へ設置して試したら、問題無く魔力は流れて行くし、受信機から良い塩梅に魔力が溢れるって事で、早速、大量生産して各領地満遍なく行き渡るように設置したのね。。

 携帯食である魔石も、この受信機を通して魔力が補充されるから、返却支給の必要も無しと良い事尽くめ。

 これにて、執務室にある魔石の山は一気に消え失せた。

 いつでも手軽にお腹は一杯になれるし、しかも、私の魔力ってば美味しいらしいから、皆グルメになっちゃったし、人間界へ行く必要も無くなったのはこのお陰。

 執務室の私の机の上には、発信機ならぬ送魔石となる球状の透明な水晶がある。

 正しくは水晶ではないんだけど、透明な鉱石の膜で作られた球体と言うべきかな?

 空洞の中は、吸収された私の魔力が詰まってて金の粒子に満ちている。

 常に金の細かい粉がぐるぐる動き回ってて、スノーボールそのまんまだね。

 ちょっと離れて見たら、そういう模様のボールに見えなくも無い。

 魔力を吸収し易い鉱石が使用されていて、その球体が置かれている台座に組み込まれた術で、魔力が各領地に設置された受信機ならぬ受魔石へ転送されているの。

 イメージは携帯電話と同じような物で、電波を魔力と思えば分かり易いかな。

 各地に置いた受魔石で、携帯電話の基地局の役割と魔力の充電が出来る仕組み。

 魔界全域へ蜘蛛の巣のように受魔石を設置していて、それぞれの受魔石を中継して別の受魔石へ魔力を送ったりとそれぞれが補い合う機能、でなくて術も組み込ませてあるから、私の魔力が魔界全域を覆うように垂れ流されているのである。

 受魔石にも、各領地に住む種族の特性を出した鉱石が使用されていたり、意匠が凝ってあったりと、魔力補充がてらちょっとした観光名所になってたりもするのだ。

 肉食系でも魔力で食事の代行は出来るけど、淫魔族程には満足感が得られないみたい。

 でも、受魔石から溢れてる魔力は、大変質の良い魔力なので、取り入れる事によって魔力が底上げもされていくのよ。

 なので、魔界全域にこの受魔石を設置してあって、垂れ流されている魔力のお陰で、今の魔族はかなり力のレベルが高いのであります。

 まぁ、そういった状況を経て、今は捨てるような魔石も無かったりもするのね。

 前回と今回の慰安旅行で捌いて来た魔石だって、各地に設置した受魔石のデザインで削ったりとかした分だし。

 旅行参加者が危険な目に合うなら、当分卸さなくても良いやってのが現状であります。

 なんて、人間界でどれだけ魔石がフィーバーしているか知らない私は、暢気にそう思ってた訳なのでありますよ。


 数日後の事。

 仕事の早いガルマが、捨てていた真珠を集めた後、色、形、大きさ、傷の有無で振り分けた事を報告しに私の執務室へとやってきた。

 「えー? あれから、まだ三日しか経ってないのに? 本当? 早いねぇ」

 「魔王様から直々にご命令を賜りました故。これでも急ぎましたが、思いの外手間取りましてのぅ……ご報告が遅くなりまして申し訳ござりませぬ」

 「いやいや、十分早いから。仕分けしてくれた人達にも労っておいてね」

 ガルマの訪れに処理をしてた執務の手を止めると、どうせだからと休憩を取る事にした。

 イシュが早速カフェオレを淹れてくれる。

 ガルマの分も渋々と淹れて、暫しのティータイムを楽しむ。

 本日のガルマの装いはシンプルな黒いドレスで、腰から膨らみを持たせているバッスル・スタイルだ。

 形はシンプルなんだけど、レースとか刺繍とかは贅沢三昧で、首の部分もタートルネックですっぽり隠しちゃって、露出が無くシンプルなだけにネックレスが良く映えている。

 先日魔力を注いだ濃い黄色味掛かった真珠から、徐々に粒は小さく色も淡く薄くなっている真珠のネックレスだ。

 「それも早速作ったんだ。似合ってるね」

 流石ガルマだと頷きながら、良い出来栄えの真珠のネックレスに自然と口元が綻ぶ。

 「ありがとうございます。魔王様からの賜り物故、仕上がるまでは気が急いて急いて仕方がありませんでしたのぅ」

 「あんまり、泣かせないようにね。で、仕分けた結果どれくらいの量になった?」

 ガルマの事だから妥協は許さないだろうし、作った職人達も泣きながら死に物狂いだったに違いないと苦笑を浮かべる。

 「細かく仕分けました故……左様でございますなぁ……この執務室が埋まる程度でございましょうか?」

 室内を見渡すガルマにつられて見たけど、ざっと十畳ぐらいのスペースがあるし、天井もかなり高いんですけど。

 「随分な量だねぇ……取り合えず邪魔にならない場所へ保管しててもらおうかなぁ」

 昨日話を聞いた時には、魔石として売り出そうかとも考えていたんだけど、物騒な状況だからそれは一時保留だし、余りある真珠をどうしようかと思っていたら、横からイシュが口を挟んできた。

 「魔王様」

 「ん?」

 「ガルマ殿が身に付けておられる魔石は、魔王様が自ら賜れたのですか?」

 「左様。魔王様が、自ら、妾を思い、妾の為に、選んで下さった物へ、魔力を注いで下さったのよ」

 私が答えるより先にガルマが答えたんだけど、何でそんなに煽る言い方?

 「今夜も、魔王様自ら下さったこの魔石を身に付けて眠るのが楽しみよのぅ」

 と、そこで勝ち誇ったようにガルマは笑う。

 「では、魔王様。真珠は妾にてお預かりし保管致します故、必要あらばいつでもお声をお掛け下さいませ」

 「あ、うん……よろしく……ね?」

 優雅に膝を折って礼をしたガルマは、しずしずと執務室を後にする。

 なぜか肩越しで、再度イシュに勝ち誇ったような笑みを送ってから。



 普段と何ら変わりない、イシュと二人だけの執務室なのに、何だろうこの寒気を覚える空気は。

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