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魔王就任 【魔石編】  作者: 市太郎
大公と竜族
22/37

魔王様と魔石 □ 21 ※

【R15】これより差別的思想の描写が含まれますのでご注意下さい。

 フィンデイルと共に竜界へと渡り、竜王と対面したまでは良かったが、既にナイリアスは王との対面を済ませ引き払った後であった。

 フィンデイルが事の経緯を王へ報告している傍ら、側近であろう数名の竜族が我等へ不快な眼差しを向けている。

 つくづく我等が王は甘くてらっしゃる。

 この様な連中に温情を見せる必要等無かったのだ。

 しかし、今言った所で詮無き事である。

 フィンデイルの報告が済み、押し黙る竜王に代わって老いた竜族が口を開いた。

「フィンデイル様はそう仰られるが、ナイリアス様が突然豹変するなど想像もつきませぬ。先程、王へご報告に参られた際も常と変わらないご様子であった。失礼であるが、その魔族の方達の言い掛かりではござらぬか? 魔族の王自らナイリアス様へ付き従って竜界へ渡られたとかですなぁ」

「そうです。大体、王たる者が容易く攫われるとは。王の資質が問われるというもの」

「ナイリアス様のご報告によると、フィンデイル様は何やら魔族の方とかなり懇意にされていたとか。竜族としていかがなものかと思いますが? その上、魔石はフィンデイル様がお預かりされており、ナイリアス様は使者としての名分は既に済まされた為に一足先に戻られたとの事でしたぞ? 要の魔石はいかがされたのですかな」

 老人の後には若い竜族が続き、それが皮切りとなったのか四の五のと五月蝿く竜族が騒ぎ出す。

 魔王様の魔力を探査しているのに非常に邪魔である為、永遠に黙らせてやろうかと意識をそちらへ向けた途端に竜王が声を掛けてきた。

「魔族の方よ」

 視線を向ければ、竜王が見据えている。

 成る程。

 殺気立つなと言うのであれば、代わりに連中の五月蝿い口をどうにかして欲しい所だ。

 邪魔で仕方がない。

 そう思い竜王と向き合っていると、察した様子で竜王が手を振る。

 数名の側近を残し、退出を命じられた喧しい連中は文句を言いながらも渋々部屋から出ていった。

「騒がしくして申し訳なかったな。さて、魔族の方にフィンデイルよ。ナイリアスは歳の割には怜悧で激する事も無く落ち着いた性格だ。先の者も言っていたが、ナイリアスがその様に豹変したとは俄かに信じ難い。先程顔を合わせた際も、普段と変わらぬ様子であったし特に異変を感じなかったが」

「しかし、王……いえ、兄上。他者から聞いたのであれば俺とて信じられない話であるが、兄であるこの俺に刃を向けようとしたのは事実。普段のナイリアスを考えれば、それとて異様な事でしょう」

 フィンデイルが事実であると訴えた所で、ここは竜族の地である以上竜族にとって分の悪い、他種族の肩を持つ言い分を素直に聞くとは思えない。

 フィンデイルが事情を説明している間も、サナリラナイアと共に魔王様の魔力を感知しようと密かに探査の術を広げているが一向に引っ掛かる気配が無い。

 どこか術の及ばない地にいるのか、術を防ぐ何かがあるのか。

 時折、魔王様に呼ばれているような気は感じるものの、場所を特定する前にその気は霧散してしまう。

 呼ばれている間隔も次第に間が空いてきているのも気に掛かる。

 サナリラナイアの様子を伺うが、同じようなジレンマに苛立ちが垣間見える。

「そうは言うが、魔王殿は竜族である我等の突然の申し出にも快く応じてくれたのだぞ?」

「フィンデイル様。それは竜族の、しかも王族が自ら趣いている訳ですから、快く応じるのは当然でございましょう」

「馬鹿を言うな。俺は『当然』と思う、お前等の考えが理解できん」

「我等は優越した種であり、我等に何かしら貢献できるという事は誇らしい事でございましょう」

「優越した種ならば、何故子が出来ずに数が減り続けている。我等が劣等と見下す人間族は常に子が生まれ続けているではないか。子が出来ぬからと魔族に頼り力を借りるも、都合悪くなれば優越してるからというのが俺は気に食わんのだ」

 正直、魔族が力を貸した訳ではなく『あの』魔王様だからこそ力を貸した訳であって、我等の総意と思われても困るのだが今ここで口を出す必要も無いので経緯を見守る事とする。

 竜王は口を挟まず、フィンデイルと残った側近とが静かにだが熱く語り合っていた。

 様子を見ていると、保守的な竜族にしてはフィンデイルは革新的な思考のようである。

 当初、魔界へ訪れたフィンデイルとナイリアスを見ても思ったのだが、竜族というのは期待した程魔力を有してないようだ。

 先程、退出させられた竜族達もそうであったが、残っている側近達も然りであり、竜族では一番魔力を有しているであろう竜王でさえも期待外れの感は否めない。

 魔族では魔力を秘す事なくそのままにしていると、己より下位の者へ影響を与えてしまう。

 顕著な例が魔王様である訳だが、竜族は力に頼る種の為か魔力を秘す気配が微塵も感じられない。

 よって、竜族の持つ魔力がいか程の物かは容易く見極められているのであるが、竜王とて一族の長としてみれば十二分な輝きとも思えるが、これが王となるとその輝きは寧ろ褪せて見えてくる。

 我等大公より若干魔力は強いかもしれぬが、王弟であるフィンデイルやナイリアスであれば我等大公の方が確実に魔力は上である。

 我が魔王様の溢れんばかりに輝く魔力を日々見ている内に、基準がずれてきているのであろうか。

 それとも竜族全体の魔力が低下しているのであろうか。

「フィンデイル様のご意見に反論する気はございませんが、保守的な考えを持つ者がまだ多いのが現状でございます。竜族はある意味転機を迎えているのやもしれません。その為にも、もう少し上手く立ち回る事を覚えて頂かなければ、無駄に争いごとが増えるだけでございます」

 嘆息漏れる気配にサナリラナイアを横目に見れば、緩く頭を振って返してくる。

 やはり魔王様の居所がはっきりと掴めない。

「話を遮り申し訳ないが、我等が王を探す協力が得られないのであれば、我等が王を探す権限を頂きたい」

 探査の為にもと大人しく様子を伺っていれば、竜族の将来を憂いた話に摩り替わっている。

 そのような与太話ならば、我等が去った後で存分に続けてもらえれば結構だ。

「いや、これは失礼した。とにかく、一旦ナイリアスを呼び事情を確認したい」

「しかし、兄上」

 尚、言い募ろうとするフィンデイルに竜王が片手を上げて遮りながら、側近へ静かに告げて下がらせた。

「お前の言う通りであれば、囚われた魔王殿はどこへ隠す?」

「……俺ならば、秘玉の島に」

 フィンデイルの答えに竜王が頷く。

「秘玉の島であれば、王と言えども干渉はできん。ならば、ナイリアスの身を一旦押さえている間に、魔王殿が島に囚われているかどうかを確認した方が良いであろう。下手にナイリアスが島に身を隠してしまえば、我等とて魔王殿の所在を確認する術を失ってしまう。魔族の方よ、少し回りくどい方法となるが了承頂きたい。一刻も早く魔王殿とお会い出来るよう我等も誠意を以って努めよう」

 叶う事なら自らこの地を駆けて探したい所ではあるが、竜族の地にて我を通した所で罷り通るとも思えない。

 少なくとも協力的な姿勢を見せている竜王の言葉に従い待つ事とする。

 しかし、一旦下がった側近が些か険しい表情で戻り、耳打ちにて報告を受けた王も表情を顰める。

「私の命令でもか?」

「何度か呼び掛けは致しましたが、未だ返事がございません」

「場所は掴めるか」

「ナイリアス様の所有する島の一つである事は間違いございませんが、どこの島までかは……」

「……返事があるまで、呼び続けろ。それとナイリアスが秘玉としそうな島を幾つか目星を付けておけ」

 命を受けた側近は緊張した面持ちで低頭すると直様部屋を出ていく。

 王が呼べば馳せ参じるは当然であるが、それが叶わない場合であっても何かしらの返答はあって然るべきであり、幾度との呼び掛けに対して一向に返事が無いというのは王弟と言えでも許される事ではない。

 王直々の呼び掛けに答えない臣下は、反意有りと見做されても仕方の無い事であり、俄かに緊張を漲らせる竜族の面々であった。

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