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誰が許した異世界転移  作者: カノ ハル
戸惑いの歩み
21/91

1-ⅩⅧ 来たりて声高に

 外を見張る男の一人が其れに気づいたのは早かった。

 姿が見えないうちから川沿いの道に走り出してこようとする二機の早駆けしてくる馬たちは、自陣へと確実に向かってきている。

 志坂(しざか)が戻ってから無理やり起こされたので眠気が残ってはいるが、交代の時間も近い上に再度寝る時間はないため既に交代をしたばかりだったからだ。松明も掲げずに走ってくる二頭の馬の乗り手は、片方は必死にしがみついている中世的な顔立ちの男か女?服装がよく見えないが珍妙である。

 もうひとりは、志坂の隊でというより、もともと志坂の隊とは別の隊を任されたが一件があってその任を下ろされた吉郎、たしか江島(えじま)という性はを下げられた吉郎(よしろう)という男だったはずだ。

 馬の荒い息が聞こえてきそうなほどに急いでいるのは分かったが、知らぬ顔をつれている以上は、こちらへと引き入れるわけにもいかない。

 見張りの男は向かってくる二人に向かって声を張り上げつつ、槍の穂先を向けた。


「待て! 吉郎はともかくとして貴様何者だ! 」


 見張りの張り上げる声にそばで動き出していた男たちの何名かが見張りの傍によってきて、目をこすりながらこちらを見ている。数名は手近にあった刀をよせ、いつでも抜けるように帯刀した。水しぶきをあげて河をわたってきた二頭は砂利をふみならす足音高くいななき、吉郎が手綱を引き寄せて見張りの手前でその走りを止めさせた。早く息を継ぐ馬の鼻息にすぐさま馬上より下りてきた吉郎が、見張りへと向き直る。


「後ろの者はあとで説明する! とかく志坂様に早く会わねばならんのだ! 事が大事になる前に納めねば」


 皆まで言う前に集まりだした何名かの足軽たちも其れに加わってきて、吉郎の前に立ち塞がるようにしている。背後にたっている整った顔の少年のような少女のような顔立ちの人物に、ちらちらと目線はやっているがぴったりとした服装を纏っている姿は、ここいらでは見ぬ出で立ちだった。

 一言も発さないその少年はひたすらに黙ってこちらを見ているだけだが、吉郎の慌てるのに比例してだんだんと深く黙っていくようにも見える。

 足軽たちが周囲に集まりだしている中、吉郎の説得というか、話しぶりに春香は心話(しんわ)を使い黒乃と聞こえぬ会話を続けていた。


(どうする?というか、心話が通じる時と通じないときがあったけどあれとか、姿が見えたりなんだりってどういう仕組みなのかって、今更気づいたんだけど何か違う事でもあるの? )


『本当に今話すことではございませんが・・・・・・御方(おんかた)。制約の関連それは順次関わっておりますとだけ、いまは話しておきましょう。心話に関しては御方以外と繋がるつもりはございませんので、吉郎との会話は空気を振るわせる会話に近いですが、定めた方向のみに音波を出す事で伝えておりまする』


(まぁそういわないでくれない? なんだかんだ神話の話とかこの世界に来る羽目になった元凶らしい奴の話しを聴いてたけど、いまいちピンとこないのがあるからさ、あと、此処まできて足止め食らっている時間はあるの? 説得というか、言い募っているだけで、警戒心だけ無駄に募らせてるようにしか私は見えないよ)


 実に春香のいう通りだろう。吉郎は必死に志坂に会わなければいけないということばかりを伝えているが、何故なのかという話にはまるで答えず、時間が無いとばかりしか言っていない。説得するには些かかけている話しかただ。人ばかりが増えてきて、一向に進みそうに無いどころかいらぬ関心がおこり、おきだしてきた男たちにじろじろとこちらを見られるのは好きではない。

 集まってきだしたのを対処しきれる前にリミットなんてすぐに来てしまいそうに思えた。


(制約うんぬんとかいってたけど、あれ?攻撃しなければあいつらには黒乃の姿が見えないって考えであっている? あっているなら黒乃、ここまできてあの志坂をとかいう兵の気配というか、あいつが持っているって言う本尊の方がどこにあるか感じ取れない?)


『御方?よろしいのですか? 吉郎とやらはここを穏便に済ませたいそうですが・・・・・。ああ、まぁ間に合わんでしょうな。確かに。志坂とかいうものの気配は先ごろから漂っておりまするが、なんとまぁ、この集まりだした者たちの左手の先、少し奥まったところに感じまする。気配というか、ふむ、奴はすでに(しょく)されているようだ』


 (しょく)されているという単語は、その響きだけで春香に悪寒を走らせた。日ごろ使う漢字ともかけ離れたそれは食べられているという事だけではなさそうに聞こえる。あの本尊は其れほどに力というより、封じられていたものが強いと思われる。

 この世界にきてから一日と立たずになんでこんな目まぐるしいのかを誰か答えられるものなら答えて欲しい。春香がこちらに来てから十数時間、時刻的には眠りたい位の時間だった。

 それでも寝るわけにいかなかったし、いついつに気を許せるものかとも分からない時間経過は彼女を今のような心境に陥らせるには充分だったろう。

 一向に進みそうも無い話し合いと、既に目覚め始めている呪いだの何だので、とうとう春香は爆発した。


「行くの行かないだのじゃないからとっととどけっ!! 」


「なっうおわっ?! 」

「ちょ、何ぃ?! 」


 どう使ったのかをその時の自分を思い出そうとしても思いだせそうにはないが、春香は黒乃に教わったわけでもないのに、黒乃へ奪われる力の感覚を感じながら、黒乃が広げている翼を吉郎が立っている先の男たちの山を両脇に勢いよく弾き飛ばしたのだ。

 見えない棒にでも叩き飛ばされたかのような衝撃に、見張りの男もその後ろに集まっていた男たちも左に右へとごろごろと転がされ、空いたそこへ吉郎の腕をつかみずかずかと入り込んでいく。

 驚くのと同時に転がされて唖然とする男たちを見ていた男たちが次から次に抜刀していくのなど知ったことではない。突きつけられている太刀がひらめき、吉郎がそれに待て待てと、腕を掲げて抑えようとしているのもどうでもいい。


「どけといったんだ! 時間がこっちはないし、お前等に関係あるけど関係ない! 志坂とやらにあわないと止められるものがとめられない! 」


「術使い?! 得体のしれない術なぞ使いよって! 斡辰(あつしん)の軍は貴様の」


「若造が、大概にしろ! 叩き切ってやる!」


 春香の言った言葉など威嚇の声に怒りの声の上塗り、さらにはざわざわと集まってくる男たちの騒ぎにかき消されるしかなかった。刀をひらめかせた一人が春香へ斬りかかってくるのも、その流れではありえたことだ。男の一人が春香へとその肩めがけて大きく刀を振るい、その場に鮮血がこぼれるはずだった。


 振るった太刀が閃くその音は硬質な金属音、まるで其処に同じ太刀が閃いたようにかち合った刀をはじき返し、足軽のもっていた武器はあっさりとそのみえずの太刀に真ん中から弾き折られた。振るった男の周囲で同じように槍やら鉄金具のついた棍棒を掲げている者たちもその様をみて、持っていた武器を手元へと引き寄せる。

 弾き返した男の太刀などには見るのも惜しい春香は、男たちが攻撃をしあぐねているのをいいことに、目的のモノがあるという場所の前まで来ていた。

 それは近条路(きんじょうじ)が去った後に志坂に与えられていた、立屋(たちや)のひとつ。後ろからついてきている吉郎はいつの間にか春香の背中を守るように立っているが、春香はその屋の前まで来るとすすめていた足を止め、しっかと立った。


「でてこい、志坂。

 お前がとったものをとっとと返してもらいに来た。いないふりは通じないからさっさとでてきて、その本尊を返さないと。どうなるかわかっているだろう? わからなくても関係は無いけど」


 通じたのか通じないか分からないが、その声は後ろで殺気立ち始めた男たちにも疑問を与えたらしい。刀を向けている何名かが吉郎へ


「なんだ?本尊というのは」と、切っ先を逸らさずに尋ねてくるのだ。


「その本尊はもっているだけで危険だという話なんだ、俺が行った村が境封じ(さかいふうじ)の村だったらしいのだ。持っているだけで死を呼び込むものがあるとこの人から聞かされた」


 質問に刀を未だ抜かずに吉郎が答えているが、魔法のような力が存在するそういう世界でも今回の事はあまりない事らしく、それぞれが口を引き結び、あるいは武器を再度こちらに向けなおしてその答えに嘘だといっていた。

 と、両側の開いた屋を見ていた春香の前で、その手前へとごそごそと動く物音がした。 

 

かれこれ、時間的に15時間くらいは立っているんじゃないでしょうか?

春香が意識をうしなっていた時間を合わせたら20時間じゃきかないかと・・・

眠ければ機嫌も悪くなってくるものですね

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