プロローグ「後輩目線」
どうしよう。
私って少しおかしいのだろうか?
少しどころじゃなくて本当におかしいのかも。
「はぁ...まさか.....」
部活を終えた私は誰もいないバス停で
1人溜め息をついた。
こんな事ってあるのかな、
きっと中々あることではないだろう。
ふとあの人の顔が頭をよぎる。
きっと違うと思いながらも
それならこの思いは一体何かと考えているうちに
1時間遅れのバスは気が付くと目の前に
停車していた。
産まれて16年、
勿論恋をしたこともあったし
付き合ったこともある。
その相手は今まで異性だったし、
これからもそうだと思っていた。
でも、私が好きになった人は恋した人は
紛れもなく同性で...変えようのない事実。
―平井 楓先輩
私が今恋している人であり、
コーラス部の先輩。
3年生の中で唯一のアルトパートである先輩と
私は同じパートをしている。
先輩は私にとって全てが憧れで自慢の先輩。
身長は私よりも少し高くて
髪は薄ら茶色がかったセミロングを
後ろできっちりと結んでいて
目はくっきり二重で
何となく近寄りがたい印象を受けるが
人見知りで恥ずかしがり屋なだけで
とても優しくてかっこいい。
それに同じアルトパートとは思えないほど
高音は透明感があって綺麗で
低音はまっすぐと通り体に響くような
素敵な歌声で楓先輩は歌う。
そんな楓先輩が私は大好きだ
でも、この思いを伝えるつもりはない。
そんなことをすれば楓先輩が私から離れてしまう
楓先輩がいなくなってしまうことなんて
絶対、絶対に嫌だから...
私はあの人にとって特別で大切な一番の後輩に
なれるように努力を重ねてきた。
おかげで最近では楓先輩から話しかけてくれたり、
私が悩んでいるときや緊張しているときには
背中をトントンと優しく叩いてくれる
言葉はないもののただそれだけで
私は救われる。
大袈裟だと思われるかもしれないけれど
本当にそうなのだ。
結論をいうと私はやっぱり恋をしている。
ふと空を見ると真っ暗な夜空に
たくさんの星が瞬いていて
何となく写真を撮って家に入った。