第78話
珍しくチリトが主役です。
現在より5年前・『白霧と黒沼の森』
『助けてください!!』
ブーーーーーーーーーーーー!!
そんな叫びと侵入者が出たことを知らせるアラームが突然聞こえてきた。
俺はあの日から時折やっている体術訓練を中止し、一緒にいるメンバーに休憩するように言った後、魔性の視点をいくつかを確認する。
すると、数年前から使っていなかった那須家地下から第2階層に入る部屋にフードを目深に被った一人の女性が居て、フォッグの体を掴んで抱き抱えているのが見えた。
どうやら、先ほどの叫びとアラームはこの女性が原因らしい。
というか、この子の被っているフードは微妙に膨らんでいる気がする。おまけにスカートを履いているけどこちらも微妙に膨らんでいる気がする。
うーむ。ちょっと確認するか。
「お前らちょっとこれを見てくれ。」
俺は同じ訓練をしていて今は休憩している奴らを近くに招き寄せて、モニターを出して女性の姿を見せる。
ちなみに訓練メンバーの中にはアリア、チリト、トリなんかもいる。
「お前ら、この女に見覚えあるか?後、チリトはこの女を解析してくれ。」
「見たことないです。」
「分かりませんね。」
「つーか、こんなに目深に被られてたら顔が分からねえっすよ。」
「明らかに何か隠してますよね。」
「それにしても何故、このルートを知っていたのでしょうか。」
「さあな。誰かに話した覚えは無い。で、チリトよ。解析結果は?」
「そうですね…。」
というわけでチリトの解析結果がこれである。
・名前は流火ミバコ
・種族は狐人
・職業は探索者
・ステータスは感知と敏捷の二極振り
・称号は≪探索者≫≪追われる者≫
・スキルは≪狐火≫≪生命探知≫≪真偽判断≫≪隠密≫≪逃げ足≫≪逃走習熟Ⅰ≫
「うわー。流石はチリト。ちょっと見ただけでここまで分かるとは…。」
「解析特化パネェ。」
「というか最早気持ち悪いレベルだろこれ。」
「黙ってくれますか?締めますよ?」
「「怖っ!!」」
チリトが腕をグルグル回していつでも襲い掛かれるように構えている。
でもまあ、実際一目見ただけでこのレベルの情報が漏れるわけだしなぁ…相手にとっては堪ったものじゃないよな。
「ちなみにスリーサイズとか分かるか?」
「分かりませんよ!」
俺の言葉にチリトは全力で否定する。
「ふむ。アリア。とりあえずは事情を聴くためにも連れて来てくれ。」
「分かりました。」
そうして、俺の言葉を受けてアリアがミバコを迎えに行った。
■■■■■
僕の前にはクロキリさんとアリアさん、トリさん。それにミバコさんが座っていて、ミバコさんがここにやってきた経緯とどうしてあのルートを知っていたかを話しています。
と、話が終わったようです。
「ふーん。つまりはこういう事か。」
話を聞き終わったクロキリさんが指を折ったり伸ばしたりしつつ頭の中で考えをまとめ、そしてまとめたことを話します。まあ要点だけまとめるならつまりこういう事ですよね。
・ミバコさんが狐姫のもとで研鑽を積んでいたところに人間時代の友人がやってきた。
・その友人はミバコさんに懸想をしていた。
・ただそのアプローチは強引かつ陰湿で、ぶっちゃけストーカー
・ついには命以外なら何でも狙われるようになった。
・そのために狐姫に相談したところ、霧王の所に行くように言われた。
・那須家地下のルートに関しては狐姫から所在を聞いた。
とのことです。
「お願いします!命を差し上げる以外なら何でもしますから助けてください!」
「ふーむ。何でも…ねぇ。」
あー、ミバコさん?その人相手に“何でも”は禁句ですよ?現に立ち入り禁止エリアに何人か何でもするって言っちゃった娘を囲っていますから。その娘たちは一人も外に出てこなくなりましたから。
って、凄く嫌な笑みを浮かべていますね。あれは明らかに何かを企んで閃いた顔です。
「じゃあ、こうするか。」
「は、はい。」
ミバコさんが緊張した様子で答えます。
「とりあえず今後アンタが『白霧と黒沼の森』の外に出るのは禁止する。理由は分かるな。」
「深部まで到達してしまったから。ですよね。」
確かに安全上の観点から考えて『白霧と黒沼の森』の最深部の情報は外に漏らすわけには行きませんね。
「それからチリト。こっち来い。」
「は、はい。」
僕は返事をしてから手招きするクロキリさんに近づく。
「チリト。お前この子を娶れ。」
「へ?」「え?」
思わず僕は妙な声を出してしまいました。ミバコさんも思わず変な声を上げてしまいます。
「んで、子供作れ。」
「「はいいいいぃぃぃぃ!?」」
そしてクロキリさんの爆弾発言に思わず僕とミバコさんは揃って大きな声を上げてしまいました。
そして、どうしてこうなったのか訳が分からない僕とミバコさんを置いて、クロキリさんたちは去り、僕らは唖然とした表情で互いの顔を見合っていました。
■■■■■
「さて、狐姫よ。何故だ?」
『言葉が足りておらんの。何故とだけ聞かれても妾には何のことやらさっぱりじゃ。』
チリトとミバコを部屋に残し、トリたちと別れた俺は狐姫と連絡を取っていた。
聞きたい事はただ一つ。
「何で俺の所でミバコの問題を処理させる?別にお前の所でストーカーを処理しても良かっただろうが。」
この件だ。
『ああその話か。簡単な事じゃよ。こちらでは手に余る。そういう事じゃ。』
「チッ、面倒な話を持ってきやがって。言っておくが対価としてミバコはもう外には出さないし、うちのチリトとくっついてもらう事にしたからな。」
『それぐらいは止むを得んな。命やお主に娶られるのに比べれば安いものじゃろ。』
「後でミバコを安心させるために一筆送れよ。」
『うむ。では後は頼んだぞー。』
そう言って狐姫との連絡は終わった。




