第75話
現在より7年前 南極
「ふう。また来たみたいですね。」
「みてぇだな。今回は巨大蛸か。」
私とボブさんの二人は太平洋側の沿岸に来ている。そして私たちの前では体高5m程の巨大蛸が手刃人鳥を襲いつつ海から陸に上がりつつある。もちろん手刃人鳥を襲っている時点で『永遠たる南の極妃』の生み出した魔性ではない。
この巨大蛸を生み出した魔王の名は『這い寄る混沌の蛸王』。太平洋の海底の何処かにダンジョンを構えて、制海権を人間達から奪い取った最悪の魔王の一体。
「では、私が脚を落としますので、ボブさんは本体を、」
「おう!」
「ーーーーーーーーーーーー!!!」
私が突撃し、ボブさんがスキルの準備を始めた瞬間巨大蛸が脚の一本を振り上げ私たち二人をまとめて叩き潰そうとする。
でも、
「そんな攻撃が通用するとでも?≪形無き王の剣・弱≫」
私は手持ちの金属から幅広の巨大鉈を右手に生成し、生成直後に巨大蛸の脚を断ち切るようにテレポートさせて切断する。
「ーーーーーーーーーーー!?」
巨大蛸は自慢の脚を切られたためなのか残りの脚全てを縦横無尽に振り回して暴れようとしますが、もちろん私はそれを許さずに手近な脚から順番に≪形無き王の剣・弱≫で切り落としていきます。
最近分かったことですが、≪形無き王の剣・弱≫によって生成される剣は私のイメージが大きく影響するようで、私のイメージ次第では基本の両刃の長剣、所謂ロングソードから、ダガーやナイフのような短剣。バスタードソードやクレイモアなどの大剣に、ゲームの中にしかないような巨大剣。ファルシオンやククリなどの曲刀に日本刀。レイピア、エストックなどが属する刺突剣。果ては今回使った鉈や銃剣のようなものから、明らかに架空の武器まで作ることが出来るようです。
それこそ材料さえ十分にあれば一太刀で戦艦を切り裂くことが出来る超巨大剣も作成可能です。
「ーーーーーーーーー!!」
そして、巨大蛸の脚が全て切り落とされ、まるで達磨のようになった巨大蛸と切り離された脚が痛みに耐えかねて暴れまわります。
ですが、そこでボブさんがスキルの準備を終えて、攻撃の体勢に入ります。
「行くぞ!≪極光の帯≫。」
ボブさんの右腕に強力な電気と磁力を帯びたオーロラの布が生成され、その帯が持つ電気が右手に集中します。そしてそれが極限まで収束して周囲に虹色の光とバチバチという音を撒き散らし始めます。
「ーーーーーーーーーーー!!」
巨大蛸はそれを見て危険だと判断したのか脚の無い体で必死にボブさんに接近し襲い掛かろうとしますがもう遅いです。
「≪雷の槍≫!」
ボブさんの右手に通常の≪雷の槍≫よりも強力な≪雷の槍≫が生成され、ボブさんはそれを巨大蛸に向けて投げつけます。
「ーーーーーーーーーー!?」
そして巨大蛸の額に≪雷の槍≫が突き刺さった瞬間、雷鳴と共に何条もの雷が辺りに走り、巨大蛸を周囲に転がっている脚諸共黒焦げになるまで焼き払いました。
辺り一帯に蛸が焼けたいい匂いが漂い始めます。
「終わりましたね。」
「だな。じゃあ、多少身を切り出したら帰るか。」
「ではそうしましょう。」
そして私たちは巨大蛸の一部を食用として切り出して極妃のダンジョンへと戻りました。
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極妃のもとで修業を始めて2年少々。
極妃について分かったことは色々あります。
まず極妃の眷属は南極人と言いますが、南極人はボブさんしかいません。その理由は極妃が魔王になり、レベル2になって眷属を生み出せるようになったころにはもうボブさん以外の人間は南極に居なかったからだそうです。
それだけで終わりではなく、極妃曰く「微かに残った…いや、不自然に消えた記録と状況証拠から考えるとボブは朕の兄である可能性が高い。」とのことです。
そう言われてみると確かに二人は似ているのですよね。目鼻立ちとか「ふふん」という笑い方とかで。
それと、極妃たちが日本語を使えるのは元々ジャパニメーションが好きで原作をそのまま見たかったからだそうです。
…。オタクってすごいですね。
さて、私自身の成長に関しては先に挙げた≪形無き王の剣・弱≫の生成可能な剣の種類についてもそうですが、≪魔性創生・下位≫についても分かったことがあります。
どうやらこの≪魔性創生・下位≫は魔王が持つ≪魔性創生≫の劣化版の様で、これでモンスターを生み出す場合は≪魔性創生≫と違って原材料。つまりはタンパク質などが必要になるようで、おまけに種類も制限されて私はまだ一種類の魔性しか生み出せません。それがこれです。
・飛刀
魔法生物系刀型魔性
刀剣に≪魔性創生・下位≫を使用することによって作成される魔性。主の命令を効ける程度の知能と飛行能力を持つ。
召喚コスト:HP,MP,SPを対象とする刀剣のサイズに比例して消費
おまけに≪魔性創生・下位≫で生み出した魔性は生み出してから1時間経つと自動的に元の刀剣に戻ってしまいます。
と、極妃がこちらに来ますね。
「極妃どうかしましたか?」
「うむ。貴殿の望みであるアフリカ大陸に渡る目途がついたから話をしておこうと思ってな。」
「本当ですか!」
私は思わず座っていた椅子から立ち上がります。
ちなみにアフリカ大陸を行く先に選んだのは、南米大陸だと日本まで遠すぎる。オーストラリア大陸ではインド洋と太平洋に居る魔王の攻撃が激しすぎて行くのが厳しい。という理由からです。
「うむ。それで出発はいつにする?」
「可能であればいつでも。」
「分かった。貴殿がそう言うなら早速行くとしよう。」
そうして私は極妃とボブさんに世話になった礼を言った後アフリカ大陸へと旅立ちました。
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